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オーク転生 脳筋種族に転生したとかマジですか。  作者: 廉玉タマ
3章 聖都・リス・デュアリス
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オークと牢

 俺は、雌オークにすり寄られながらゴブリナに話を聞いていた。


「ふむ、なるほど、リリスウェルナ様がそんなことを……」


 話を聞いたところ、雌オーク達がここにいるのは、どうやら、あの魔王様が俺たちが出発する時に耳打ちしたことが関係あるようで、その内容が彼女の出す課題をクリアすれば俺たちを追いかけることを認めるという内容だったらしい。


 どうしてそんなことを?と思ったのだが、どうやらその内容が人間社会での最小限の常識と、人類語の習得だったらしい。そりゃそれ無かったら送り出せんわ。


「……あのさ、ちょっと突っ込んでいいかしら?」


 そうしてゴブリナと情報をすり合わせていると、アンネが肩を震わせてそんなことを言い、間髪入れず叫び出した。


「何であんたたちは牢屋の中でそんなに落ち着いてんのよ!!」


「いや、そりゃ、サスティナさんであんな門の至近距離に乗り付けたら捕縛されても仕方ないだろ。実際野次馬がめっちゃ逃げてたし」


「こちらも雌オークちゃんが壁を無理に超えようとしましたからね。捕まるのは仕方ないかな、と」


「そそそ、そうじゃ、こういう時は泰然としておればよいの、のじゃ」


 俺とゴブリナとサスティナがそう言い、それでも特に緊張もせず……いや、若干一名めっちゃどもってるが。とにかく牢に押し込められているだけでは時間がもったいないので、情報交換をしていたのだった。


 因みに俺たちが落ち着いているのは、ここに案内した兵士が喧嘩腰でなく、割と丁寧にここまで案内してくれたこと。さらに、要請と言う形で牢への収容を依頼し、しかも飲み物まで用意してくれたからだ。ウリエラやゴブリナ、アンネのみならともかく、突然人ごみ近くに突っ込んでくる赤竜や馬鹿の代名詞のオークに対する扱いとしては破格と言えたので、何らかの意図があるのは容易に想像できた。そもそも、武器すらも回収されていない俺たちにとって、この牢屋程度の破壊は簡単だろう。


 そんな風な考えをアンネに話していると、そこに完全武装の大柄な老爺が何人かの兵士を伴って姿を現した。眼光は厳めしく、胸に胸章も付けており明らかに身分の高そうな騎士だ。


「ふむ、お前さんたちが、門前で騒ぎを起こしたという奴らじゃな……。ふむ。そこのオーク三人とゴブリンの娘、それにそこの人間と妖精は外に出して構わん」


 それを聞いて、後ろの兵士たちが動揺したように騒めいた。


「何をぼさっと立っておる。まぁ、お前さんたちが「紅薔薇」に吸い殺されても良いというのならこのままにしておいても良いがな」


 それを聞いて、兵士たちの動揺は更に広がり、慌てて一人の兵士が牢のカギを開けた。そして、それと同時に老人が人を食ったような笑みで俺たちの前に立った。


「まさか、ここまで多くの魔王印持ちを見るとは思わなんだぞ。しかも、そこのオークに関しては2つの魔王印があるのぅ。薔薇王印と精霊王印じゃな、っとちょっと待つのじゃ、嬢ちゃん」


「なんで、何でわらわは出てはいかんのじゃ!」


 真っ先に出て行こうとしたサスティナがわめくのを、老人は怖い笑みで応答した。


「門前の他の旅人たちを追い立てての着陸、しかも、身分の保証も無しとなると……流石に簡単な会話だけで、というわけにはいかんでな。なに、安心召されよ。儂はこう見えてマンティコアを相手にできるでな。後ろの部下たちも同じくじゃ」


 その、半ば脅迫に近い宣言に、さしものサスティナもビビった顔を見せた。


「何、すこしお話と反省をしてくれればよいのじゃよ。のぅ、火竜山脈グラウロード村のサスティナ嬢ちゃん」


 その瞬間、ビクリと体を震わせたサスティナは、畏怖を感じさせる眼で老人を見つめた。


「な、なんで、私のこと、知って……」


「さて、何故じゃろうなぁ?」


 それを聞いて、更に震え上がるサスティナの前に、ウリエラが立ちはだかった……いや、これは違う。よく見れば、ウリエラが向いているのはサスティナの方だ。


「怒りをお鎮め下さいサスティナ様!私の村を救ってくれた心優しいあなたの肩が怒りで震えるのを、僕は見たくありません!」


 それを聞いて、サスティナはスッと目を閉じ、そしてもう一度目を見開いた。先ほどと違うのは、その目に一つスッと芯が通ったことだ。


「スマンのウリエラ。……そこの老爺よ。失礼したのじゃ。話の続きをしてくりゃれ。わらわは何をすればよい?」


 その声は、先ほどまで、というか、出会ってから今までで最も威厳のある姿だった。

 それを聞いた老人は少し瞑目し、そして二カッと笑った。


「……よかろう!通ると良い」


「良いのか?」


「何!問題を起こしたら、お主を始末した後に儂も首を括ればいいだけじゃ」


 そう言って呵々大笑する老人にドン引きの形相をしたサスティナだったが、その後の老人の言葉で一気に顔を引き締めた。


「それとも、あの子の前で格好悪い姿を見せるかね?」


「……そうじゃな。感謝するぞ。老爺よ」


 そうして、俺たちは全員人間の町に入る許可を貰い、老人に連れられて事務所のようなところに案内された。そして、そこで首にかけるプレートのようなものを5枚渡されたのだった。


「それは仮の人権証。平たく言えば、この町における入場許可を町の者達に分かりやすくするための物じゃ。当然この町でしか効果は無いし、正式な人権付与よりも限られた権限しか持たぬから、まずは賢者のギルドで正規の人権付与を受けるとよい」


 そう言って老人はもう一つ、俺に向かって何やら紙を手渡してきた。


「もしも困ったら、この紙を近くの兵士に見せると良い。儂か、対応できる部下に取り次げるようにしておこう。儂の名前はエドニ―ル。まぁ、そこいらの兵士の名前を出すよりは効果があろうて」


 そう言って呵々大笑する老人に感謝の言葉を述べつつ、俺たちは、町へと進んでいったのだった。


~sideエドニ―ル~~~~~~~~~

「お疲れ様です、エドニ―ル様」


「ふむ、お主らも大儀じゃった」


 そう言って背を向ける自分の部下たちに、エドニ―ルは嘆息した。


「全く、あれほどのプレッシャーは久方ぶりじゃわい」


 純粋なタイマンで戦えばかなり分の悪いかけになる紅竜に、害すればこの地にも存在する妖精教を敵に回しかねない妖精種の少女。上位種になり、恐らく魔法が使える程度には知恵の回るオークの上位種。

 雌のオークやゴブリンの亜種であるゴブリナの少女はそれほど強敵というわけではないが、彼女たちを害すればすぐさま残りの者達が敵対するだろうし、最終的に殲滅出来るにしても、たやすく討ち取られるほどには弱くはないだろう。

 唯一人間である少女に関しては戦闘面では脅威ではないが、逆に彼女に被害を出さないために注意を払う必要があったかもしれないと考えれば厄介だ。


「しかし……何よりも、あのオークじゃな」


 そうつぶやき、老人は彼らのリーダーであろうオークを思い浮かべた。彼から見たグォークの姿は、平凡だが異常、であった。

 なるほど、確かに身のこなしは洗練されている。言語も人間顔まけの頭脳も脅威であるといえるだろう。だが、それ自体はそれほど驚くべきことではない。身のこなしは確かにオークとしてはかなり洗練されているが、冒険者や兵士という面で言えば、自他ともに一流以上と称えられるエドニ―ルたちの障がいになる程ではない。知能にしても、彼らの一団には複雑な思考をするオークが(約一名は何段か落ちるが)彼を含めて3体いるのだ。


 だから、老人が意識を向けたのはそこではない。


「あのオークは、あの団体の中でリーダーを務めていた。知識で言えば優っているだろう妖精や、強さでは太刀打ちできないであろう紅龍がいる団体で、じゃ。それに、あの時の感覚……あれは、やはり」


 老人が感じたのは、グォークが纏う雰囲気だった。その源泉は授けられた二つの力だ。即ち、契約の口づけと共に与えられた、赤き薔薇の加護、そして、精霊の王が祈ったことによって与えられた、精霊王の加護。否


「あと一つ……なんじゃったんじゃろうな。12の魔王様方でもなく、かといって地方の主程度では説明できぬ力は……」


 老人はしばし思索したのち、自分だけでこれ以上悩んでも仕方ないと、警備を再開したのだった。

☆魔王の加護


 魔王はそれぞれの生物に加護を与えます。本来ならそれは、環境に適応する程度の変化しか齎しませんが、魔王に気に入られて側近になったり、知恵のある生物が人間社会に混じろうとした場合、その場の魔王が強力な加護を与えます。

 具体的に言えば魔王印という形でどこかに証を刻む際、それと同時に独自の魔力を付与させます。付与された魔力については、基本は計器で測ったりして知るものではありますが、実力のある相手だと素で見抜いてしまう事があるのです。


 基本的に魔物の世界の身分保障という形の物であり、場所を特定することも可能だったりする。


 

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