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オーク転生 脳筋種族に転生したとかマジですか。  作者: 廉玉タマ
3章 聖都・リス・デュアリス
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オークとオークマン

「あ、賢者様にグォーク!待ったわよ。全く」


 気が付くと俺は賢者に案内されたオークマンの居る森に転移しており、目の前には大きな丸太をそのまま台にした野性的なテーブルに座る一同の姿があった。


「全く、1時間も待たせて、もう話すことなくなっちゃったわよ」


「いや、まて、一時間?一時間って言ったか?」


 俺は思わず賢者様に目を向けた。


「あぁ、言っていなかったね。塔内には時間の流れを緩やかにした部屋を用意していてね。塔の1時間はその部屋での半日に当たる」


 それを聞いて、俺は改めて規格外なこの塔とその主に諦めの視線を向けた。


 と、同時に時間を自覚したことで急激に空腹感も覚えた。見れば、テーブルには茶菓子の代わりなのか豪快にビスケットのようなものやはちみつのようなもの、それに焦げ目がついた野菜等が並んでいた。

 俺はアンネ達との話もそこそこに、下品でない程度に意識しつつ食材を掻きこんでいった。


「……えらいよく食べるわね」


「あぁ、予想以上に魔法の習得が難しくてな。時間がかかったんだよ」


 詳しく話すのも億劫な空腹に、俺はとりあえず詳しい話を後回しにして食材に食いついていく。


「……あぁ、そうだ。任せて悪かったが、オークマンについては何か分かったのか?」


 アンネに聞くと、彼女は悩ましそうに頭を軽く抑えた。


「それがね、オークマンについては普通のオークが進化する種族で、高い力とそこそこの知性を持った種族というのは分かったんだけど、どうやって進化するか……っていうのは、今一役に立ちそうにないのよね」


 そして、アンネが向く方を見れば、例のオークマン本人がいた。


「ディーガ、もう一度話してくれないかしら」


「妖精の嬢ちゃんのためなら喜んで……って言っても、お役には立てないと思いますが」


 そう言ってオークマンのディーガはオークマンに進化した時の話を始めた。


「オイラは大帝国近くの深き新緑の森ってところに住んでたんですがね。まぁ、こっちのオークと変わらず何も考えずに生きておりました」


 話を聞けば、大帝国はリス・デュアリスのある中央大陸から見た東側、丁度精霊大陸の反対にある東大陸のほぼ全土を治める獣人たち中心の国であるらしい。ただ、魔物の強さや治安的な意味ではリス・デュアリスと大差なく、環境としては少し温暖な分実りが多いくらいでそこまでこちらと変わらないそうだ。

 深き新緑の森とやらは一応魔境の一つらしいが、その規模は黒き茂みの森とは比べ物にならないほど小さいらしい。

 生息する動植物もやや似通っており、ホーンラビットの代わりにヒュージラット、ハイドスネークの代わりにヴェノムバイパーと言った感じで同程度の魔物が生息しているらしい。

 そして、ディーガはその森で生活する中で、黒き茂みの森で言うイヴィルゴートに値する魔物、マーダーオックスに出会ってしまったようだ。


「で、そのマーダーオックスに殺されかけて、死にたくない、どうにかして生き延びる方法を見つけたいと逃げ出したら、いつの間にか進化していた次第でして」


 なるほど、死なないようにするために知能を得た、と。


「だが、事故死するオークは多いからなぁ」


 本来オークの強さであればおいそれと死ぬはずのないオークは、それでもそのうかつさでかなりの頻度で死んでいるわけで……必死に逃げた、生き延びる方法を……と言われたところで「じゃあ普通のオークとディーガの違いは?」という結論になるだけだった。しかもディーガ自身も他のオークと自分の違いを今一よくわかっていないようであるし。


「うーん、とりあえずオークに知能が増す進化があったってだけでも喜ぶべきか。それに、君の話によれば、普通のオークでも進化できるようだし」


「確かに……オークとしてはオイラはそんなに強かった記憶はないですし、取り分けて無茶した記憶もないんで、普通のオークでもどうにかすれば進化できるんじゃないかとは」


 ディーガの言葉に頭を悩ませていたが、考えても仕方ないと思い、俺は蘇芳に手招きをした。何かと喜んでついてくる蘇芳の頭を俺は撫でつつ、覚えたばかりの知能向上魔法をかけた。一応の確認だ。


「……!ダーリン、なんだか変な感じがする」


「ん?あれ?蘇芳ちゃん、なんかしゃべり方がスムーズじゃない?」


「アンネ、私、少しおかしい。すごく調子がいい……」


 そして、黙り込んだかと思うと、俺に向かってにこりと笑った。


「ダーリン、私、頑張ったご褒美が欲しいな」


 そう言って、蘇芳は続きは何も言わず、唇を突き出してきた。


「…………」


「……ダーリンノ、イケズ」


 俺は無言で魔法を解除し、蘇芳の口に茶菓子として出されていたビスケットを押し込んでお茶を濁した。

 一連の流れを見ていた仲間たちは、なんだかよくわからないといった顔をしていたが、まぁ、それもしょうがないだろう。

 一応、新しい武器である知能向上魔法が魔法無効であるオークにも何故か有効なことが分かったため、俺はどう話そうか考えながら茶菓子を抓むのだった。

 因みにディーガ君は蘇芳やボスと同じく、「賢いオーク」ポジション。

 ただ、当時の思考的に

 死にそう→現状じゃどうしようもない!→現状の知識じゃどうしようもない!→以前見た人間は対処していた→人間並みの知識が欲しい!

 的な単純に人間でもあんまり辿らない思考回路を辿っている&記憶力が碌にない上記憶にとどめてるくせに人間を襲っていないという稀有な存在じゃないといけない上に単純な倒せるような進化を求めるわけじゃなく、あくまでも戦闘を避けるための知恵を求めないといけないので難易度は理不尽なまでに高い。

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