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オーク転生 脳筋種族に転生したとかマジですか。  作者: 廉玉タマ
3章 聖都・リス・デュアリス
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オークと次の目標

 知性あるオーク、オークマンとの邂逅、それに知能を向上させる魔法の習得、それと、おまけのようになってしまったが冒険者としての等級の上昇。色々と得る物が多かった賢者の塔だったが、そろそろ立ち去る時が来た。ゴトゴトと何やら大量の書類を持ちながら、最初に賢者の椅子に座っていた男がやって来たからだ。


「賢者様。お楽しみのところ悪いのですが、そろそろ仕事に戻って頂いても?」


「おや……おや、そうかい。仕事熱心なのは結構だけど、それを持ち歩くのは止めてほしいものだね」


 明らかにテンションが下がった賢者様は、しかし一度こちらを振り向くと、気合を入れたかのように声を張り上げてこちらに向かって語り掛けて来た。


「さて、こちらも仕事に戻るとしよう!……そうだ、進化のことについて気になるのなら、少しつてを当たってみよう。流石に私自身が対応することはできないが、ファンレイ辺りに対応させればいいだろう」


 そうして席を立った賢者様に、そう言えばと俺は慌てて声をかけた。


「そうだ、賢者様に、一つ言伝を頼まれていたんだった」


「ん?なんだい?」


「すらじいから、よろしく言っといてくれってさ」


 それを聞くと、賢者様がこれまでにないほどの笑顔を見せ、そうか、と呟いた。


「あいつが頑張ってるなら、私も頑張らなければな」


 そう言って、賢者様は書類に追い立てられるように姿を消した。

 そうするとディーガとも話すことはほぼ話しきっているわけで、手持無沙汰に立った俺たちは、いつの間にか出現していた転移門で地上へと向かったのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「えぇえぇ、いいですとも、賢者様に修行を付けてもらって?お茶もして?それで帰りが遅くなって?素晴らしいことじゃないか」


 明らかに素晴らしいと思っていない顔でそう言い募るファンレイに俺たちはただただ気まずい視線を向けるばかりだった。俺たちが直接無視したわけではないが、結果的にファンレイがいろいろと俺たちに声をかけようとして失敗していたのを見ていたのは確かだし、その後一時間も放置したのもまた事実だからだ。


「その、機嫌を直してくれませぬか?我らも別に好きでファンレイ殿を待たせたわけでは……」


「あ"?」


 正論を突きつけられて逆にいら立ちが募ったのか、いつぞやオタク忍者のシュンに見せていたイラつきよりも数段怖い雰囲気を醸し出すファンレイに、ボスは何も言わずに俯いて後ずさった。


 ただ、それは全くの無駄ではなかったようで、ファンレイは大きくため息をついて、俺たちを今一度見返した。


「そうだね、私もこれが八つ当たりだってのは分かってるよ……。っと、テュフラの奴に怒られる前に、仕事しますかね」


 そう言って、気分を変えるように両頬を挟み込むように二回たたき、彼女は満面の笑みで言葉を繋いだ。


「昇進試験、最終試練まで達成おめでとう!君たちは竜帝様さえも退けるという快挙を成し遂げた!賢者の徒として、知力、胆力、武力に至るまで、素晴らしいものであることを認め、我ら賢者の弟子18人議会の満場により、君たちをマンティコラ級冒険者として認める!」


 それを聞いても驚きはない。何しろ賢者自身が上がる等級については(予想という形ではあったが)言及していたからだ。

 なお、これは後で判明したことだが、等級を上げるだけなら別にファンレイの所に行く必要はなく、冒険者関連の受付の方で手続きができたらしい。ジュモンジがそれを知っており、一足先に帰ると同時にファンレイに見つからないうちに手続きを済ませて立ち去ってしまったことも不機嫌を助長させていたようだ。


「さて、マンティコラ級に上がった君たちにはいろいろな特権と義務が生じる。……けれど、現状は基本的に変わらないと考えてくれ」


 そう言って、一冊の冊子を手渡してきた。


「シーサーペント級以上の上級冒険者に関する特殊な特権と義務についてはその冊子に書いてあるから時間がある時にでも確認をすると良い」


 受け取ると、結構な分厚さの本であることが確認できた。


「……これ、本当に現状変わらないんですか?」


 思わずそう言ったが、ファンレイは頭を掻いて俺の疑問に答えた。


「上位冒険者の特権は、基本的に魔王大戦時代の状況に合わせて作られた物なんだ。基本的には移動の際の転移門の優先使用権や物資等を優先的に受け取れる権利、いくつかの保護指定の魔物の討伐権なんかが主な権利で、義務の方は戦時の滞在場所の報告義務や特別な依頼の受注義務なんかが主な義務となってるんだが……現状だとな」


 それを聞いて、俺たちはなるほどと頷いた。


「なるほどな、確かに個別では結構危険な依頼はあるんだろうが、切羽詰まったような依頼で危険度が驚くほど高いって依頼は今まで見た事が無かったな」


「それに、今じゃ物理的に転移門が無い大帝国なんかの場合以外は割といろんなところに転移門で行けるものね。使用料は結構高いところが多いけれど」


 そんな感じで頷いていると、ファンレイが俺たちに気軽な感じで問いかけて来た。


「さて、これで説明は大体終わったけれど、今後はどうするつもりなんだ?いきなり階級が上がったから買っても分からないかもしれないけど」


 それについては、話し合っていなかったため、俺たちは顔を見合わせ、少し話し合う。


「そうだな。俺としては賢者様の言っていたツテを待つのもいいと思ってる。賢者様も言っていたが、俺の覚えた知能向上魔法も、ずっとかけ続けるわけにもいかないし、もしかしたら、ボスや蘇芳が特別って可能性もあるから他のアプローチがあるなら聞いておきたい」


「私は……研究も進めたいし、そろそろ黒き茂みの森の方にいったん戻りたい気持ちはあるわね。……ただ、無いとは思うけど私達が戻った段階で、リリスウェルナ様が契約終了ってオークの保護をやめるかもって考えたら嫌よね。いや、無いとは思うんだけど」


 それを聞いて、俺は改めて考える。確かに俺たちとリリスウェルナ様の約束は、”俺たちが帰ってくるまでオークの集落を守り、その対価としてオーク達の精力を死なない程度に回収する”という内容だ。あの魔王様との関わりはそれほど多いわけではないが、賢者様の話も総合する限りは見た目や性格の割には義理堅く約束を守る魔王のようだし、俺たちが帰らなければ集落を守り続けてくれるだろう。

 ただ、義理堅いのと優しいのは異なるわけで、一応賢者に会うという目標も達成したという結果があることもあり、一度帰ってしまうと約束自体は履行されていることになり、その際再び外に出るとなるともう一度集落を守ってくれるかどうかは不透明と言わざるを得ないだろう。


「……ボス、リナ、蘇芳、お前たちはどうだ?」


 3人に聞くと、それぞれの言葉で集落にはまだ帰らなくても良いという返事が返ってくる。


「そうだな。本来ならば一度帰るべきなんだろうが、今後新たな情報が出る可能性がある以上、まだ帰らずに情報収集を続けたいと思う。どうだ?」


 そう言うと、アンネ達は異論無しと俺に頷いた。


「なら、決まりだ、次の目標は、賢者様からの情報を待ちつつ、こちらからも情報収集をする!いいな!」


「おー!」


 こうして、俺たちは目標も新たに、聖都リス・デュアリスでの生活を始めるのだった。


 

というわけで、3章完結です。

今日は午後に3章の人物紹介まで投稿します。


次章とその次の章は今までの章に比べて少し短くなる予定。次章はある程度目的も達したので日常会的な側面も強く出そう。


 

 なお、仮にグォーク達が集落の方に一時帰宅してもきっちり事情を話せば引き続き護衛してくれた模様。


 そもそも黒き茂みの森のオーク って森の外に魔物が溢れないようにするためのストッパー的な役目があるので、元々注目はされてたり。

 まあ、その場合はどこかの集落が残ってればいいのでいつのまにか集落消滅はありうるけど。

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