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オーク転生 脳筋種族に転生したとかマジですか。  作者: 廉玉タマ
3章 聖都・リス・デュアリス
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オークと対人戦

 相手は60人、こちらは4人。しかもアンネは対物戦力としては物足りない。

 現状の盤面だけ見れば非常に不利だが、実のところそんなに切羽詰まっていなかったりする。


「それじゃあ、アンネ、頼むぞ!」


「行くわよ!眠りの雲(スリープクラウド)!!」


 アンネの居る場所、つまり俺の周囲から巨大な雲が出現し、強力な眠気を誘う魔法の雲があたりを取り囲む。


「……!?まずい、息を止めろ!」


 最初に俺を攻撃したリーダー……おそらく副ギルド長という設定なのだろう男がそう言うが、もう遅い、うかつにも眠りの雲(スリープクラウド)を吸い込んでしまった冒険者とギルド職員は強烈な眠気に耐えられず次々と深い眠りに落ちて行った。

 ただ、荒事を生業とする冒険者達だ。情けなくいびきをかいている冒険者だけでなく、何らかの対策をしているのか、魔法が収まるのを息を止めて待っているのか、倒れない者達も全体の半分ほどいた。


 しかし、アンネは更に畳みかける。


電撃の霧(パラライズミスト)


 電撃の霧(パラライズミスト)眠りの雲(スリープクラウド)と違って経口摂取でなくても効果が強く発揮される。そして、麻痺の耐性は人族ではかなり希少で、ぶっちゃければよっぽどの馬鹿な修行をするか常日頃から雷に打たれている不幸体質でもない限り耐性は身につかないのだそうだ。

 要するに麻痺の耐性装備を持っていなければ死ぬ気で魔法の霧が来る前に逃げ出す必要があるのだが、それが許されるかといえばそんなことは無い。いきなり(限度はあるとはいえ)息を止めれば耐えることができる魔法の雲が、息を止めてもどうしようもない霧に変わったのだ。両方の耐性装備をしていない冒険者もそうだが、最初の眠りを回避した冒険者達も、いつの間にか麻痺に切り替わっていた魔法の接近に気付くことができずなすすべもなく倒れ始めた。


 残ったのは15人ほど。オーガ級15人という事ならすこし不利だったかもしれないが、そうでもないようだ。

俺、ボス、蘇芳で分担して冒険者達を片付けようとも一瞬思ったが、思い直して蘇芳にロープを渡した。


「今倒れている奴は重要参考人たちだ。そのロープを使って、皆縛っておいてくれ」


「ワカッタ」


 蘇芳が以前教えた通り数人に分けて冒険者を縛っていく。

 その間に冒険者は武器を構えるが、そうはいかない。アンネの最後の魔法が発動した。


重力10倍(グラビティ)!」


 アンネの重力魔法が発動し、それまで立っていた冒険者が崩れ落ちる。そして、その直後に俺は前方へと飛び出した。


 急速に自重が重くなる感覚があるが、レベル上げの為に何度も体験した感覚だ。すぐさま対応し、そのままこの場のリーダーである副ギルドマスターに接近する。


「くっ!?」


 接近した俺に男は何とか刃を合わせたが、重力に押され、十分に対応できているとはいい難い。


 そして、俺は男の持っている剣を手刀で落とし、そのまま手を捻りあげて確保する。


「お前たちのリーダーは捕まえた!無駄な抵抗は止めることだな!」


 そう言うと、まだ意識のあった冒険者達は怯んだのか近くの仲間を連れて後ずさる。まぁ、この状況でそんなことをした場合、スキを突かれて蘇芳に昏倒させられるのだが。


 混乱する冒険者達に、不意打ちに次ぐ不意打ち。おそらく練度的にもそこまでではなかったのだろう。少し考えれば察することができるが、いくら高価だと言ってもフォーチュンバイパーの素材をこの場にいる人数で分ければ、そこそこの値段で収まる程度しか一人一人には渡らないだろう。村長の所にも分け前を渡さなければならないと考えればもっと量は減るに違いない。

 要は、そのそこそこの報酬であっても臨時報酬として喜べる程度の実力の冒険者しかこの場にはいないのだ。


 勝負ありと思い、副リーダーを見やると彼は現状を見て狂ったように笑い出した。


「ひゃはははは!?やってくれたなぁ、クソ冒険者が!」


「それは、副ギルドマスターとしてどうかと思うぞ」


「知るか!お前さえ気づかなければ、俺たちは金を手に入れられたんだよ!」


 そう激高した男は、しかし次の瞬間にはいやらしく笑みを浮かべる。


「だが、俺は優しいからな、許してやろう。貴様の死でな」


「グォーク!上!」


 アンネの言葉に振り返ると、天井に巨大な魔法陣が出現しており、今まさに巨大な何かが降り立ってこようとしていた。


「こんな時の為に用意してる、ギルドのアークドラゴンだ!確かに俺はお前たちにとっては悪人かもしれないが、立派なギルド職員だからなぁ!こいつも俺のいうことを聞くんだ!残念だったな!行け!アークドラゴン!あのオーク共をぶっ殺せ!」


 咆哮を上げながら俺をねめつけるドラゴンの後ろで、鬼の首でも取ったかのように誇らしげにしている副ギルドマスターは、さらにあおるように俺たちに叫び続ける。


「俺に逆らうからこうなるんだ!土下座して謝れば!拷問だけは勘弁してやるぞ!!」


「反省するのは貴様だ、馬鹿者!」


「へ?」


 副ギルドマスターは、背後から聞こえた声に、あっけにとられたように振り返った。もっと言えば、俺に敵対心を向けていたドラゴンも、怯えるように後ろを振り向いている。そして、彼女は一言、こう言い放ったのだった。


「ここはこれより、賢者の直弟子ファンレイが受け持つ。皆、武器を納めて動くんじゃないぞ!」

※ここの試験官は特別な訓練を積んだ者及びあらゆる状況に対応した種族で構成されています。

 通常一気に重力が十倍になったら相当体を鍛えた冒険者でなければ軽く死ぬのでお気を付けください。


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