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オーク転生 脳筋種族に転生したとかマジですか。  作者: 廉玉タマ
3章 聖都・リス・デュアリス
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オークと毒沼蛇

 ポイズンレイクサーペントとの戦いが始まって暫く、俺たちは敵に対して攻めあぐねていた。

 毒や沼での不利はオークの体力と特性で何とかなっているが、一方で、現状の解決策がない。

 その体躯の大きさから生み出されるパワーと、毒が沼の水よりも凍りにくいようで、ボスの氷の精霊剣での攻撃でも動きを止めることができないようだ。

 しかも、悪いことに、大規模に氷を作り出したせいで、ボスの魔力が尽きて来たらしい。明らかにボスが消耗したようで、大きく肩で息をしていた。


「ボス!これ以上は氷は禁止だ!正直、お前が今動けなくなる方がきつい!」


「承知いたした!」


 何とか言い返したボスに続いて、今度はリナと蘇芳に声をかける。


「蘇芳退避しろ!今のままだと、事故が起こりかねない。早くジュモンジ老を!」


 そう言うと、何と普段は一切言うことを聞かない蘇芳が率先して避難を始めた。

 オーク一の天才(当社比)伊達ではないという事か。


 と、その直後、再びポイズンレイクサーペントの喉がせり上がる。


「あ、まず……」


 俺は一瞬背後を見て、リナ達、そして更に後ろのウリエラ達が十分に退避しているのを確認して、大きく息を吸い込み……膨大な毒水に押しつぶされたのだった。


~~~~~~~~~~~

sideリナ

 逃げて来る蘇芳ちゃんを見ていた私は、その瞬間を見てしまった。巨大な毒水が、グォークさんとボスを呑み込んでいく。


「ボス!グォークさん!?」


 私は思わずそちらに駆け寄るために、思わず走り出したけれど、蘇芳ちゃんが私の行く手を阻んできた。抵抗したけれど、蘇芳ちゃんは私を更に抱きすくめ、逃がしてくれなかった。


「離して!蘇芳ちゃん!ボスを、グォークさんを助けなきゃ!」


「イマイッテモ、ドウにもナラナイ。ジュモンジ、サスティナヨブ方がイイ」


 確かに、その通りだ。私や蘇芳ちゃんは、まだまだ強い相手との戦いの経験が少なくて、ボスやグォークさんに比べて戦力としては一歩も二歩も足りない。……毒のブレスを避けるために、ジュモンジさんもウリエラさんも、だいぶ遠いところに退避している。

 私は中間の地点で警戒をしていたから、どちらに行くにしてもそこそこの距離があった。その距離は、もし今ジュモンジさんの所に行けば、ボスやグォークさんは助からないかもと思うくらいには遠いのだった。


 どうしようもない。だけど、何とかしたい!ひと時、いや一瞬でもいい。あの蛇を引き付けて、ジュモンジさんがたどり着くための時間を稼ぎたい。


 私のそんな思いが、次の瞬間。私から溢れ出した。もしも俯瞰的に見ることができた相手がいるとすれば、その場にいる全員、ジュモンジさんやウリエラだけでなく、ポイズンレイクサーペントに至るまで、その全ての存在が私に注目していたということを証言してくれるかもしれない。そんなまばゆい光に身を包まれ、私は自分自身が変わっているのに気が付いた。

 等身は頭二つ分は伸び、足も相応にのびた。そして、何よりも一番変わったのが体の感覚だった。体が軽い。確実にそう思えた。


 そして、次の瞬間。少し長いような、でも一瞬だったような時間の中で私は再び大地に足を置いた。体が軽い。空が飛べるほどだと思って足に力を込めると、何と自分の3~4倍は高く飛び上がることができた。これも、何かに役立つのかどうかは分からないが、確実に成長した所だ。


 これなら、いけるかもしれない!

 横を見ると、蘇芳が小さく頷いていた。私は頷き返し、面貌を被ると、そのまま敵に向かって走り出した。


 とにかく、相手の動きを止める!不思議なことに私は一切やったことが無いようなことができるようになったという自覚があった。

 手をパンと叩き、再び開くと、蜘蛛のような糸が生成される。


「っ!?」


 更に加速した私は、ボスがいたあたりに突撃しようとしていた敵の周囲を回り、糸を絡ませる。


「ニンッ!」


 そして、糸の反対を近くの木々に括り付け、更なる糸をかけるために走り回る。

 

 どうやらあいつは、その巨体の割には力はそれほどではないらしい。数は多いものの、一本一本は細く、そして進化したばかりであるために十全に扱えているとは言い難い糸でも、明らかに動きを鈍くし、そして動きを止めた。


「次は、これっ!?」


 私は進化で得た力の一つである、土の魔法を行使しようとして……ガクリと膝から崩れ落ちてしまった。


”しまった!無理をしすぎた!?”


 思えば、私がここまで魔力切れにならなかったことを不審に思うべきだった。ボスが魔力切れになったのだ。無理な力を使えば、同じようになるのは目に見えていたのに!


 足を止めた私に、巨大な影がかかる。無理して上を見れば、そこには満足に動けないなりに、顔をこちらに伸ばす奴の姿があった。


 思わず、私は目を閉じてしまった。体は異常な倦怠感で動かず、どうにかする方法もない。ただ、ボスから意識を逸らせることができたという思いだけを残して。


 そんな私は、肌に感じる冷気で目を見開く。


「我が妻に、手を出すなぁあああああああ!!!!!!!!」


 動きの鈍ったポイズンレイクサーペントにむかって、ボスが私を守るように、今迄で一番の冷気を纏った一撃をお見舞いし、大蛇の顔を凍てつかせる。


 最後の一搾りだったのだろう。ボスはその体を、ズルリと傾け、地面に倒れ伏してしまった。

 ボスの心配をして動かない体を動かした私だったけれど、ポイズンレイクサーペントに対しての不安はなくなっていた。だってボスが……私の旦那様が動いたならば、あの人が信じる彼が、動かないわけはないのだから。


 そして、私とボスが動かない体を寄せ合って手を取り合う中、巨大な蛇の頭は轟炎を纏った一撃で、粉々に砕かれたのだった。


 

 ジュモンジ(根っこ)”いつ助けに入ろうかのう?”

 グォークに補助を頼むかもしれないと言われていたため、地下に根を張って十分に準備をしていたのに、良いところでリナが覚醒したせいで出番かどうか悩む老木の図。


 なお、やっぱり前回のマンティコアやドラゴモールと比べてもそん色ないように見えますが、実際のところは主人公たちの消耗が大きいのが原因です。

 また、ポイズンレイクサーペントは図体の割には力がさほどではないので、拘束攻撃や素早い攻撃に弱いです。


 リナちゃんの進化ですが、実は本来は別の種になる可能性が高かったのですが、とある理由からオリエンタリズムあふれた進化先になりました。


 リナちゃんが進化直後に色々特技を把握していたのは、ボスが突然言葉を話すようになったように脳内インストールが発動したから。

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