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オーク転生 脳筋種族に転生したとかマジですか。  作者: 廉玉タマ
3章 聖都・リス・デュアリス
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オークとマンティコア

「グルルルル」


 警戒の声を上げるマンティコアに、俺たちは武器を構えて相対した。そして、ウリエラとサスティナに声をかける。


「サスティナ様!とりあえず、サスティナ様はウリエラちゃんとレビンさん、それにリナさんを連れて安全なところまで退避してくれ!」


「む?いや、これほどの実力のある魔物なら、わらわも一緒に戦った方が良いのではないか?」


「それで依頼失敗したらどうする!俺だって勝機が無ければこんなことは言わない!素早く安全地帯に移動したら、レビンさんたちを置いて戻ってきてくれ!」


 俺がそう怒鳴ると、サスティナは大きく頷いた。


「そう言う事なら承知したのじゃ!」


 そう言うと、みるみる巨大な龍に変化し、リナが飛び込んだ馬車ごと後足で掴んで上空に飛び上がった。馬もしっかりつかんでいるが……あの馬気絶してないか?

 さらに見ると馬車から身を乗り出してレビンが唖然としていた。……しまった、そう言えばレビンにサスティナをドラゴンだって伝えていない気がする。

 一応ウリエラの従魔というのは伝えたはずだが、馬車の住人になってたから、弱い魔物だと思っていたのかもしれない。


 サスティナが飛び去った後、俺はアンネに目くばせをする。


「とりあえず、アンネは妨害魔法を打ちまくってくれ。俺たちの目的はこいつの討伐じゃない!状況が変わるまでは多少詠唱に時間がかかっても守ってやれるはずだ、広範囲かつ強力な奴で足止めを狙うぞ!」


「分かったわ!とりあえず片っ端から行くわよ!」


 そう言ってアンネは呪文の詠唱に入る。強靭な四肢と飛翔さえも可能にする翼を持つマンティコアに対し、単体を相手にする妨害魔法は避けられたり、弾かれたりする可能性がある。

 だが、状態異常が無効な俺とボス、それに魔法の使い手であるアンネだけならば、ここら一帯を状態異常の魔力で汚染しても問題ない。


「"睡眠の霧!(スリープミスト)"」


 その声と共に放たれた魔力の霧は、一瞬でここら一帯を包み込み、マンティコアもその頭を少し下げた。


「……!来ますぞ!」


 ボスの言葉と共に頭を下げたマンティコアは、アンネに向かって突進してきた。どうやら、マンティコアが頭を下げたのは、睡眠が効いたからではなく、アンネの魔力を感知して、突進の準備をしたからだったようだ。


「行くぞ!マンティコア!」


 そう言って、俺は足に力を込めると、思いっきり()()()()()


「……!?」


 虚を突かれたように横を通り過ぎ、振り返ったマンティコアの眉間に、俺は炎の剣を叩きこむ。


「ギュァアア!!」


 再び警戒して後ずさるマンティコアを見ながら、アンネが不可解な顔をする。


「"麻痺の雷光(パラライズウィスプ)"何よ、さっきの。すっごいかっこ悪かったわよ」


「怪我の功名だ。ビビったおかげで一撃入ったんだ。それより、今のうちに次だ」


 アンネが放った麻痺をもたらす狐火にも似た電光を避けつつ、再びマンティコアが接近する。その焼け焦げた額からは血が流れ落ちているが、あまり効いている様子ではない。


「ボス!合わせろ!」


「承知!」


 そう言うと、俺は炎の剣を振りかぶって頭上に掲げ、その勢いで放り投げた。


「グォーク!?」


 驚愕するアンネと、にやりと笑ったマンティコアの顔、俺はそれを見ながら、焦らずに振りかぶった手をそのまま頭の上から背中に回し、そのまま固定した金具を引きちぎって急接近したマンティコアの頭にぶつけた。


「グャァ!?」


 それは、俺が賢者の塔のガルディン工房で新調した武器、ウォーハンマーである。精霊王の剣と比べれば特殊能力もない弱い武器だが、オークが使うに足るだけの頑強さと重量がある。

 勿論それだけでは精霊王の炎の剣を耐えたマンティコアを倒すことは不可能だ……ただし、俺を信じて追撃を用意したボスが居なければ、だが。


「はぁっ!!」


 攻撃を予想外の方法で防がれたマンティコアが、慌てて俺に追いすがろうとした直後、背後から響いた声と共に振り下ろされたボスの剣は、あっさりとマンティコアの二つの翼を凍てつかせた。


「グルゥゥゥゥ!?」


 マンティコアの老人のような顔が、驚愕から戸惑い、そして、怒りの顔へと変化する。そして、ボスの方へとギロリと視線を向ける。


「主殿!」


 俺に声をかけたボスに、俺は叫び返す。


「畳みかけるぞ!ただ、俺たち以外のオークが出て来た!居られても厄介だ!無駄かもしれないが、オーク達を散らしてくれ」


「承知!グィーガ(離れよ)!!」


 ボスがオーク達にオーク語で吼えるが、案の定そこにいる傷持ちのオーク達は離れることは無かった。しかし、それでも俺たちにも、マンティコアにも襲い掛かる様子はない。


「とりあえず、オークは無視して行くぞ!」


 そうして、俺はウォーハンマーを振りかぶり、マンティコアに向かっていくのだった。

 なお、マンティコアはまだまだ本気を出していない様子。本来のマンティコアの戦法は多彩な魔法攻撃に強力な状態異常を発生させる物理攻撃を織り交ぜるヒットアンドアウェイ戦法と無尽蔵の体力が持ち味。そもそもサスティナちゃんと同格の魔物なのでこれで終わりなはずがない。

 ただし、純粋な戦闘能力だけでマンティコラ級にのし上がっているノーブルドラゴンと違い、状態異常の厄介さや、体力の多さも加味されているため、純粋な物理戦闘能力だけ見ればオークキングの膂力、速度の2~3割増しくらいに抑えられている。

 

 総合すれば、毒や麻痺、眠りに石化、凍結等々の状態異常をばらまく、空を飛び、体力が5倍、頑丈さが4倍くらいあり、しかも部位破壊しても切り離した側も別の魔物かというほどに動き回るオークキング(賢い)というスペック。

 なめプのせいで羽根が使えなくなったし、状態異常はオークだから効かないけど。

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