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オークと大鯰

お待たせしました。少しですが書き溜めが溜まってきたので、本日2話投稿します。

「アンネ!」


 アンネの名前を大声で呼ぶと、アンネは驚愕したかのように振り向き、そして直後に大鯰が俺に向かって突進をしてきた。


 俺は大鯰に向かって炎の剣を振り下ろし、牽制する。

 だが、大鯰はひるむことなく俺に突進してきた。


「ぐぅっ!」


 その衝撃は軽微、とはいえ、弾き飛ばされた先は沼地の中心へと近づく側。要はぬかるみがさらにひどくなった場所だ。

 とはいえ、アンネも見つけたし、ここに敵は大鯰2体しかいない。なら、多少音を出して敵を呼び寄せても問題ない。


 そう考え、俺は速度重視でアンネのところへと疾走した。

 流石にぬかるみの影響を無くすことはできないが、無理やり疾駆することで平地の半分ほどの速度でアンネのところにたどり着く。


「グォーク……」


「話はあとだ、とりあえずあいつらから逃げるぞ!」


 俺がそう言うと、アンネは一瞬固まってから頷き、そして俺の方に飛び乗った。


「あいつらは大鯰(ドワーフフィッシュ)。細かいことは省くけど、この階層で一番ヤバい魔物よ。でも、基本的には沼から出ないから、完全に乾いた陸地まで行ければ大丈夫なはず!」


 と、アンネが言った瞬間、大鯰の一体がその二本の髭を振るわせて地面に叩き付けた。

 その瞬間、地面がたわみ、衝撃波が伝わる。


「っつ!地震!?こんな時に!……いや、違う!」


 流石にこれほど都合が悪いタイミングで地震が起きるなんて考えづらい、というか、そもそもここは賢者の作った塔の中のはずだ。だから地震が起こらないとは言わないが、何万匹もの魔物たちが生息するこの塔をかなりの長期間管理しているのなら、地震的なものが全くなかったか、あるいはあっても影響がないような構造にしているはずだ。

 まぁ、魔法で塔自体が自動修復するという線もあるが、どちらにしてもピンポイントで今地震が起こったのには間違いない、


「こいつらは地震を起こせるのかよ!」


「大鯰は大地の属性の魔術を使うわ!さっきのは”地震(アースクェイク)”地属性中級位魔法よ」


 アンネの肯定に、俺は身構え、そして直後起こったことに驚愕する。


「泥の……津波!」


 泥が隆起し、大鯰を中心に泥の波がうねる。そして、それと同時に地面もぬかるみ、更には俺を支えられる程度には強固だった地面さえも崩れて泥となる。


「やば……」


 津波の第一波を何とかしのいだ俺は、とっさにかばったアンネが無事なことを確認した後、不格好ながらも揺れの中ゆっくり、しかし迅速に後退する。しかし、それでも泥の津波と、それによってもたらされる地面のゆるみは収まらない。


「仕方ない」


 俺は、ボスと精霊王に心の中で謝罪しつつ、炎の剣を地面に突き立てた。剣の熱で俺たちの周辺の地面が固まり、何とか地面の泥沼化が止まる。ついでに、大鯰からの地震も収まったが、それと同時に大鯰が俺たち目がけて再び突進してくる。


 俺は、無理やり足を引き抜き、大きく飛び上がって攻撃を避けると、炎の剣を大鯰の頭に振り下ろす。しかし、その一撃はつるりと大鯰の表面を滑っただけだった。

 その後噴き出した炎で驚いたように身をよじらせていたが、見た目的には体の泥が固まったくらいで大した打撃になっているように見えない。


「……効いていないか」


「大鯰は強敵よ。水も炎も雷も、大した効果はないわ。風が弱点って言われているけど、分厚い皮膚を穿とうとしたら相当威力が高くないとやっぱり無意味よ」


 それを聞いて頭を悩ませるも、思いつくのは一つのことだ。……いや、だがこれは前世の話だし、うーん。

 だが、何も思いつかないので結局アンネに依頼をしてみる。


「こういうのは出来るか?」


「無茶言わないで!というか、今まで私の魔法見てたら分かるでしょ!私の魔力量は結構なものだと自負してるけど、出せる魔法はそこまで強力なものじゃないのよ!」


「それなら、こういうのはどうだ?」


 そう言って俺の考えを伝えると、アンネは微妙な顔をして頷いた。


「それなら、できると思うけど……それを私が飛ばすのは無理よ?それに、それをする意味も……」


「まあ、確かにその通りなんだがな。実際、俺もそれしか思いつかないだけだし。まぁ、しないよりもましだろって感じだ」


 それを聞いて、呆れたようにため息を吐いたアンネは、しかしにやりと笑った。


「やったろうじゃない!大鯰に誰も食らわせてない一撃、ぶちかますわよ!」


 そう言うと、アンネは宙高くに浮かび上がる。

 その頃、丁度大鯰たちは警戒を解いて再び、そして今度は二匹同時に突進の体勢にかかった。更に先ほど攻撃した側も、一度泥の中に潜って泥の装甲を付け直していた。


「さて、アンネが準備が終わるまで、時間稼ぎをするとするか」


 そうつぶやいて、俺はもう一度地面を炎で乾かし、更に突進よりも前に足を抜いておく。

 それを気にしないとでもいうかのように突進してくる大鯰に、俺は足場を利用して高く飛び上がった。


「いくら泥だらけだって言っても、動き回る生き物だ。底なしの沼よりは、立ちやすいよな?」


 大鯰の一匹の頭に着地する。まあ、大鯰の頭の上の方が普通の足場より立ちやすいなんて呟いたものの、実際には足場が動くことによるやりにくさがあるということは分かっている。だから、足場としての優秀さとすれば半々といった所だろうが、ここにいれば、もう一つの利点がある。


 それは即ち、突撃してくるもう一匹の大鯰だ。


「さて、俺に攻撃して、お仲間に恨まれるのを選ぶか、それとも攻撃をためらって、こっちの時間稼ぎに付き合うか。どっちだ?」


 俺はそうして、大鯰の出方を伺ったのだった。

魔法について

 妖精の魔法が弱いのは簡単に言えば発動するのが妖精だからという点が大きかったり。

 普通に考えてストローと消火ホースどっちが一度に大量の水を放出できるか、みたいな話で、アンネちゃんは貯水タンク並みの魔力を持ちながら出力が普通のホースくらいの幅しかないイメージ。

 ドラゴン幼女戦では、裏技的に自己の魔力を大量にばらまいた後に魔法を使うことでより強い魔法を使うことができる(ただし魔力の効率的には非常に悪い)といった方法を利用したもの。なお、自分の魔力が大量に空気中に存在していることが重要なので魔法が飛び交っている中では使えない模様。


 なお魔力のサンプルとしては


 グォーク 魔力 魔法に回せる魔力は僅か  出力 大砲レベルの大口径

 ボス   魔力 大きめのバケツくらい(一般の初心者魔法使いレベル) 出力 普通のホースくらい

 サスティナ 魔力 貯水タンクくらい 出力 軍艦の主砲レベルの大口径

 精霊王   魔力 ほぼ無尽蔵 出力 ほぼ無制限

 精霊(一般) 魔力 小さな川くらいの水量 出力 軍艦の主砲レベルの大口径


 みたいな感じ。 魔王は基本的にあり得んほどの魔力量と出力を持っていることが前提。肉弾戦を武器にする魔王でも、魔力が低いのは有り得なかったり。

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