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オーク転生 脳筋種族に転生したとかマジですか。  作者: 廉玉タマ
3章 聖都・リス・デュアリス
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オークと老木

「おぉ、よく来たのう。グォーク、アンネ、ボス、それに雌オークにゴブリナ嬢」


 俺たちがジュモンジ老を訪ねたところ、そんなあたたかな声をかけられ、歓迎の姿勢を示された。……ジュモンジ老には。

 周りのエルフたちの態度はほぼ真逆だ。はっきり言って凍結したといって差しさわり無いほどの絶対零度の視線が俺たちを襲った。


「ん~」


「ちょ、何してるのよ」


 思わず扉を閉めてしまったが、俺は悪くないと思……いや、ごめんなさい。

 アンネの視線まで温度が下がり始めたため心の中で謝罪しつつ、一旦深呼吸をしてもう一度扉を開く……すると、扉いっぱいに広がった樹木の顔があった。


「うぉっ!?」


「あやっ!?」


 俺とジュモンジ老が双方ともに飛びのき、ジュモンジ老の方は何やらガラガラと音がしている。


「っつ、すまんのう、どうじゃ、少し飲みに行かんか?」


「いやいや、そんなことより、大丈夫か?枝が何本か折れているように見えるが……」


「なに、こんなものはかすり傷じゃよ」


 そう言って、ジュモンジ老は問答無用で俺たちを酒場に連れ出したのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~

「すまんのう、うちの娘たちが」


 酒場で一杯目の酒を煽りながら、ジュモンジ老はそうつぶやいた。


「あの娘らは、儂のことを神聖視していてのう、どうやら、儂が俗物的なことをすると、聖人がけがれたように感じるようなのじゃ」


 そう言ってはふぅと息を吐くと、ジュモンジ老はもう一杯酒を煽る。よく見れば、触手のように伸びた枝には、既に数十というジョッキが携えられていた。


「じゃから、こういうこともあまりできん」


 そう言うと、更に杯を重ねるジュモンジ老。なお、俺たちもご相伴にあずかっており、蘇芳などは話そっちのけで既に酒と食事を楽しんでいた。


「それは……多少同情するが、しかしその敵意が俺たちに向くとなると笑い話にもならないんだが」


「分かっておる。……いや、まぁ儂とて娘らの意志を都合よく変えることなどできんが、それでも決してお主らに手を出さんことは約束させておる。居心地の悪さに関しては……あの子らもまだ若い。お主らの人となりを知れば、態度も和らぐじゃろうて」


 そう言ったジュモンジ老に、俺は2杯目の酒に口を付けながら言葉を返した。


「まぁ、こちらも昇進試験を受けるための手助けをしてもらう身だし、強くは言えないところだけどな。っと、せっかくこうして話しているんだ。依頼の詳しい話を詰めてもいいか?」


「うむ、そんなことじゃろうと思って、話すことは纏めておるよ」


 そう言って、酒を挟みながら、詳しい話を伝えて来た。


「まず、お主らがお察しの通り、今回の依頼はお主らへの礼と……詫びを兼ねたものだと思って欲しい。まぁ、後はリリス様の話を聞いて興味をもったのが一つじゃな。

 報酬は歩合制、活躍によって変動させようと思っておる。お主らには昇給試験を受けることができるというメリットもあるわけじゃし……あまり優遇しすぎると娘たちが勝手にお主らを襲撃しかねんのでな。基本報酬は最低額にさせてもらうが、勘弁してくれ」


 そう言って、さらさらと手元の葉に報酬額を書いて提示した金額に、俺たちの目が点になる。


「え、いや、ちょっと待って、10万ジェルって……嘘だろ?」


「ジュモンジ様、これって間違いじゃ……」


 俺たちが今まで受けて来た依頼は高くて前回の護衛依頼の300ジェル、ゴブリン級なら100ジェルがせいぜいといった所。高級素材として買い取られた魔粘土でさえオークサイズの物2つ分あって9000ジェルだったことを考えれば、この金額は破格も破格だ。


「ふむ、そんなことは無いぞ。本来のシーサーペント級なら、依頼料が桁一つ異なる。じゃが、何もせずについて行くだけでも達成できる依頼なのでな。最低金額ということでこれくらいになったのじゃ」


 俺たちはそれを聞き、上位の冒険者の非常識さに呆れながらもアンネが口を開いた。


「え~っと、ジュモンジ様……?これが最低額ってことは、これ以上の上乗せがあるってこと?……」


「うむ、最低金額の場合は、お主らは儂らの後をついて行くだけの場合じゃな。護衛したという実績だけを手にするならそれで構わん。もし、本当に護衛依頼をするというなら、その分の報酬を上乗せしようという事じゃ」


 少し考えて、俺は仲間たちに振り向いた。


「なぁ、この依頼、俺は積極的に護衛をしながら行こうと思うんだがどう思う?」


「我は依存ありませんな。そもそも、これほど好条件で上位の依頼を受けられるのは滅多にないかと」


「そうね、いざとなったらジュモンジ様たちが援護してくれると考えればこれ以上ないわね」


 ボスとアンネの答えに、何もせずに報酬を貰うという状況に耐えられそうにないと考えていた本心を隠しつつ頷いた。


「報酬をもっともらえるのじゃぞ!受けるに決まってるじゃろう!」


「……お師匠様、それはちょっと即物的じゃないですか?」


「な、何を言う!正当な報酬を得て、一人立ちするのも、大事なことだぞ!それに強くなるのは何かと入りようじゃからな。これが盗みや恐喝で得たというならともかく……ともかくっ!正当な報酬ならむしろ褒められたことじゃ。じゃろう!」


 サスティナのちょっと俗っぽい考え方に少し安心しつつ、俺はサスティナに応答した。


「あ~。まぁ、卑しいってことは無いんじゃないか?」


「なるほど、すみませんでした」


「わ、分かればよいのじゃ。……じゃが、確かに不要な財産を持つのは増長の元かもしれんのぅ……のう?」


 なんだかサスティナが見栄を張ろうとよくわからないことを呟いているので、流し聞きつつ、俺たちはジュモンジ老に続きを促した。


 その後はエルフたちとの連携(といっても、親密な関係ではないため、お互い戦闘については基本不干渉で進めること)や旅程の決定(基本的にはジュモンジ老が意思決定をするが、護衛を続ける場合はその消耗具合からこちらが野営の提案をする権利を有すること)に関する取り決め、食料や旅の備品に関すること(水等はジュモンジ老が魔法で用意できるため不要だが、食料備品は各自用意すること)等を話し合い、最後に出発を3日後としてその日はお開きとなった。


 そして、二日の休息と旅の準備を終え、俺たちはジュモンジ老と共に、ユグドラヘイムへの旅路へとついたのだった。

 まぁ、安全マージンを保障してくれる護衛依頼なんてめったにないよねっていう。

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