表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オーク転生 脳筋種族に転生したとかマジですか。  作者: 廉玉タマ
3章 聖都・リス・デュアリス
160/261

オークと前世

「魔物はとある法則で進化する。それが、認識と憧れ。魔力を統御する存在、魔王が進化の方向を示し、個々の魔物達が憧れでその中から進化を選ぶ。そして、その進化はいくつかの方向性があるのさ。


 竜帝のように自らの種族の強みを生かし、その種族の頂点に上り詰める者


 コピードールのように、自らの種族の弱みを潰し、生存率を上げる者


 そして、他の種族に憧れ、その良さを取り込む者


 繁栄という面では人類種、強さという面ではドラゴンに憧れる種族は多い。だから、大抵の種族の進化先にいるんだよ。人間に憧れ、知能を上げた存在がね」


じっとそのしゃべるオーク(異常個体)を見つめる俺たちに説明した賢者様は、俺を手招きしてこう告げた。


「さて、グォークと言ったね。君に一つ提案がある。どうだろう。私に魔法を習う気はないかい?」


「すごいじゃない!受けなさいよ!」


 俺が返答する前に答えたアンネに、少し不満の顔を向けるが、アンネはそれに気づかずに言葉をつづけた。


「賢者様に魔法を教えてもらうなんて、すごく名誉なことなのよ!普通、塔を登り切った人たちしかならうことができないようなことなんだから!」


「ふむ……そうか。なら、お願いできるか?」


 俺がそう頷くと、賢者様が俺の腕をむんずとつかみ、魔法陣が浮かび上がった。


「よし来た」


「いや、ちょっとまt……」


 そして、その場から、俺と賢者様の姿がかき消えた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「さて、それでは”こんにちは”そして”ようこそ”グォーク君」


「あぁ、正直に言えば、転移するならあらかじめ言っておいてほしかったですね」


 少し不機嫌そうに言った俺は、しかしコロコロと面白そうに俺を見つめる賢者様を見つめ、そして、先ほど賢者が日本語(元の世界の言葉)で話しかけていたことに気付き、眼をむいた。

 いや、それだけじゃない、()()()()()()()()()


「どういう、ことですか」


「……それは、オークの性質を踏まえての質問かい?それとも君自身の問題についてかな?」


 クッキーに似た焼き菓子を手に呟く賢者様に、俺は余裕を持てず思わず叫んだ。


「どっちもに決まっているでしょう!」


「まぁ、そうだろうね。とりあえず、改めて自己紹介するとしよう」


 そう言って、賢者様は椅子に腰かける。よく見ればそこは先ほどの執務室ではなく、扉や、それどころか窓すらない、しかし多くの本棚と天井から吊るされた一室だった。

 そして、その中にポツンと置いてあるいっそ粗末とも言えそうな、しかし強度だけはしっかりと確保しているらしい木の椅子に座りクッキーを齧りながら賢者様は自らを何者であるか語った。即ち


「私はカーク・クーワラウス。賢者の塔を管理する者にして、以前『地球』という星にいた、転生者さ。そして、何故君を連れて転移できたか、と言えば、そういう魔法だからだよ」


 息をのむ俺に対し、賢者様は指をこちらに向け、続ける。


「さて、私の思う所によれば、君も転生した者だと思うが、()()()()()?……いや、言い換えよう。君の前世はどんな人物で、何を願ってこちらに来たんだ?」 


 威圧感は無い、しかし、視線だけは絶対零度の眼差しで見つめる賢者様に、俺は震える口で答えた。


「俺は病弱で、風邪をこじらせて、それで死んで……病気にならない体を求めて……、それで、あ、あれ?いや、なんで……」


 必死に頭を回転させ、言葉を紡ごうとして、違和感に気付く。自分が病気がちだったのは覚えているし、それが死因だったことも覚えている。好きだったもの、苦手だったこと、抽象的なものは全て覚えている。友達の顔だって、ぼんやりと思い出せる。だが、あいつの名前は何だった?父や母の名前は?いやそれよりなにより。()()()()()()()()()()()()()()()()

 顔も、名前も、何歳だったのかさえ分からない、俺は、オレは、オレハ、一体……?


「はい、そこまで」


 柏手を打つように、二度高く打ち鳴らされた音に、俺ははっと顔を上げた。


「まさかとは思ったけれど、厄介なのに目を付けられたようね。とりあえず一つだけ断定しておくよ。あなたはあなた。この世界で賢いオークをしてるグォーク。間違いないね?」


 その言葉は、ストン、と俺の胸に落ち、精神を安定させた。


「……ありがとう」


「いや、構わないさ。こちらが聞いたことだしね」


 そう言うと、まずは、と先ほど俺に起こったことについて彼女は語り出した。


「貴方をこの世界に呼んだ者は混沌と厄災の神、信仰なき古き神とも言われる混沌神カオスだろう。君は……なんだか知らないがこの神に見初められ、新しい生を与えられた。その時、何でかは分からないが、人間でない種族に転生することになった。

 だけど、これは神をもってしても重労働。人格を残したままではその生物の動きと脳の感覚にずれが生じ、まともに動けず美味しく頂かれるのを待つ肉人形になってしまう。故に」


 賢者様は右手と左手をパチンと合わせ音を鳴らす。


「君の魂と、転生先のオークの魂を余計なものを取り去って接合した。と、まぁ君に起こったのはそんなところだろうね。前世の名前を失ったり、記憶があいまいなのは生きるために必要な感覚や情報を入れ込むためだろう。

 そうだね、例えば、初めて命を殺すのにためらいを感じなかったり、生肉を食べるのに躊躇しなかったり、そんなことは無かったかい?」


 賢者様の言葉を聞いて、俺は今までを振り返ってみる。すると、確かに前世と照らし合わせて不自然な行動をいくつか行っていた。


 例えば、初めて狩った獲物、ホーンラビットを倒した時、俺は躊躇しただろうか?していない。それどころかそのままそのホーンラビットを何も気にせず口に入れた気がする。


 例えば、集落にいる雌を、人間の姿をした女たちをオーク達から逃がそうとしただろうか?していない。一度、俺のせいで捕まった冒険者に関しては何とかしようと画策したが、それ以外は完全放置だった。


 例えば、例えば、例えば……。


 思考の海を漂っていた俺は、しかし賢者様の視線に気づき、少し赤面しながら咳払いをした。


「ん"んっ。確かに、前世の俺とは少し考え方が違うみたいだ。だが、何故こんなことを?」


 俺が混乱した理由は賢者様の問いに答えようとして前世の自分を見失ったからだ。おぼろげながら俺の正体を看破していた様子の賢者様なら、俺が混乱するような問いを避けて話を進めることができたはずだ。というか、魔法の特訓をするだけならこの質問は意味を持たないだろう。しかし、賢者様はふっと笑顔を浮かべると、その口にマカロンを放り込みながら答えた。


「それは、君に対するご褒美という奴だよ、それと、同郷のよしみだね。私もどんな原因で転生したかは推測でしか分からないけれど、仮にさっきの混乱が死ぬ可能性のある極限の戦闘で起こったらどうだい?死にそうなときに”前世の母さん、もしかしたら死ぬかもしれません……あれ?前世の母親って誰だっけ?”とか混乱したら?」


「いや、戦いのときに母親のこと考えるほど幼くないんだが……いや、まぁ、確かにここで種明かしをしていた方が良かったのは確かだな。感謝する」


 俺が頭を下げると、賢者様は口元を拭きつつにこやかに笑った。


「さぁ、魔法の話をしましょうか!」

 進化の話は賢者様の説明の通りですが、賢者様があえて伝えてないこともあります。

 実は進化に必要な魔力は完全に魔王に準拠するわけではありません。いや、まぁ大抵魔王の力が必要なのですが、魔王というよりは魔王の統御する魔素が必要なのです。そのため、以前ユグドラヘイム回で説明した一般魔素や魔力風といった魔境に関わらず根ざしている魔素でも進化できます。ただし、一般魔素や魔力風は魔境においては魔境の魔素の濃度に負けて魔境以外では薄くなるため、魔境でそれらの魔素で進化しようとした場合進化先は最低位の魔物くらいになります。(ゴブリン、スライムや、その一段上のホブゴブリン、ビッグスライム等)


 逆に魔境の魔物として進化した場合、魔境独自の進化する可能性が高くなります。一番身近なのがリナちゃんで、ユグドラヘイムの魔素圏で進化したからこそゴブリナニンジャになることができました。もし別の場所で進化すると、高確率でゴブリナシーフになったことでしょう。


 また、魔王自身の進化とか、話もしてません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ