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オーク転生 脳筋種族に転生したとかマジですか。  作者: 廉玉タマ
3章 聖都・リス・デュアリス
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オークとマンティコア3

 鮮血をまき散らすマンティコア。のたうち回り、叫び回るマンティコアを俺たちは遠巻きに見守る。弱点である喉を精霊王の剣で刺し貫いても、致命傷に程遠い様子で元気にのたうっているが、それでも復帰するにはそれなりの時間がかかった。

 そして、よろよろとよろめきながら俺たちの前に立ちふさがる。


「グヌヌヌ。コノ、カトウセイブツガ!!」


「ふぅ、流石はマンティコアってところだな……ただ、チェックメイトだ」


 そしてその直後、マンティコアの頭上から真紅の巨体が覆いかぶさった。


「なんともまぁ、オーク3匹と妖精一匹でわらわと同格の魔物をここまで良いように消耗させることができるものじゃな。……まぁ、それでこそわらわに一度勝った者達というべきかの」


 そう言ってサスティナは上機嫌に笑った。


「グォークよ。レビンとリナはレニ村へと送り届けた。あとはこいつにとどめを刺すだけじゃ」


 それを聞いて、俺はほっと一息を吐く。


「よし、それなら……」


「待って!グォーク」


 待ったをかけたアンネに、俺とサスティナは不可解な顔で目線を送る。


「待ってって言ったって、今は有利な状況に持って行ってるが、曲がりなりにもサスティナと同格だぞ?」


「うむ、力はさほどないタイプのマンティコアのようだから、抑えるのは構わんが、正直何するか分からんから早く止めを刺したいのだが」


「だから、それを待ってって。そもそも、ちょっとおかしいと思わない?」


 アンネの言葉を聞くが、俺たちは頭を捻り、何も思いつかなかった。それにイラついたのか、アンネが早々に言葉を続ける。


「ここ、一応リスデュアリスから歩いて2日の距離なのよ。普通の人ならもうちょっとかかるかもしれないけど、そんなところに、何でこんなに強力な魔物がいて、何の対策もされてないのよ!?」


 確かに、最初に凍結して無力化したとはいえマンティコアには大きな羽根もあり、そうでなくても強靭な四肢を持っている。その身体能力からすれば、王都のリス・デュアリスへも容易に日帰りできそうだ。そして、さらに言えばレニ村との距離はより近く、この森は比較的安全なルートとして低頻度ながら使われているルートだった。


「……確かに、あの王都じゃファンレイさんやテュフラさんなんかの戦力がいるわけだし、街門の老兵もマンティコアを倒せるって言ってたよな。仮に討伐ができないにしても、危険を認知してないっていうのは不可解……なのか?」


 そう考えた俺は、思い付きで背後に向かって声をかけてみた。


「そこんところ、どうなんだよ」


「グォーク、誰に向かって話して「おや、気付いていましたか」!?」


 アンネが驚愕と共に振り向いた先には、全身真っ黒な衣装を着た眼鏡の男が佇んでいた。


「いや、気づいちゃあいないさ。ただ、サスティナに監視が付くって話があったから、対人の依頼である今回の依頼にはついて来てるんじゃないかと思っただけだ」


「なるほど、まんまとあぶりだされてしまいましたか」


 そう言ってくつくつと笑う男に、俺は呆れたように首を竦めた。


「あんたこそ、呼ばれるのを待ってたんじゃないか?声をかけてから、出てくるのが早すぎる。大方、俺たちに何か伝えることがあって出るタイミングをうかがってたってところか」


 それを聞いて眼鏡の男はゆっくりと拍手をして、眼鏡をあげた。


「なるほどなるほど、オークにはもったいないほどの名推理、しかし、それを説明するには少しお待ちを……今から私の上司がっ!?」


「もっと早く呼ばないかこの忍者オタクが!」


 何かもったい付けて話していた男は、そのままビキニアーマーの女に跳ね飛ばされて数メートル吹っ飛び、そこにあった木にぶつかってへたり込んだ。

~~~~~~~~~~~~


「ごめん、ごめん、まさかこんなことになるとは……」


「グヌヌ、カンチガイシタ。スマナイ」


 俺たちの目の前には、タハハと笑うファンレイと、老人の頭をシュンとさせて俯くマンティコアと、それとファンレイによって五体投地させられている忍者オタク、シュンの姿があった。


「もう一回整理していいか?まず、この森のマンティコアは、賢者の従魔の一匹で、この森の管理をしている。その過程で、増えすぎたオークや、力と知恵を付けて村を襲おうとするオークキングが出た際間引くため、オークの習性を利用していた。と。こういうことだな?」


「そ、それで、人権印章を持たない君たちが、どこかで知恵を付けて来たオークキングとオークナイトあたりと勘違いして襲い掛かっちゃったわけ」


「カサネガサネスマナイ」


 俺はそれを聞いて、少し目を瞑る。


「つまり、我らが通ったから、マンティコア殿が過剰に反応したと」


「……ボス。いや、確かにその通りなんだが……」


 微妙な顔をしながら言った俺たちに、ファンレイは困ったように頭を掻いた。


「本当なら、ギルドから伝えるべきだったんだろうけど、マンティコアは一般人どころか一般冒険者にも刺激が強すぎる魔物だからね。ミジナの森にマンティコアがいるっていうのは結構な機密事項で、まぁ、多少噂にはなってるかもだけど、確実にいるっていうのは王都のギルドでも幹部級しか知らされてない話なんだよ。

 ……いやはや、今回の依頼主経由で話が来た時は本当に肝が冷えたよ。思わず仕事を全部テュフラに丸投げしてこっちに走ってきちゃったよ」


 ……さりげなく俺たちが一日で進んだ距離を数十分から数分ですっ飛んできたという事実が明るみに出た気がするが、とりあえずスルーしよう。まぁ、一々幹部級の人材が、冒険者にすらなっていない存在を監視し続けるなんてナンセンスなので、これは不幸な行き違い……。


「まぁ、()()がちゃんと仕事をしていれば、こんな手間はかからなかったんだけどね」


 青筋を立てて忍者オタクを指さすファンレイの様子から、そう言うわけでもないようだ。


「しかし、私が依頼されたのはドラゴンであるサスティナ嬢の監視依頼でして……マンティコアに遭遇した後も、サスティナ嬢を追跡するのを優先するのが当然かと!」


「だーかーら、依頼を受けた時点で旅程とかを確認して、ミジナの森を通るってこっちに一言言えば済んだ話じゃないか!お前はマンティコアがこの森にいるの知ってるだろうが!!」


 その後も忍者オタクへの罵倒は続き、萎れ切った何かのように忍者オタクが壁にしなだれかかるまでそれが続いた後に、ファンレイはこちらに向き直った。


「今回のことはギルドの不手際だ。もしもスムーズに人権印章を交付できていれば、あるいは、この馬鹿がきちんと報告を通していれば、避けられた事態だった。それなのにこのような事態を招いたことは本当に申し訳なく思う。

 それに、ギルドの幹部としても、マンティコアをここまで追いつめることができる戦力に報いないのは不義理だと感じる。今回の報酬は上乗せさせてもらおうと思うが、どうだろうか」


 それを聞いて、盛り上がったのはサスティナだった。他の者もそこそこうれしそうな顔はしているものの、アンネと蘇芳は金銭にはそれほど執着を見せないし、ウリエラはまだ金勘定が怪しいところがある。ボスは金銭よりはレニ村にいて護衛を続けているリナのことが気になるようだ。

 そして、俺はファンレイに一つの言葉を投げかけた。


「なぁ、ここのオークはどうなるんだ?」

 本気で戦えばマンティコアもひとたまりもなかったし、実行したとしても、それでファンレイが怒り出すことは無いけれど、賢者サイドの皆さんの内心は少し頭を抱えたい気持ちになる程度の打撃があります。


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