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デブスの没落貴族に転生したら、やっぱり成金ブサメンと政略結婚する流れになった  作者: o槻i
邂逅編

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58.ある種の社会貢献

 



 水曜の朝、ラシェルはホームルームが終わると同時に、担任から放課後に生徒会室へ行くよう告げられた。

 少女漫画的設定に倣ってか、学院の生徒会執行部も時に教師より強い権限を持つ。生徒会長が王族であれば尚更、第二王子が生徒会長を勤める今代は教師といえど伝書鳩よろしく受け持ち生徒への伝言まで言付かるようだ。

 とはいえ、一介の生徒でしかないラシェルが、わざわざ生徒会の呼び出しを喰らう理由などないはず。

 不思議に思いながらも放課後、ラシェルは生徒会室の扉をノックした。


「どうぞ」

 中から鋭い女性の声が響く。扉を開けた先に待ち受けていたのは、やはりレイラだった。

 会長の椅子に座る第二王子の傍らで腕組みして侍り、斜に構えた彼女から座りなさいと指示される。初対面こそキツい印象を受けたが、その後はどちらかというと穏やかな語り口調と物腰で、ラシェルは好意的に感じていた。しかし今、目の当たりにしている彼女は悪役令嬢そのものといった出で立ちで、ラシェルを牽制しているようにも見える。

 雰囲気に呑まれたラシェルは、大人しくレイラに言われるがままソファーに腰掛けた。

 ヤバい。今度は私、何か生徒会の逆鱗に触れるようなことでもしたのだろうか……。

 身に覚えはないものの、無自覚で色々やらかしてきた過去がラシェルの身を縮こまらせる。

 部屋にはもう一人、副会長のクロードもいるが、鉄面皮と学園で噂される彼はシナリオに於いても主人公のリサ以外には心を開かず、さらにゲームファンからは鬼畜眼鏡との愛称を賜っていたキャラらしく冷徹な表情でこちらを見ているだけ。つまりこの場に、ラシェルの味方は存在しない。

「ラシェル・デュ・フィリドール、貴女に臨時の生徒会書記を任命するわ」

 ピシャリと言い渡され、ラシェルは肩を震わせた。

「えっ……」

「聞こえなかった? 取り敢えず今日、これから始まる会議の議事録を取って頂戴」

「…………」

 何故、私が? 何故、私に……?

 ラシェルの頭の上で、いくつもの疑問符が並ぶ。

「夏まででいいの。詳しい仕事のことは、クロードから聞いて。では私たちは忙しいので、これにて失礼」

 そう言うとレイラは帽子とスーツケースを取り出し、ローレンスの手を取り生徒会室を後にした。

「えっ……えっ、えっ!? …………ええぇぇぇっ??」

 レイラの無責任ともとれる奇行に付いて行けず、頭を抱えて慌てふためく。

 最後一瞬、レイラはラシェルの動揺を見て怯んだ表情を滲ませたものの、振り切るようにツンと顔を背けた。

 その表情に、ラシェルはハッとする。

 作中で、彼女がこのような不機嫌を顕わにするのは嫉妬に駆られた時と相場が決まっていた。彼女が嫉妬するといえば、ローレンス絡みだ。

 じゃあ、あれか。

 一度、ローレンス王子がアルフレッドやアンリと一緒にデュランへの届け物を託しに来た件……かなり前だけど。いや、もうそれしか思い当たる節がない。

 そんなの完全、貰い事故じゃん。理不尽だと目をグルグルさせながら突然の成り行きに混乱するも、何とか必死で前世の記憶を辿り、リサが生徒会との関わりを深めていくエピソードを探った。そこで去年、確か年度の途中で生徒会事業部長だった先輩が学院を去っていたと思い出す。

 昔の日本でも女学校がそうだったように、結婚を期に女子のドロップアウトは長子でない限り然程珍しいことではない。だが問題は、書記を務めていたレイラが次期王妃と目されているのを理由に、碌な引継ぎもなく事業部の仕事まで兼任となったことだ。入学式当日に七人も取り巻きを抱えられるほど味方が多い彼女だが、敵も多いということか。

 当時の彼女を慮れば短期間の書記業務などマシな状況かもしれないが、それにしたって色々端折り過ぎだ。第二王子様といいレイラ様といい、君ら説明ヘタか。説明下手カップルか。

 あとゲームシナリオでは、各攻略キャラがこのレイラの多忙をダシに、彼女を助けてあげてとリサを生徒会メンバーに引き入れてイチャコラする流れになっていたはず。夏まででいいとのことなのでストーリーに影響はなさそうだが、本当に自分が請けていい仕事なのか。てゆーか、任意ですらない奉仕活動とは。こんな不合理な労働ってない……。

 ガックリと項垂れるラシェルを見兼ねて、去り際にローレンスが振り返って告げた。

「ラシェ、……レイラは、愛がある……ので、すまない。私も、いいから…………がんばっ」

 美しくも愛らしい笑みで、最後は「ファイト」と言わんばかりにラシェルに握り拳を作って見せる。

 ありがとう。ありがとう王子。でも何も伝わらない。母国語が不自由過ぎて、肝心なことが何一つ入ってこない。ただその美声と、お気遣いだけ賜ります。本当ありがとう。

 手を振りながら、畏れ多いのと何だか悲しいのとで涙がチョチョ切れそうになるも、扉が閉められた途端、後ろから声をかけられた。




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