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オーク転生 脳筋種族に転生したとかマジですか。  作者: 廉玉タマ
3章 聖都・リス・デュアリス
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オークとリザルト

「……と、いうわけで、お疲れさまでした。二次試験はこれで終了です」


 ファンレイにいきなり言われて、あっけにとられる俺たちだったが、急に縮小して大型犬サイズにまで縮んだドラゴンが甘えるようにファンレイにすり寄りに行ったり、眠ったり麻痺ったりしていたはずの冒険者たちが、やれやれ、みたいな感じで何事もなかったかのように縄抜けして肩を伸ばしていたり、目の前にいる副ギルドマスターが俺の肩を叩いて「すごいな、お前ら」みたいなことを言い出して、ようやくそう言えばこれ試験だったという実感が追い付いてきた。


「それじゃあ、次に行く前にいくつか質問させてね……の前に、ちょっと休憩しましょうか」


 そう言って、俺たちはファンレイに導かれるままギルドカウンターから入って、上質な風呂付の部屋に案内された。


「とりあえず、湯船につかってゆっくりしなさい。次の試験もあるから英気を養ってね」


 そう言い渡されたので、俺たちは俺とボスの男組、アンネ、リナ、蘇芳の女組に分かれて風呂に入ることにした。

 なお、今世では風呂に入ったことは無かったが、アンネは何度か入った事があるらしく、作法とかは分かるようだ。こちらの作法は分からないが、まぁ風呂の入り方なんてあまり変わらないだろう。


 なお、武器はリナが手裏剣っぽいものを隠し持っている以外はこちらで預かっている。無いとは思うが、いきなり風呂場なり玄関なりから”追加試験だ!”とか言って誰かが侵入してくる可能性を考慮して、武器を奪われるくらいなら俺たちが持っておく方が良いという判断があったからだ。それに、武器を隠し持っているリナは勿論、蘇芳は素手で、アンネは魔法で対応できるため、多少武器を持つ時間が遅れたとしても致命的なことにはならないだろうとの判断があった。


 まぁ、そんな心配をよそに、誰かが乱入してくることもなく、全員が湯船を堪能した後に呼び出され、俺たちは再びファンレイに、そして村長と副ギルドマスター役の試験官と面会することになったのだった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~

「さて、集まってくれてありがとう。先ずは二次試験お疲れさま。始めに行っておけば、これはおまけのようなものだ」


 面会は、村長役をやっていた試験官の男のそんな一言から始まった。


「正直な話、ここまで完璧に私達の想定した事件を推理し、正解までたどり着いた者は私が試験官になってから一度も出会ったことが無い。だから、これから質問することは本当におまけ、今後の試験の参考にする程度の物だと思って欲しい」


 その言葉に隣の副ギルドマスターとファンレイが揃って頷いた。俺たちも内心はこれは試験の延長なんじゃないかと疑いながらも、軽く頷いて続きを促した。


「それじゃあ、まずひとつ目だが、この試験を受けてどうだったかな?どう思った?」


「どうもなにも、えらく悪辣な仕掛けだとおもったわよ。幸い、私がフォーチュンバイパーの特徴とか、ゴーゴンヘッドのこととか知ってたからここまで来れたけど、これ、本当に合格させる気があるのかって思うわ」


「確かに、そうですな、仮に姉御殿が居なければ、我らが気付けたかどうかは怪しいものでしょうな」


 それを聞いて、村長役の男は苦笑いをしながら手を仰いだ。


「それほど、これ以降の等級は難しいということだね。とはいえ、君たちも気づいたかもしれないけど、ゴーゴンヘッドを倒したって言っているのに前任の冒険者の話をしないとか、町の人たちが蛇の被害にあっていないとか、色々とヒントは散りばめられてるんだよ。

 それに、実はギルドの方の図書館にはフォーチュンバイパーのことが書いてある本も置いてあってね。フォーチュンバイパーが死んで、擬態が溶けたことで素材の色が変わることに違和感を感じ、ギルドで調査、ギルド自体を告発すれば、その時点で及第点はあげられるようにしているんだ」


 それを聞いて、今回のギルド内での乱闘騒ぎはどうなんだと思ったのだが、それを察したのか副ギルドマスター役の男が笑いながら言葉をつづけた。


「まぁ、今回はあまりにスムーズに進んでたから、一段上の対応になったって感じだな。あぁそうだ、ところでだが、お前さんたちフォーチュンバイパーをギルドに持ち込んでたろ。ギルドが動くためにはあれくらいしなきゃ証拠が薄いと思ったんだろうが、戦闘になることを考えれば奪われる心配もしておくべきだったな」


 そう言って、足元から例の木箱を取り出してきた。それを見て、アンネと俺は顔を見合わせて副ギルドマスターを見直した。


「開けてみてください」


「は?……お、おう、って、こりゃ、ただのハイドスネークじゃねえか。ってことは、俺たちはまんまとブラフに引っかかったってわけか、こりゃ、一杯食わされたなぁ」


 そう、木箱の中はただのハイドスネークだ。だが、物証がないわけではない。俺は道具袋から、茸人(マイコニド)を呼び出した。


 茸人は、道具袋から飛び出したすぐ後に、小さな”転移門(ゲート)”を作る。


「フォーチュンバイパーはこの転移門で安全なところに保護しています」


 副ギルドマスターはその先にいるフォーチュンバイパーを見て……慌てた様子で俺にまくしたてて来た。


「ちょ、ちょっと待て、なんだこれは!?」


「は?」


 その剣幕に何かまずいことがあったかと思い、転移門の先を覗くと……。フォーチュンバイパーが元エルフの精霊達の胸に押しつぶされながら可愛がられていた。見た目は完全に蛇のはずなのだが、まんざらではない雰囲気が漂っている。


”あぁ、すまんのう、グォーク殿。なぜか儂の娘らと波長が合ってしまったようでのう。意気投合してしまったんじゃ”


「意気投合してしまった、じゃねーよ!そいつは俺の従魔だぞ!早くこっちに戻してくれ!」


 副ギルドマスターがそう叫ぶが、なるほど、あの慌てようはフォーチュンバイパーが妙な状況になっていることの表れだったのか。

 まぁ、意気投合といったって、ここ一時間程度のことだ。ご主人であるはずの彼が言ったなら容易に帰ってくるはず……。


「……ねぇ、すごくあの蛇嫌がってる気がするんだけど」


「奇遇だな、俺にも、あの副ギルドマスターに声をかけられた瞬間精霊達の胸の間に潜り込んでいるように見える」


 アンネと俺の会話を聞いた副ギルドマスターが睨んでくるが、次の瞬間ファンレイの拳が男を襲った。


「全く……これしきの時間で従魔に愛想を尽かされるなんて、普段どんな関係を築いているのか疑問だ。もうちょっと従魔と心を通わせておくべきだったな」


「いや、姉さんそうは言ったって」


”本当にすまんのう、まさか、ここまでなつかれるとは思っておらなんでな。儂としては返したいとも思うんじゃが……”


”何を言うのですかジュモンジ様!これは、このツルツルすべすべは、素晴らしい感触で!”


”それに、性格もとても素直でかわいいんですよ!”


 どこにそんな魔性の魅力があるのか知らないが、ジュモンジ老の忠実な信者である精霊達が、老の静止を振り切る程の力があの蛇にはあるらしい。困惑しつつも、俺たちも頭を抱える。


「いや、だからって……って、ジュモンジ様だぁ!いや、ちょっと待てよ、ってことは今俺のネイクスがいるのはユグドラヘイムの聖樹か?」


 愕然とする男に、ファンレイが静かに決を下した。


「……本来ならば、従魔の強奪は重罪ではあるが、今回の件は昇級試験の間の不可抗力……しかも、情けないことに安全確保のための数時間で懐柔されるというのはこちらの従魔術師に問題があったとしか言えん。

 そして、ジュモンジ老はこのギルドにおいても多大な貢献をした人物であり、信頼に足る冒険者だ。

 この場でお前の従魔を譲るという確約を出すことはないが、無理やりこちらに連れて来ることもしない。自分の従魔は自分で説得して取りかえして来い」


 結果は本人同士の話し合いに任せるという結論になった。


「というか、今の状態で無理やりお前の所に戻したら、あの様子だということ聞かないだろ?納得ずくで帰るように説得することだな」


 それを聞いて、副ギルドマスターはうなだれたのだった。

 そして、それを期にファンレイが俺たちの方に目を向けた。第二ラウンド開始、といった所だろうか。

ツチノコ”いや、だって精霊なら物食べないし、なんかいい匂いするし、逆に木の実とか食べ物は飽きるほどあるし、元の場所に戻る必要ありゅ?(ゲス顔)”


 フォーチュンバイパーは臆病な性格のため、安全を確約させるような存在がいる場合は割と居つきます。

 ただし、意識して呼んでいるわけではないので、ハイドスネークは引き続き寄ってくる模様。

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