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オーク転生 脳筋種族に転生したとかマジですか。  作者: 廉玉タマ
3章 聖都・リス・デュアリス
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オークとギルド

 俺たちがその建物を見つけたのは、実を言えば街壁を通り過ぎてすぐだった。王都という発展した場所であるとはいえ、前世の都会とは違いどちらかというと背の低い建物の多い、中世ヨーロッパのような雰囲気の漂う街だ。


 そんな中にあって、異常な建物が二つある。一つはその町の中央に位置する巨大な建造物。まるでそこだけが別世界であるように、急峻な斜面を登った先にある城。つまるところ、聖王国リス・デュアリスの王が座する城。通称聖国城(ホーリーパレス)

 そして、もう一つが俺たちが目指していた場所であり、ミニチュアサイズの賢者の塔とでもいうべき建造物、前世の建造物と比較するならば東京タワーと同じ程度の高さはありそうな建造物であった。


 ギルド。正確に言うのであれば、賢者のギルドと呼ばれるその組織は、あまりにも大きい影響力と組織の大きさから、ただ単にギルドと呼称するだけで一般にそれだと認識されるほどに他に存在する雑多なギルドとの力の差があった。


 そんな非常に強い影響力を持った賢者のギルドの前で、俺たちは丁寧なもてなしを受けていた。


「いらっしゃい、さ、さっさとギルドの中に入って」


 そう言ってにこやかに笑う少女は、しかしその笑みとは裏腹に恐ろしいまでの威圧感を放っていた。


 というか、なんだか見覚えがある少女だ。ちらっと見ただけなのだと思うが、特徴的な猫耳に、帽子、それに箒と魔女のような衣装は、どこかで見たような……。


「も、もしかして、テュフラさん?」


「……ん、そっちの妖精は……もしかして塔で会った?」


 アンネの言葉で俺はやっと思い出した。彼女の姿は、アリシアが精霊郷で狂呪熊(ラースベア)と戦った時にちらりと見た、賢者の直弟子の幻影にそっくりだったのだ。


「まさか、賢者の直弟子が直接なんてな……」


「それは、そこの駄竜が余計なことをしたから、せっかく寝てたのにたたき起こされた」


 テュフラの恨めしそうな視線に、駄竜ことサスティナがビクリと震えた。ただ、ウリエラの手前、ぐっとこらえて彼女を見返している。


「……まぁ、それはいい。人権の交付もするから早く入って」


 そう言って、俺たちはテュフラに案内されてギルドの建物内に入って行った。


 ギルドに入ってすぐは大きな広間になっていて、大きな広間とその先の受付があった。文字が読めない人や種族のためか、文字以外に絵でそれぞれの受付の説明がなされているようで、ざっと見ただけでも、農業関係(稲を収穫する農夫の絵)狩猟関係(鹿を背負った狩人の絵)漁業関係(魚籠を持った男の絵)冒険者関係(怪物と戦う男の絵)商業関係(品物と硬貨の絵)職人関係(鎚を持った老人の絵)魔法関係(杖を持った男の絵)等、雑多な受付があるのが分かる。


 テュフラはそれらの受付をスルーし、それらの反対側にある、多くの人以外の姿をした者達が集まっているような絵が描かれた受付に俺たちを誘導した。


「それじゃ、お願い」


 そして、受付の女性にそう言うと、彼女は魔術か何かで箒を浮かせたかと思うと、その上に寝転がるように乗り、目を瞑った。

 ……これは、受付まで連れて行くので仕事が終わった。という事だろうか?

 改めて受付を見ると、そこには、またしても見覚えのある……というか、テュフラ以上に印象深い女性の姿があった。

 主にビキニアーマー的な意味で。


「えーと、ファンレイさん?」


「お、オークに名前を憶えられてるなんて、私の名声も捨てたもんじゃないね。っと、それはいいんだ、ちゃっちゃと手続きをするとしようか」


 そう言って、もう一人の賢者の直弟子は、俺たちの方をじっと見て品定めをし始める。


「ふむふむ。そっちの妖精の嬢ちゃんと人間の嬢ちゃんは発行の必要はないね。それと、そこのオークとオークナイトの旦那はリリス様の魔王印が頬に有る、と。そっちのゴブリナとオークの嬢ちゃんは手の甲に同じくリリス様の魔王印。うん、これなら、簡単な面接と誓約書のサインだけで人権印章の発行許可が出るはずだよ」


「ちょっと待ってくれ、わらわはどうなのじゃ!」


 思わずそう言ったサスティナにファンレイは少し目を逸らしながら、しかしはっきりと伝えた。


「うーん。悪いんだけど、どこの魔王様の印も持ってないようだし、街門でいざこざがあったって話も聞いてるから、流石に簡単な面接だけってわけにはいかないかな。最低でも1か月の身辺調査と魔法的な拘束力のある誓約書への記入は最低限必要かな」


 ぐぬぬ、とうなるサスティナだったが、賢者の直弟子の強さを感じているからなのか、実力行使に出ようとはせず、不満そうな顔を見せるだけだった。ただ、ここまで連れてきてくれた恩もあるので、俺はファンレイに疑問を投げかけた。


「その身辺調査というのは一体どんなことをするんだ?実のところ、俺たちは冒険者になりにここに来たんだ。その身辺調査が終わるまで冒険者になれないってなると、少し予定が崩れるんだが」


「……ふむ、そうだね。本来ならば、身辺調査中は我ら賢者のギルド系列の臨時職員として監視及び生活の保護を行うんだけど……。まぁ、曲がりなりに仮の人権証も貰ってるしね。よし!なら正式な冒険者にしてあげることは難しいけど、君たちの冒険について行っても問題にならないように話を通しておくことにしよう!」


 それを聞いて、サスティナがばっと顔を上げた。


「ただし!流石に自由にパーティを組まれても困るからね、依頼を受けて活動する条件は、今ここにいる妖精のお嬢ちゃんやオーク達と一緒のパーティで仕事すること。それと、パーティメンバーの君、君が彼女の行動をギルドにレポートとして提出すること。この二つを条件にしよう!あぁ、今なら断ってもいいよ。その場合は普通の対応になるだけだから」


 じっと俺を見るサスティナの視線に負け、俺はしぶしぶ頷いた。


「分かった。でも、サスティナさんの監視はそっちの仕事なんじゃないか?」


「それを予定を崩れるという理由で蹴ったのは君だろう?そこを融通する手間賃とでも思っておきたまえ。あぁ、それと、一応こちらでもちょくちょく監視は続けるから、不祥事があってももみ消そうとなんかせず、正直に報告するんだぞ!不正が発覚したら、連帯責任だからね!」


 ファンレイの言葉に納得した俺たち……というか主に俺なのだが……は、本当に簡易的な面接(人の物を取ることをどう思うかとか、目の前で人が襲われていたらどうするか、とか)を個別で受け、20項目に渡る誓約書(内容はファンレイが読み上げた)に拇印を押し(魔物出身だと文字が書けない物が多いため)人権印章交付書を発行してもらった。

 それ以降の手続きは人権印章発効後のことになるらしく、日も落ちてきていたので俺たちは冒険者ギルドを後にすることになったのだった。


 因みに、貰ったのは人権印章交付書だけでなく、『スライムでもわかる共通語(読み方・書き方)』という自らに書かれた文字を読みあげてくれる魔法が付与された魔導書や、『ギルド規則総覧』の2冊の本も手渡された。俺たちは黒き茂みの森の段階でアンネから文字を習って、簡単な文章なら文字が読めるようになっているし、サスティナもあれで文明的な生活をしている存在なので共通語だけでなく、竜族語や帝国語という異言語もマスターしているらしいので問題なかったが、ここで文字が読めない場合は、最低限(そうはいっても100以上の細則がある)の一般常識を暗記するまでは冒険者ギルドに軟禁されるらしい。


 そもそものルールを把握していなければ、法を守ることもできないというのは当然なので、分からなくもないが、そこまで拘束されるというのも勘弁したいところだったので、俺は、アンネがいてよかったと安堵したのだった。

賢者の冒険者ギルド


 基本的に冒険者がよく使用するためにそう言われているが、実際のところ冒険者以外もこのギルドを利用している。というか、登録だけならギルドのある国なら8割の人物が登録しているとさえ言われている。

 世界最古の組織とも言われ、その成立時期ははっきりとはしていない。


 賢者が在中していること、世界最大の組織である賢者のギルドの本部が一定の国にあると、パワーバランス的なサムシングが崩れるということで、建前上はどこの所属でもないという形をとるために精霊大陸の賢者の塔を賢者ギルドの総本山としている。


 一方、業務上の最重要拠点はリス・デュアリス王都にあるギルドであり、直弟子であるファンレイ、テュフラの拠点でもある。(名称的には支部統括ギルドで本部ではない)


 世界的に存在するギルド支部ではあるが、例外的に竜人族の治める東方の竜骸国とリス・デュアリス神聖王国と対立する大帝国に関してはギルドが存在せず、別の大体組織が存在する。


おまけ

 狩人、漁師と冒険者の違い。

 ぶっちゃけると、継続性と獲物の活用方法の違い。狩人や漁師は、その土地に長期間住み、継続的にそこにいる生物を食品や革製品に加工する仕事。定期的な素材の供給が求められるため、冒険者に比べると保証が手厚い分、狩猟制限や休暇などの面で縛られることもある。基本的に町や村の近くが活動範囲であり、相手は強くてもゴブリン級くらいまでを相手にすることが多い。

 引退した冒険者などが務めることもある。


 一方の冒険者は一つのところに留まるという制限はなく、いろいろなところに行くことが基本。ただし、村の近隣などだと、狩人たちの狩猟区域等での活動を制限されたり等、自由に動けないことがある。また、戦闘のみというわけでもなく、いろいろな仕事を請け負うこともある。狩人がその土地への習熟と効率的かつ獲物への理解を通した適切な量の狩猟を求められるのに比べ、冒険者は、瞬時の判断と獲物や環境への素早い適応能力を求められる。


お詫び

 前話、最後の「建物が見えて来た」、との記載を、「建物が近づいてきた」に変更しました。申し訳ありません。

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