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童話シリーズ

灯台守のドラゴンがいなくなった日

 灯台というのはどこの港町にも必ずある物で、灯りの源はみんな火の明かりを鏡で反射して夜の海を照らしています。

 この港町の灯台もそうでしたが、少し特別でした。この町には銀のうろこが輝くドラゴンが住んでおりました。よそから来た人からドラゴンが町と目と鼻の先に住んでいると聞くと怯え上がりますが、町の人たちはまったく動じません。なぜならドラゴンは町の住民であり、この町の灯台を助けていたのです。


「あのドラゴンは灯台と恋人なんだよ。夜に灯台の温かい火が灯されてると、ドラゴンは夜の海を飛んで灯りをうろこで反射するのさ。その光が遠くの船にまで送るから安全に航海できるのさ」


 ドラゴンのことをよく知る灯台守は他所の者にこう話します。そしてドラゴンが夜の海で雄たけびを上げると翌日は海は荒れず大漁になると添えます。


 このドラゴンが一体いつのころから住み着き、どうして灯台の明かりに夢中なのか町一番の年寄りに聞いてもわからないというのです。けれども、町の人たちは灯台とドラゴンに感謝しながら平和に過ごし、町は発展していきます。


 それから長い年月が経って、人は入れ代わり、低い石造り建物から高いコンクリート製の建物が次々と建ちました。町中には黒い煙が出る機械が走るようになるほど町はどんどん発展し、古いものは次第に消え去っていきました。

 ドラゴンは町中を飛ぶ時、ぶつからないよう背の高い建物に注意して飛ばないといけなくなりました。かといって低い建物の方に飛ぶと、ドラゴンが飛んだ後に起きる風が工場の黒い煙をなびかせ家の中に入れてしまい迷惑だと町の人たちが怒ります。


 そして町の偉い人がだいぶ古くなってきた灯台を見て大工たちに命令しました。


「そろそろこの灯台も古くなってきて危ないな。新しい灯台を建てよう、中の灯りも火でなく電気の光で届く大きな灯りだ」


 古い灯台は取り壊されて、新しいコンクリート製の真っ白な灯台が積み上がりました。灯台守は今まで階段で上がらなければならない古い灯台より、エレベーターがあり手間が省ける新しい灯台に大喜びでした。

 さて稼働した新しい灯台は、前よりも強い灯りを遠くまで飛ばせました。すると、あの銀のドラゴンが灯台の明かりに吸い寄せられて光を反射しました。ところが電気の灯りは強く、近くにいた漁船の乗組員たちの目がつぶれてしまいました。


「あのドラゴンを追いだせ。あのピカピカの光で目がつぶれたんだ。それにドラゴンなんていつ人を食うかわからないんだ」


 ドラゴンを撃ち落とすと噂が広がると、ドラゴンの銀のうろこに金目をつけた者たちがこぞってドラゴン退治に協力しました。

 そして夜の海にドラゴンが現れると、町の人やドラゴン退治に来た人たちが一斉にドラゴンに向けて銃や大砲を放ちました。鉄の弾が体中に当たり、ドラゴンは悲鳴を上げて銀のきれいなうろこが剥がれ落ちます。うろこは月の光を受けてキラキラと町の中に落ちていきます。

 傷ついたドラゴンは町から離れ、遠くの海にへと逃げていきました。


 ドラゴンのうろこを手にした町の人たちはそれを元手に町をドンドン発展させていきました。そしてドラゴンがいなくなってだいぶ経ったころに、夜の海から聞きなれない音が町に響き渡りました。灯台の光で見渡しても何もありませんでした。

 みんなが不思議がると、一人の年寄りが助言しました。


「あれはドラゴンの雄たけびだ。昔聞いたのだが、あれが起きると翌日は海は荒れず大漁になるとおじいさんから聞いた」


 それを聞いた町の人たちは安心して眠りにつきました。


 その夜、先ほどまで眠るように静かだった海は唐突にうねりを上げて大きな波を起こして町を飲み込みました。新しい灯台も、工場も、高い建物もみんな大津波が飲み込んでしまいました。


 豊かだった港町が地図から消えてしまった翌日の朝、太陽の光を反射して光る銀のうろこが眩しいドラゴンがじっとかつて昔の石造りの灯台があったところを眺めていました。

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