68.限界
次の週の火曜日、部活帰りのラシェルは酷くイラついていた。
先週末から体が怠く、生理も重なったことで気持ちが沈んでいたところに、ここ最近ずっと集中力を欠いているとユベールから指摘されてカチンときてしまったのだ。
乗馬の才がある先輩には、出来ない者のことなんてどうせ解りませんよと嫌味を言ったら、売り言葉に買い言葉、小競り合いから大喧嘩に発展した。
「あれやこれや、専門用語だか何だか知りませんけど、ワケ分からないこと並べて教えた気になってるの、やめてもらえません?」
「分からないなら分からないと、己の頭の悪さを認めて素直に聞けばいいだけだろう!」
「そういうところが傲慢なんです! 頭の悪い人間ってのは、どこが分からないかすら分からないからバカなんです! そういうところを上の人が察して、色々と手を講じるのが教えるということでしょう。頭悪い人間なめんな!」
ラシェルの無茶苦茶な暴言に、ユベールも負けじとキレ散らかす。
結局、そんなに俺が嫌なら指導係を降りると言うユベールの捨て台詞に、せいせいしますと心にもない言葉で返してしまい、自己嫌悪とそれでも治まらない感情を持て余して、帰りの馬車で待っていたニーナにも「私がいいというまで何も話しかけないで」と拒絶してしまった。
ニーナには悪いが、そうでもしないと今の自分は八つ当たりで周りにいる人間を無暗に傷つけてしまいそうで、怖かった。自分自身を持て余し、全くコントロールできなかった。




