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オーク転生 脳筋種族に転生したとかマジですか。  作者: 廉玉タマ
3章 聖都・リス・デュアリス
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オークとミジナの森

 一夜明けた次の日、俺たちはミジナの森に入り……そして、平和な旅程を継続していた。


 今も目の前をオークが通りかかり、そのまま通り過ぎて行った。


「……これ、すごいな!その、匂いはちょっとあれだけど、オークに襲われないとか、これ、商品化したら楽になる旅程がいくつか思い浮かぶわよ!」


「いや、これ、最大でも一週間くらいでダメになるから作り置きできないわよ」


「それと、俺としても商品化するのは堪忍してほしいかな」


 アンネには内緒にしているが、このシィラの実のロケットの匂いは……結構クるのだ。主に性的な意味で。アンネは俺の常識的に性的対象でなく、アンネとの関係でその状態に慣れ切ってしまったため、レビンがそれを持っていても何とか耐えることができる。が、逆に言えばそれだけしても耐えられる程度だ。


 隔離したオークから材料を搾り取って販売するか、俺の物を使えば限定的に売ることはできるだろうが、ふとした瞬間欲情するとか、どんな事故が起こるか分かったものじゃない。


 とはいえ、レビンもどこまで詳しく察したかは不明だが、商品化は難しいことを察してくれたらしい。そうか、といっただけで視線を前に向けた。


 前を向いた俺は、この森のオークについて思いをはせた。

 黒き茂みの森でもそうだったが、基本的にこのミジナの森でも、オークは上位者のようだ。バシリコックは本来ならば嘴でつついた相手を石化させる凶暴な魔鳥なのだが、例によって例のごとく、オークには石化は無効なわけで、他にも相手を麻痺させるパラライズタランチュラや、相手を催眠状態にするマインドアイ(フライングアイの亜種)などがいたのだが、そろいもそろってオークに無効であるためいいカモになっているようだった。

 まぁ、ちらりと彼らの集落を見ただけなので、それがどれほどの規模で行われているのかは不透明だが、経験則から言って大きな間違いはないだろう。


 ……いや、ただ、少し気になることはあったか。


「ねぇ、グォーク、この森のオーク、なんかおかしくない?」


「確かに、そうだな。ここのオークは()()()()()()()()


 この、ミジナの森のオークには、身体に傷を持つ個体が多かった。

 これが、1~2体しか傷持ちがいないなら、そして、その傷が真新しいものであれば、特に騒ぐことではない。だが、それが何体もおり、しかもその傷が古傷であるというのなら、話が変わってくる。


 俺たちオークというのは、基本的に膨大な生命力と呆れるほどの再生力が脅威とされる魔物だ。その再生力というのは、食料さえ十分であれば、多少の部位欠損すら再生してしまうという非常識具合なのだ。具体的に言えば、手の指先くらいなら再生する。

 手から先でも、物さえついていれば神経が再接続されて動くようになる。まぁ、尤も、正しく接続でき訳ではないので、傷跡は全くないねじくれた腕になるのだが。


 とにかく、そんな再生力が高いオークにとって、見てわかる傷跡が残ること自体が稀なのだ。俺たちが把握している例外は……。


「む、どうしたのですかな?主殿」


 例外は、今俺横にいるボスだけである。


「ボスの顔の傷はいつ受けたんだ?」


「そうですな。確か、オークキングに仕える前は傷も問題なく再生をしていたと思いますな……確か、かのオークキングに従い、初めてあやつと共に向かった狩りで誤ってあやつの剣が我の顔にかすったもの。確か、それがこの傷でありましたな」


 それを聞いて、アンネが考察を始めた。


「ってなると、オークの傷が残るのは……オークキングの支配下になった時?」


「いや、アンネは直接見てないかもしれないが、オークキングの手下たちにボスみたいな傷持ちはいなかったぞ」


 俺がそう言うと、アンネがもう一度頭を捻り、そして言葉を続ける。


「なら……もう少し範囲を広く……例えば、自分が脅威に感じている相手が近くにいる時?」


「そうですな……、脅威、というと少し違うかもしれませぬが、我はただのオークだった時から、あやつのことは気に食わぬと思っておりましたし、加えて言えば絶対に勝てぬとも思っておりましたから……脅威に感じている、というのはあっているかもしれませんな」


 それを聞いて、俺たちはなんとなく嫌な予感を感じた。


「ねぇ、なんかヤバそうな話をしてるけど、それってどういう意味なんだい?」


 レビンの言葉に、俺は質問を返した。


「レビンさんは、オークのことについてはどれくらい知ってるんだ?」


「んー。そうだね。猪突猛進で物怖じしない。馬鹿だが執念深く、引くことを知らない種族だってくらいかな」


 俺は大きく頷いて、彼女に告げる。


「概ねその通りだ。オークは引くということを知らない……というか、引くという考えに思い至らないし、そもそも自分のことを最強とでも思っているから、引く必要すらない。どんな強い相手だろうが、その力の過多を気にせず突っ込んでいく。

 だが、アンネの予想が正しければ、そんなオーク達が潜在的にでも恐れる者がいるってことになる」


 そう言った瞬間、今まで黒き茂みの森で聞いたことのないようなオークの声が聞こえる。それは被捕食者の悲痛な声。悲鳴のような恐れを含んだ悲痛な声だった。


「行くぞ!」


「承知!」


 俺たちは急いで悲鳴の方に向かった。かくしてそこにいたのは巨体を誇りながらも、その腹を食いちぎられ、逃げ惑うオークと……臓物を加える巨大な獅子、否獅子の体を持ち、サソリの尾と老人の顔を持つ化け物だった。


「キメラ……いや、違う!」


「まさか、こんなところにこんな大物がいるなんてね。グォーク、ボス。今目の前にいるのはマンティコア!階級の名前にもなっている、かなり強い魔物よ!」


 そして、俺たちに気付き、咆哮をあげるマンティコア。戦闘の始まりである。




 

マンティコア マンティコラ級 

 キメラの最終形態の一つ。獅子の体と老人の顔、サソリの毒を持ち、その身は巨人並みに大きい。知能は高く、その獅子の体が示す通り、身体能力もまた高い。さらに言えば、持つ毒も相応に毒性が高く、おまけに付け加えれば、好戦的である。


 ただし、マンティコアであれば全てマンティコラ級である、というのは間違いであり、実際はその成長度合いや、制作者の技量次第でその強さが変わる。そもそもマンティコアとマンティコラで微妙に名前が違う。

 最初に想像されたマンティコア系の魔物の名前がマンティコラと名付けられ、のちに伝わっていくうちに訛った上で、同系統の魔物がマンティコアと呼ばれるようになったという流れ。

 残念なことに今回のマンティコアは種族に恥じない強さを持っている。

 一応魔物同士の交配で産まれることもあるが、繁殖力が低いうえに、厳密に同種と言える存在が非常に少ないため、野生で出会うことは滅多にない。

 

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