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オーク転生 脳筋種族に転生したとかマジですか。  作者: 廉玉タマ
3章 聖都・リス・デュアリス
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オークと竜帝 ご褒美

「我は賢者と共に有るが、それでも長きを生きた竜族。褒美にする宝には事欠かぬ。願いを言えばそれらしいものは見つかるであろうて」


「なぜ、そこまでしてくれるんだ。確かに俺たちは竜帝様に勝ったが、それは試験での話で、しかも相当手加減してくれていたんだろ?」


 竜帝様は、俺の問いに微笑んで答える。


「何、お主も長く生きると分かる。いくら力を持っていても、いくら財を持っていても、()を望まなければ次はない。儂も諦めたつもりはないが、一息に駆け抜けるのは中々につらくてなぁ。故に、主らのような先を望む者達に、気に入った者達に手を貸してやりたくなるのじゃよ」


 その言葉に、今度はジュモンジが嘆息する。


「なら、儂は受け取るわけにはいかんな。儂もどちらかというとそちら側じゃ。何、先の大戦でお主を殴り飛ばしたことをチャラにしてもらえばそれで構わんよ」


 そう言って笑うジュモンジの場に竜帝様が頷いたのを確認し、今度はサスティナが前に出て……なんと土下座した。


「竜帝様お願いじゃ、どうかわらわを……いや私を、鍛え直してくれ」


「ふむ……」


 反応の薄い竜帝様にサスティナは慌てて言いつのった。


「無理は承知だ。じゃが、だけど、もう私は……ウリエラを、失いたくないんだ!」


 吐き捨てるような言葉に、ウリエラが感動したように目を潤ませ、同じく前に出た。


「ぼ、ぼくも一緒に鍛えてください!ぼくも、師匠を、サスティナ様を支えて、足手まといにならない冒険者になりたいんです!」


 その言葉に竜帝様は鷹揚に頷いた。


「ま、よかろう。じゃが、儂の修行は厳しいぞ」


「あ、ありがとうございます(なのじゃ)!!」


 師弟二人で喜ぶ彼女らの次は俺たちの番だ。アンネはもう貰っているので次、ボスとリナだ。 


「我は、主殿に任せたい。我が手柄は主の手柄、ゆえに、可能ならば我の分は主に加えてほしい」


「私はボスに任せる。私を一番見てくれたヒトだから」


 その言葉を聞いて、ボスが赤面する。その間に、竜帝様の眼は俺の方に向いた。


「ならば、お主が決めるがよい」


 竜帝様の眼を見ながら、俺は頭を働かせる。


「なら、ボスの防御力を上げることができるようなものはないか?ボスは俺たちへの攻撃を受け持つ前衛なんだ。俺たちの、それに何よりボス自身の安全のためにも、ボスの防御力が上がるのが一番いいと思う」


「主殿……」


 なぜか涙ぐむボスは、その涙を拭って再び声を発した。


「ならば、リナには武器が良いだろう。有効打が無かった時でも、僅かでも打撃を与えることが出来れば、我が妻なら離脱する隙位は作ることができるであろう」


 ボスのその言葉を聞いて、竜帝様は大きく頷き、二つの指輪を呼び出した。


「この二つの指輪は、毒竜の指輪と金龍の指輪というものじゃ。毒竜の指輪を持つ者が敵意を持って武器を振れば、その武器から竜毒があふれ、金龍の指輪を持つ者はより堅固な肉体を得るじゃろう。そう言えば、人間の間では婚姻を結んだ相手とは指輪を交わすのが礼儀だそうじゃな」


 最後の一言を聞いて赤面する二人は、しかししっかりと指輪を受け取った。しかも、ちゃっかりと自分に必要なのと反対の指輪を受け取り、早速交換していた。

 その間に、再び俺の方に視線が向かう。


「次はお主じゃ。お主は何を望む?」


 それを聞いて、俺は頭を捻る。賢者に会うことはファンレイから条件を聞いているし流石に竜帝を倒しておきながら会えないということは無いだろう。というか、竜帝を止めたあの男が賢者だったとしてもなにもおかしくない。だから、賢者に会いたいというのを竜帝様に言うのは意味があまりないだろう。

 ならば、他の望みと言えば……賢者に会うことの大本、オーク達のことだ。オークを隔離するだけなら、既にジュモンジ老からユグドラヘイムに土地を受け取っているからその方面でもあまり気にする必要はない。なら、オーク達を直接的に強化、或いは存続させるためのもの……。


「竜帝様、例えば食べれば相手が賢くなる食べ物とか、魔法とかはありませんか?」


「えっ」


「えっ」


 俺と竜帝様が驚いたように声を上げたので、俺もそろって驚きの声をあげてしまった。とはいえ、それがあまりよくない反応だったと反省したのか、コホンと息をひと息ついて、竜帝様は仕切りなおした。


「そうじゃな、オークは魔法を使えん種じゃしな。……結論から言えば、食べれば頭の回転が速くなる食べ物や魔道具は存在する。が、頭のよくなる物はない」


 何が違うのかと考える俺だったが、続いての竜帝様の言葉で一応の納得をすることができた。


「簡単に言えば、限定的な時間伸張だと思ってもらえばよい。思い出す時間や思考時間を増やすというのがそう言った魔法の効能じゃ。じゃから、得られる結論は長考した時と変わりなく、そしてその時間を有効に使えるかどうかは受け手次第。正直頭が良くなる……と言えた代物ではないが、それでよいのなら進呈しよう」


 それを聞いて、俺は首を横に振る。完全に無駄とは言わないが黒き茂みの森でのオークのありようを考えれば、多少考える時間が長くなった程度で知能が変わる気がしない。

 竜帝様も、以前の邂逅で俺たちが何のために動いているのかは知っているためか、だろうな、と浅く息を吐いた。


「ならば、儂の印を持っていけ。儂の印さえあれば、竜相手限定ではあるが無下には扱われんであろう。運が良ければ、オークでさえも知能を得る方法を与えてくれる者もおるかもしれぬ」


 何となくやっつけ気味に竜帝様は俺の顔に爪を当て、魔力を注いだ。多分某淫乱魔王様の時と同じように、何らかの印が刻まれているのだろう。


 そして、最後に竜帝様が見たのは蘇芳だった。


「さて、最後じゃな。実のところ、今回は実に驚かされたのじゃ。まさか、ただのオークにいいようにされるとは思わなんだ故にな」


 竜帝様が言う様に、今回の作戦の要は間違いなく蘇芳だった。たとえそれが、注目されているアンネや俺、盾役として必須のボス、そしてニンジャとして早い足を生かしたかく乱を出来るリナといった面々の中で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という所謂消去法だったとしてもだ。

 それに、最後の一撃は本当に予想外のファインプレーだというしかない。その後落下の衝撃で即死したとしても、彼女が今回の最大の功労者であることには変わりないだろう。


 そんな蘇芳は、竜帝に向かって豪快に笑った。


「オマエ、トテモツヨイナ!スゴカッタ!マタタタカオウ!!」


「……クハハッ、よもやあの激戦を、己が死ぬほどの激戦をもう一度願い出るとは思わなんだぞ!この大ばか者め!!じゃが嫌いではない。お主、名をなんと申す」


「名前!ダーリン二ツケテ貰ッタ!蘇芳!」


「蘇芳か良い名前じゃな、我が名はレイモンドブラッドロード。この塔に住み竜を統べる者である。お主はまだ儂の足元にも届かぬ者だがその意気は儂にも通じたぞ!是非とも友諠を結びたい!」


「??」


 竜帝の言葉に、蘇芳は頭に疑問符を飛ばす。まぁ、蘇芳は一応人類共通語は習得しているが、ボスのように進化で習得したわけではなく、俺のようにすぐに習得してそれからずっと使っているというわけではないため多少難しい竜帝様の言葉の意味をとらえきれなかったのだろう。


「つまり、竜帝様は蘇芳と友達になりたいってことだ」


「トモダチ!イイヨ!」


 そう言って、蘇芳は自分と同じくらいの大きさの竜帝様と抱擁を交わす。そして、それが終わると俺と同じように蘇芳の顔にも竜帝様は魔力を注いでいった。


「さて、これで儂の役目も終わりじゃな。最後に三つ、お主らに伝えておこう。

 一つ、儂の宝遠慮せず有効活用すると良い

 二つ、賢者様に粗相のないようにの

 そして、三つ……自信をもって、先へ進め、お主らは、この竜帝を打ち破ったのじゃから」


 そう言い切ると同時に、竜帝様のすぐ横に巨大な門が出現し、その先には真っ白な壁に囲まれた部屋の内装があった。


「諸事情により、賢者様の部屋には直接転移できんでな、一つ前の部屋につないでおいた。ここを通れば賢者様に会うことができるじゃろう」


 そんな竜帝様に、俺たちはお礼を言い、最後の転移門へと足を踏み入れたのだった。

ファンレイ「……えぇ、まさかの放置プレイ?」


 なお賢者の弟子と塔の魔物の間に明確な上下関係はありません(というか指揮系統どころか塔の魔物は組織ですらないので)

 ただ、賢者に属する年数や実質的な強さ、他の魔物や賢者の弟子への影響力を加味すると緩やかな序列があります。


 基本的には賢者を最上位として、塔を出奔して発言力が弱まっているとはいえそれでもぶっちぎりのスラじい、スラじいほどではないが付き合いが長い竜帝、更に次点で賢者の弟子の中でも最古の弟子であるテュフラがかなりの発言力を有します。

 ファンレイちゃんは賢者筆頭とされていますが、劇的な弟子のなり方とその見た目的な意味で広告塔として矢面に立たされているだけで弟子の中でとりわけ優れているわけではなかったり。


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