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オーク転生 脳筋種族に転生したとかマジですか。  作者: 廉玉タマ
3章 聖都・リス・デュアリス
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オークとユグドラヘイム

 はるか昔、それこそ、この地に植わっている巨大な神木がこの地に根付く前より、ここには一つの村があったという。

 彼らは、はるか昔の大地震のおりに神木に救われ、そこから神木を崇めて、ユグドラヘイムという国を形成したのだそうだ。


「そして、神木は儂の親木でもあるのじゃよ」


 俺たちは手を振ってくれる街門の兵士に手を振り返しながら、ジュモンジ老の言葉に耳を傾けていた。彼ら兵士は一旦入国で俺やサスティナの姿を見て緊張感を漂わせていたらしいのだが、直後に見えたジュモンジ老の姿を認めた途端、まるで英雄が帰還したかのような歓喜に沸き立ち、俺たちへの警戒もやめたらしい。


 町から何人もの人々が俺たちを出迎え、本来ならば警戒されるはずの俺たちオークでさえも、まるで昔からの友人のように肩を叩いてきた。

 その理由が。


「そしてこの国には、大樹の傍らにある生き物は我らと同じ同胞である、という言葉があるのじゃよ。この国の最初である神木は、生き物を求め旅を続けたトレントであったと言われておる。それゆえに、儂ら神木の枝木に身を寄せる者達もまた、彼らを仲間とすることにしたようじゃな」


 俺たちを乗せて道を歩いているジュモンジ老は道行く人々に握手を求められるなど、かなり人気のようだ。

 そして、そんなジュモンジ老の上で何となく誇らしそうに胸を張っているエルフたちを見ると、なんとなく微笑ましい気分になってしまった。


「さて、着いたぞ」


 そうして、俺たちは目的としていたこの国のギルドに到着した。そこは巨大な枝と根が絡まったような見た目をしており、中では多くの冒険者が日々の仕事を探したり、併設された酒場で英気を養ったりしていた。


 俺たちはジュモンジ老を筆頭に受付に到着し、依頼の達成の話をした。

 どうやら、ジュモンジ老がいつの間にか報告を済ませてくれていたらしく、前の打ち合わせの通り、護衛料込みの10万ジェルの報酬を受け取ることになっていた。さらに、ドラゴモールの素材料もあり、プラスで二万ジェルほど臨時収入が入ったため、総計で12万ジェルを手に入れることになった。


「すごいわ!これ、これだけあれば、結構凝った実験道具だって買えるわよ!」


「……取りあえず資金の管理は俺がしよう」


 なんだか目が$になっていたアンネに不安を覚えたため、一旦報酬は俺が預かることにした。後で報酬の分配についてはみんなで相談しよう。


 それよりも問題は、現在ちんまりと緊張した顔で待っているサスティナだった。


 実は俺たちがギルドに来た直後にどこからともなく、あのオタク忍者シュンもギルドに姿を現していたのだ。

 そして、俺たちがファンレイに渡されたサスティナの身辺調査の引き継ぎ証を手渡したのち、シュンと何人かの職員が連れだってギルドの奥に入って行ったのだ。おそらく、認定の可否を話し合っているのだろう。

 俺はふと、ジュモンジ老達と少し離れて座っているサスティナの近くへ腰を掛けた。


「大丈夫か?」


「大丈夫に見えるかの?」


 サスティナは今にも吐きそうと言った風な顔で俺を見返した。


「お主らと旅をしていて、なんとなく分かったんじゃが、どうやら今までのわらわはあまり歓迎される性質のものではないとわらわ自身、思ったのじゃ」


 しばしの沈黙。現在、彼女の近くにいたウリエラの姿はない。シュンたちと共に最も近くにいた存在として呼び出されたからだ。


「のう、グォーク」


 彼女を見ると、彼女は静かに涙を流していた。


「もし、ここで不合格になったら、わらわはどうすれば良いのじゃ?あの子の、ウリエラの期待を裏切るかもしれないのが、この上なく恐ろしいのじゃ、のう、グォーク……わらわは……」


 その思わぬ様子に、俺は思わず彼女を抱きしめた。


「大丈夫だ。自分を信じろ!お前がこれまで頑張ってたのは、俺たちみんな見てるんだ!それに、もし不合格になったって、ウリエラならお前と一緒にいてくれr……イデデデデデ!!!!」


「ダーリン?浮気?」


 痛みに振り返ると、先ほどまでリナと一緒にきゃきゃしていた蘇芳が俺の頭の両側から、その拳をぐりぐりと押し付けていた。違うと否定しながら抵抗すると、俺の胸元から、噴き出すような音が聞こえる。


「ぷっ、あはは、何しておるのじゃお主ら……しかし、なんだか気が抜けたのじゃ。感謝するぞ、グォーク、蘇芳」


 そう言うのとほぼ同時に、ギルドの奥の扉が開き、シュンとウリエラ、それに見慣れない白髪の老人が姿を現した。

 しわだらけの顔をした、身長150cmほどの小男だが、その瞳は炎のようにぎらぎらと輝いている。


「お前がサスティナだな」


「そ、そうじゃ」


 先ほどの柔和な笑顔が再び緊張で強張るが、それでもサスティナは男を見つめ返してしっかりと応答する。


「俺は、ここのギルドマスターのデラドだ。まぁ、これからはディーとでも呼んでくれ」


 それを聞き、俺はおや、と思ったのだが、緊張しているサスティナは気付いていないようだ。


「さて、お前も分かっていると思うが、お前さんの処遇が決まった」


 ごくりと息をのみ、沙汰を待つ罪人のように立ちすくむサスティナに、デラドはニヤリと笑って一枚のメダルを差し出した。


「ようこそ、冒険者ギルドへ、そしてようこそ我らのユグドラヘイムへ。我ら賢者のギルドは貴殿を理性ある隣人と認め、ここに人権を付与する。歓迎するぜ、竜のお嬢ちゃん」


「……っ!?」


 その言葉を聞いて、サスティナの目に感極まった涙が浮かんだ。そして、震える手で人権印章を受け取ったサスティナを、俺たちだけでなく周囲に集まっていた野次馬達も祝福する。

 そして、そんな祝福の中、師匠と弟子が嬉しそうに抱き合っていた。


「おめでとうございます!サスティナ様!」


「と、当然じゃ……(ありがとう、ウリエラ)」


 誰にも聞き取れないような声で言われたサスティナの言葉は、皆の歓声に打ち消されていったのだった。 

D「ところで、ウリエラちゃんから、従魔契約は続行って聞いてるが、それでいいか?」

サ「うぇっ!?いやちょっ……」

ウ「いいですよねお師匠様!!」キラキラ


グォーク一行  (うわぁ)






どうでもいい豆知識 ドラゴモールについて。

 グォーク達は2万G(ジュモンジ老取り分と合わせて4万G)で買い取られて喜んでますが実のところかなり安く買いたたかれてます。

 理由は主に、そもそもドラゴモールを取り扱うような職人がユグドラヘイムにあまりいないこと、未解体の状態での持ち込みであったこと、討伐依頼も何も出ておらず、報酬の追加が無かったことが理由です。

 そもそもドラゴモールは肉質があまりよくないので、身体の大部分を構成する肉を資源化しにくいため(従魔の餌にするとかで完全に使用用途が無いわけではない)デスシックル級としては安い傾向にあるけど、聖都リス・デュアリスまで持っていけば倍値くらいでは買ってくれた。

 また、ドラゴモールに限らないけれど、依頼料に見合わない値段の価値しか生み出さないけれど、どうしても必要みたいな絶妙な状態の素材が欲しい場合は、賢者の塔で死に戻り上等で採取している冒険者達に依頼を持ってったほうが現地冒険者よりも輸送費込みで安く抑えられるので、この世界では護衛や殲滅が素材採取よりも高額になりがちだったりする。

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