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オーク転生 脳筋種族に転生したとかマジですか。  作者: 廉玉タマ
3章 聖都・リス・デュアリス
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オークと鍛冶師

 聖都リス・デュアリスについて、二日目の朝。

 ギルドから帰った後、宿をとり一夜明けた朝一番で、俺たちは人権印章を発行してもらう為に、賢者のギルドと提携している鍛冶屋に足を運んでいた。


 なお、宿を取る時にその宿の主人に怯えられたり、宿屋の一人娘に怯えられたり、雌オークに男湯に突入されそうになったり(リナとサスティナが結託して女子トークに持ち込んだらしい)と疲労がたまることがいろいろあったものの、それでも一夜明ければすっきりと目覚めることができた。


 と、それは兎も角、現在俺たちの目の前には腕を組んだドワーフの鍛冶師が難しい顔で俺たちを見つめていた。


「ふーむ、そうは言われてもなぁ、こっちも予想外だからな」


 現在議題に上がっているのは、人権印章の交付について、リナには可能だが、俺たち、具体的には俺、ボス、蘇芳にはすぐに交付ができないという話だった。


「……それはどうしてだ?」


「そうだな、見てもらった方が早いか。ちょっと待っててくれよ」


 そう言って、ドワーフの男が奥の方に下がったかと思うと、すぐに一枚の手のひらサイズの円形の金属片を持ってきた。


「ほれ、こいつがお前さんの人権印章だ。無くすと再交付が驚くほど面倒だから無くさんようにな」


 リナに渡された物を見ると、青みがかった銀色の丸い金属に、ゴブリンらしき顔が模られている。俺たちがドワーフの方を見ると、彼は肩をすくめてメダルを見つめた。


「見ての通りだ。人権印章は交付する種族の姿をその印章に模らなきゃならん。もし冒険者にでもなって、任務先で死亡、知恵の回る魔物がその人権印章を使って悪さする……みたいな事件を未然に防ぐためにもな。

 ゴブリンの印章は結構な数が出るし、ドラゴンだって数は少ないが、百年もあれば一度ぐらい使うから用意してある。だが、オークはなぁ」


 そう言って首を掻くドワーフに、俺たちは彼の言いたいことを理解した。


「つまり、今まで人権付与されたオークがいなかったから、オーク用の人権印章を今から作らなきゃいけないってことか?」


「あぁ、というか、こういうのは統一せんといかんから、図案を作って、それをギルドに提出して……それが承認されてから制作って流れになるから、まぁ一週間くらいはかかるかねぇ」


 それはつまり、その一週間動きが取れないというわけで……。


「冒険者への登録とかは……」


「一応、あれも最低限の信用がいるからなぁ、人間や比較的知能の高いとされる種族ならともかく、オークじゃなぁ……」


 詳しく聞くと、信用が無い場合、他の冒険者から襲われる可能性があるそうだ。要するに、個人として冒険者の仕事をすることは可能だが、それを他の冒険者が容認するかは別問題、という事らしい。

 しかも、仮印章の効果範囲は、あの老兵の言った通り、この街までしかカバーしておらず、要は依頼を達成するために町から出た瞬間、効力が無くなるらしい。

 本来ならばそれでも問題は大きくはないのだが、仮の印章を持つ魔物というのはつまるところ人類種の法概念を理解している存在とみなされ、その状態で人を害した場合は一旦降りた人権許可が取り下げられる可能性がある。

 冒険者ギルドではそこら辺の事情をうけて、人権許可を得たいがためにあまり抵抗できないそう言った魔物を狙って素材や経験値を得ようとする卑怯な冒険者が出てくる可能性を考え、人権印章を提示しない、つまり法的に守られていない存在に対しては冒険者になることはできないとあらかじめ決めらてしまっているそうだ。


 俺たちとギルドの信用度の問題なら奉仕作業とか、或いは、何かを信用の証として貸与するなどすれば何とかなったかもしれないが、そう言う理由だと中々許可は降りなさそうだ。


「一応俺たちは賢者の塔で換金した素材を売った分の資金もあるし、ぶっちゃけた話、ギルドの心象が悪くなるかもしれないが、いざとなったら冒険者としてじゃなく、自分で食べるために魔物を狩ればなんとかなるな」


 そう言いながらちらりとサスティナの方を見ると、すごく冷や汗をかいていた。……まぁ、一応冒険について行く許可自体は得られているものの、経過報告をするための俺が冒険に出られないということになれば、許可自体が取り消される可能性が高く……彼女の性格上、貯蓄的なものもほとんどないだろうから、俺たち以上に生活が危ういのではないだろうか。


「……なあ、アンネ、例えばなんだけど」


 ふと、塔の謎解き迷宮で聞いた権利印章関係の話を思い出し、アンネに確認を取ってから、俺はサスティナに声をかけた。


「サスティナ……様、まだ冒険者になることはできないが、冒険者と同様に依頼を受けることができるかもしれない方法があるんだが、どうだ?」


「……!聞いてやらんでもない!」


 その後、話の流れによって、サスティナが精神的に被害を被ったり、その結果もめにもめたりしたのだが、何とか話を纏めて、冒険者ギルドに向かったのだった。


なお、監視していた職員から詳細を聞いたファンレイはグォーク達が冒険者ギルドに来るまで頭を抱えることになった模様。

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