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戦闘の基本は偵察から


★第34話目


「え、え~とだなぁ……今の内に、みんなには言っておくが……」

コホンと咳払いをしつつ皆を見渡す俺。

「その……確かに俺は大魔王をやってはいるが、実を言うと……正真正銘、間違う事無き人間様なんだぞ?」


「うぇッ!?」

黒兵衛を除くみんなは、何をヌカしてやがるこのトンチキめ、てな顔をして俺を見つめた。

誠に遺憾だ。


「だ、大魔王様。それは……持ちネタだっぺか?」

ミトナットウがテヘヘヘ~と、だらしない笑顔で言う。

「だとしたら、センス無いずらよぅ」

しかもいきなり駄目出しされた。


「し、失礼な事を……」


「大魔王様。その……それは一体、どう言う意味でしょうか?私、この場合はどう返答して良いのやら……」

ホリーホックも、困惑顔で尋ねてくる。


う~ん……やっぱいきなり、普通の人間です、とカミングアウトするのは早計だったか。

確かに、俺もいきなり黒兵衛が、『実はワテ、犬やねん』とか言い出したら、速攻で病院へ連れて行くしな。

頭の中を調べて貰いに。

「あ~……その……なんだ、実はな、転生したら人間だったんだ。大魔王として復活しても、身体は人間だったのだ」


「ま、その件に関しては、洸一の言う事は本当や」

皆を見渡し黒兵衛。

「かなり規格から外れちょるが、コイツが人間のは嘘やないで」


「ほ、本当だっぺか…」

「……ふむ。ワシは最初からそう睨んじょった」

「ほ、ほぇ~…」


「……」

どーでも良いが、どうして黒兵衛の言う事は信じるんだ?

「ま、まぁ……つまり、何が言いたいかと言うと……俺は大魔王だが、ボディは人間だ。だから正直、身体能力は低い。腹も減るし眠くもなるし、あまつさえストレスにも弱い、小動物だ。しかもまだ16歳の未熟者だし。だからその辺を事を踏まえて……ま、そんなに畏まらずに、気さくに接してくれぃ。後、あまり無茶な事は要求しないでね。うん、ここ大事」

そう言って頭を掻きながら、俺はテーブルの上に羊皮紙を広げた。

ホリーホックから手渡された、この世界の大まかな地図の中の一枚だ。

「で、話を最初に戻すが……ここが俺達の現在地だ」

地図の南端を指差す俺。

「今の俺達の戦力を鑑みるに、無理なく統治できるのは、今いるこの……アボカディア地方と言うのか?その周辺だけだろう。それ以上は、現時点の戦力だと、ちょいと対処できんな」


「と、すると……残るは領主の街とその城館だけだっぺ」

ミトナットウが身を乗り出し、地図を眺めながら頷いた。

「一度だけ見た事があるっぺが、地方領にしては、やけに巨大なお城だっぺよ」


「それはそれで好都合だな。その城を占拠し、俺達の本拠地とすれば良い」


「じゃが、あの城がそう簡単に落ちるかのぅ」

長老が難しい顔をしてそう言った。

もちろん難しい顔と言っても、表情に乏しいオークなので良く分からないが……

「以前、ワシはあの辺りに住んでおりましたが……あの地は帝國の南の要衝の一つでしてな。その城は守りに易く攻めるに難くと。しかも魔法攻撃に対する防御結界が幾重にも張り巡らされておると言う話で……」


「……ふむ」


「あ~……話だけでは良く分からんのぅ」

と黒兵衛。

「取り敢えず一度、威力偵察でもしてみた方がエエかもな」


「……そうだな。情報の収集は大事だ」

俺は頷いた。

「では……俺とミトナットウ。それと、あと20匹ぐらいで早速偵察に出掛けよう。黒兵衛と長老はこの村で待機。場合によっては勢いのまま攻城戦に突入するかも知れんからな。そうなったら後詰を頼む。ホリーホックは非戦闘員の安全を守ってくれ」


「分かったっぺ」

「おぅ、まかしとかんかい」

「了解じゃ」

「……了解です」


「良し。では偵察隊の編成を終え次第、出発する事にしよう」



「……なるほど。デカイな」

俺はミトナットウとその他約20匹のモンスターと共に、この地を収めるピッケンズ男爵とやらの城館近くの林に身を隠し、偵察行動を行なっていた。

堀は無いものの、高さ30メートルはあるだろう城壁が、グルリと城の周りを囲っている。

平野部に建てられた平城だ。

隠れる場所も少ないし、軍行動を起こせば、すぐに見つかってしまうだろう。


「あの城壁の向うは、どーなってる?」


「確か、街があるだっぺよ。んで、中央が男爵の居城だっぺ」

隣で身を屈めているミトナットウが言った。


「……なるほど。所謂、城砦都市、とゆーやつだな?」


「街の規模は小さいんだども、そーゆー事だっぺ」


「で、兵力は?」


「偵察を行なっている所だっぺ。……あ、帰って来たっぺよ」

ミトナットウが城の空を指差すと同時に、バヒューンと弾丸のような勢いで大コウモリが舞い降りてきた。


「ど、どうだった?」

木の枝にぶら下がり、ゼーゼーと荒い息を吐く漆黒の蝙蝠に尋ねるが、

「キ…キーーーキーキーーー……」

泣きたくなるほど意味不明だった。


「……ミトナットウ。通訳を頼む」


「大魔王様ともあろうお方が……少しは人語以外も学ぶ方が良かっぺよ」

苦い顔のゴブリン・ミトナットウ。


「さっきも言っただろ?今の俺は人間なんだよ。無茶言うな。俺はドリトル先生か」


「ホリーホック様は、どんなモンスターの言葉も分かってくれるずらよ……」


「ま、前向きに検討しとくよ。で、何て言ってるんだ?」


「あ~……兵力自体は大した事ないっぺ。歩兵と重騎士と……その他合わせて500ぐらいだっぺよ。ただ……」


「ただ……何だ?」


「あ~……魔法結界と守護獣がいると言ってるっぺ」


「ふむ……そうか。そいつはちと、厄介だな」

俺は顎に手を掛けふむふむと頷く。

ところで、魔法結界と守護獣って何じゃろう?



(……お?)

村の外れにある小高い丘の上を散歩していた黒兵衛は、不意に足を止めた。

見ると前方には、何か祈るような瞳で彼方を見つめているホリーホックの姿があった。

(ふむ…)

少しだけ思い詰めた横顔。

ありありと、送り出した洸一達を……いや、洸一個人を心配している様子が覗える。

(や、やれやれやな。これはチト……マズったかな?)

黒兵衛は軽く溜息吐いた。


どうも洸一と言う男は、クセのある異性に好意を持たれる傾向がある。

ま、本人自体がかなり特殊なので、類は友を呼ぶと言うか……

(やっぱ、強引に逃げ出した方が良かったんやないかな)

黒兵衛は苦笑した。

色恋沙汰より今はやらねばならぬ事が多々あるのだが……どうもあの馬鹿は、置かれた状況などが今一つ分かってないらしい。

最近は特に、成り行きに任せるか、なんて事を真顔でヌカす始末だ。

付いて来たワシはどーなるねん?と黒兵衛は思う。


(しっかし、ホリーホックの姉ちゃんも、分かりやすいと言うか……)

もう一度彼女を眺め、

(まぁ、あの姉ちゃんが生まれ変わりの誰かやったら、話は簡単なんやけどなぁ)

もう一度軽く溜息を吐いた。


しかしながらこればっかりは、まるで見当がつかなかった。

魔神グライアイも、洸一の勘のみ、としか言わない。

が、当の洸一は、元々そう言う事には鈍いと言うか何と言うか……


(のどかの姉ちゃんも、洸一の朴念仁め、とか良ぅ呟いていたしな)

今は亡き主人の事を思い出し、黒兵衛は寂寥感を苦笑で誤魔化していると、

「く、黒兵衛殿ッ!?」

慌てた顔でホリーホックが、こちらへ駆け寄って来る姿が目に飛び込んできた。


「な、なんや姉ちゃんッ!?」

盗み見してたのがバレてもうたかな?

「言うておくが、ワテは偶々通り掛って……」


「く、黒兵衛殿、丁度よい所に。あ、あれを……」

微かに震える指先で彼女が示した方角は、洸一達が偵察に行った城のある方角だ。


「な、何や?何ぞあったんか?」

サッと軽やかにホリーホックの肩に飛び乗り、彼方を見つめると、

「――ゲッ!?」

砂煙上げて何かが此方へ向かってきていた。

遠目に洸一やミトナットウ達の姿が見える。

そしてその背後に迫る巨大な物体も。


「ド、ドランゴンやんけ……」

黒兵衛は驚愕した。

もちろん、実物を見たのは初めてだ。


元々黒兵衛は物心付いた時には人界に居た流れ者だし、そもそも魔界にもドラゴン種の数は少ない。

何故ならドラゴンは巨大な力を持ち長命な存在だ。

食物連鎖の頂点とも言える。

故に生物学的見地からしても、弱い生物のように大量に繁殖する必要がないのだ。


「な、何が……」

ホリーホックは絶句していた。


「何やよう分からんが……」

言葉が続かない。

しかし、あの圧倒的存在感はどうだろう。

赤い鱗に覆われた巨大なドラゴンは、火焔を燻らせて迫りつつある。

その迸る魔力は、ここからでも感じ取る事が出来る。

しかもそれは、当然ながらこの世界に来て初めて接したどのモンスターをも遥かに凌駕していた。

あの魔界に旅立つ前に神社で襲ってきた魔族をも凌ぐ。

いくら九皇の剣を持ってるとは言え、人間の洸一には荷が重過ぎる相手だ。


せやけど、何であない強そうなドラゴンがこの世界に……

この次元世界で、特殊に進化した生物か?

はたまた何かの偶然で魔界より紛れ込み、そのままこの世界に居ついたんか?


「ったく、あの馬鹿チンが……」

黒兵衛が毒づくと同時に、

「どひぃぃぃぃぃーーーーっ!!」

その洸一の情け無い声が響いてきたのだった。



な、なんでこんな目に……

後を振り返ると、凶悪な顔をしたドラゴンが地面擦れ擦れを滑空しながら、今にも噛み付きそうな距離まで迫っていた。

・・・

・・・・

・・・・・


「良し。ちょいと俺様も偵察に出て行こう」

言うや林を出て、城壁に向かって歩き出す俺。


「だ、大魔王様。き、気を付けて下せぇよ」

背後からミトナットウ達の声が聞こえた。


「大丈夫だ。何故なら俺は大魔王だからなッ!!」


「り、理由になってないっぺよ」


「気にすんな」

俺は片手を上げ笑うと、ブラブラと呑気な足取りで城門へ向かった。

物見の報告では、俺達の侵入を警戒してか南側の門は閉じられ、それ以外は通行等の規制を敷いているとの事。


どりどり、なんだったらこっそり砦の中へ侵入しちゃおうかにゃあ……

何て事を考えながら城壁に沿って歩いていると、

「おい、貴様ッ!!そこで何をしているッ!?」

いきなり怒声を浴びせ掛けられた。


「……?」


「う、上だ!!上ッ!!」


見上げると、太陽を遮るようにして聳え立つ城壁の上に、見張りの兵士だろうか、弓矢を構えた甲冑姿の男が、俺を見下ろしながら怒鳴り声を上げていた。

「この辺りは特別警戒区域だぞッ!!貴様……知らんのかッ!!」


「……知らないッス」

どうでも良いけど、何で言葉が通じるんだろうねぇ?

ま、文字は分からんけど……

これも何かしらの魔法の力かな?


「布令を聞いてないのかッ!!」


「……聞いて無いッス」


「お前、旅人かッ!!その剣は……冒険者かッ!!」


「大魔王ッス」


「……そうかッ!!」


「そうっス」

返答するや、俺は剣の切っ先を兵士に向け、【変化の呪文・カエル】を放つが、

――キンッ!!!

城壁が鈍く光ったかと思うと、魔法は霧散霧消してしまった。

「ふにゃにゃ?」

うぅ~ん……なるほど。これが結界と言うヤツかぁ……


恐らくだが、どんな強力な魔法を唱えたとて、この結界を貫く事は出来ないだろう。

光を反射する鏡に、どんな強力な光を当てた所でそれ自体を割る事が出来ないと同じ事だ。

……

もちろん、素人考えだけどね。


「ふむ……どうしたもんかな」

俺は顎に指を掛け考え込んでいると、ヒュッヒュッと音を立てながら、いきなり数本の矢が頭上から降り注いできた。

もちろん、事前に【鉄壁】の呪文を自分に掛けてあるので、矢は体に刺さる前に撥ね返されて行く。


やれやれ、警告も無しにいきなり攻撃ですか……かなりの厳戒態勢ですな。

はてさて、ならばどうするかなぁ……

この結界の細かな制限とかルールはどうなんじゃろう?

耐久値はあるのか?時間制限とかは?

攻撃魔法は通用しないみたいだけど、例えば自分にバフを掛けた場合、中への進入時に打ち消されるとか……

それに魔法攻撃は一方通行か?

外からの魔法攻撃は通用しなくても、城壁の内側からは出来るとか……その辺どうなんだろう?


「取り敢えず、中へ入らんと分からんな」

俺はそう独りごちると、城壁に向かって剣を振るった。

魔法が通用しないのなら物理攻撃だ。


「フンッ!!」

力任せに、レンガ造りの城壁に剣を突き立て穴を穿つ。

さすがに至宝とか呼ばれる最高レベルの剣だ。

切れ味抜群。

頑丈な城壁は、まるでチーズのようにサクサクと切り刻まれて行く。


「フンフン~フフ~ン♪」

鼻歌混じりに右腕をブルンブルンと振るって穴を開けている間にも、間断無く矢は降り注いでくるが、全くの徒労だ。

やれやれ、これが蟷螂の斧と言うヤツかな?

そんな攻撃、通用しないのは分かっているだろうに……


「……ん?んん?」

辺りを見渡すと、いきなり真っ暗だった。


え?なに?影……?

俺は慌てて空を見上げる。

何か巨大な物体……いや、生物が城壁の上を旋回していた。


「な、なんだろうにゃあ?」

ポリポリと頭を掻きながら、少しボンヤリしながらそれを眺めていると、巨大な羽を広げたその生物は、バッサバッサと音を立てながらゆっくりと降下し、ズゥンンと重い地響きを立てながら目の前に着地した。

巻き上がった砂塵の中から、鈍く光る黄色の瞳が俺を睨んでいる。

爬虫類独特の、冷たい目だ。


「ほ、ほほぅ……ドラゴン、とゆーヤツか」

もちろん、生まれて初めて見た。

ちょっぴり感動だ。

動画を撮れないのが非常に悔やまれる。


ふ~む、察する所、コイツが守護獣とやらか……

この城で飼っているのかな?


陽光に反射する、鋭利な刃物のような赤い鱗。

足の先にある鋭く尖った爪は、禍禍しい殺気を孕んでいるかのようにワキワキと動いている。


「し、しっかし、デカイねぇ……もし俺の世界に存在していたら、餌は間違いなく象とかだろうね」

俺の頭ほどはある鼻の穴からは、絶えず黒煙が沸起っていた。

赤色の体表からして、サラマンダー系なのだろう。

如何にも火とか吹きそうだ。

どーゆー原理で火を吹くのか全くの謎ではあるが……ま、俺の世界のでも電気を起こすウナギだって存在しているのだし、この不思議世界なら、火を噴く獣が存在していてもおかしくはないだろうね。


取り敢えず、コンタクトを取ってみるかな?

基本的に、ドラゴンって知性が高いって話だし……

話せば分かり合えるかもしれん。

「さて、ドラゴンよ」

切っ先を巨大な赤竜に向け、俺は吼える。

「俺は近頃ご近所で噂の大魔王、神代洸一と申す武士もののふだ。貴様もモンスターの端くれなら、我に仕えよ。これは勅命である」


「……」

無言だった。


「くッ……ならば百万石ではどうだ?」


「……」

黙殺だった。

しかも、自分で何を言ってるのか分からなかった。


「うぅ~む、仕方無いのぅ」

俺はチャッと剣を構え、竜を睨む。

なに、ドラゴンと言えど、所詮はトカゲの大将。

爬虫類だ。

恐れる事は何も無い。

もちろん、根拠も無いけどな!!

「ならば、この独りアルゴー探検隊と言われたこの俺様が、お相手仕ろうッ!!」


「ブフゥ~…」

首を振りながら巨大なドラゴンが攻撃姿勢をとる。


……ふ、大魔王な洸一様に歯向かう愚かなトカゲめ……

俺は謎の鎧武者氏より授かった魔法の剣、羅洸剣を天に向かって掲げ、精神を集中。

ちょいとばかり、モノホンのトカゲになってもらうか……

【変化の呪文/ヤモリ】

剣が光ると同時に赤竜の身も眩い光に覆われるが、

――パシュンッ……

軽やかな音と共に何故か立ち消えてしまった。


「あ、あれれれ?」

むぅ……変化の呪文が効かないのか?

「な、ならばッ!!」

【アイスプレシオン】

氷系呪文発動。

相手は火系の生物だ。

これなら効果ある筈。


氷の礫が幾重にもドラゴンの巨体に張り付いて行く。

「ふ……氷漬けになって長期保存も楽よのぅ」


「……」

だがドラゴンは面倒臭そうに体を震わせると、俺の放った氷系の魔法はいとも簡単に霧散霧消。

そして彼奴は何事も無かったかのように俺を見て鼻を震わせながら笑った。


「あ、あれぇ~~?」


「だ、大魔王様ッ!!ドラゴンは魔法生物だっぺよ!!だから魔法攻撃はあまり役に立たないっぺッ!!」

ミトナットウが林の中から叫ぶ。

「ってゆーか、そんなことも知らなかったぺか?」


「……うん、知らんかった」

テヘヘヘ~と、大魔王スマイルを披露する俺。

しかし、そうなのかぁ……生れ付き、魔法に対して耐性がるあると、そう言う生物なのか……

「だったら、物理攻撃に切り返るまでよっ!!」

剣を下段に構え、洸一チン特攻を開始。

石壁すら切り裂くこの剣の切れ味、とくと味わうが良いわさ!!


ドラゴンの鋭く尖った爪が襲い掛かって来るが、格闘三人娘に泣くまで鍛えられた俺様は伊達じゃない。

「遅い遅いURYYYYYYYYYーーーーーッ!!」

サッと身を屈め、巨大な図体の脇に潜り込む。

「ハッ!!」

そして気合一閃。

下から上へと斜めに切り上げた。

――キンッ!!!!

「むッ!?固いなりッ!!」

鱗を少し傷つけただけだった。

予想外だ。


「だ、大魔王様ッ!!赤竜の鱗はこの世で一番固いっぺよッ!!」

ミトナットウの悲痛な声。

「ってゆーか、本当に勉強不足だっぺッ!!」


「く……初見だぞ。無茶言うな……」

尚も我武者羅に剣を振る俺。

その度に固い鱗との間に火花が飛び散り、何だか鍛冶屋になった気分だ。

「このこのこのこのこの……」

――キンキンキンンキンキン

「ハァハァハァハァ……見ろ!!鱗を一枚剥したぞッ!!」

だけど体力の限界だった。

何て効率の悪い戦いなんだか……


「だ、大魔王様ッ!?気を付けるんだっぺ!!」


長い首を回し、赤竜は咆哮と同時に火焔攻撃を仕掛けて来た。

紅蓮の炎が突風と相俟って俺を包む。

もちろん、事前に防御の呪文を唱えてあるので、火そのもののダメージは無いが、そのあまりの威力に、俺はミトナットウ達が篭る林の中まで吹っ飛ばされてしまった。


「あ、あぅぅぅ……」


「だだ、大魔王様ッ!?だ、大丈夫だっぺか?」


「き、傷は無いが……いやぁ~強いねぇ。はっはっは……ビックリだよ」


「この辺りを守る守護獣だっぺよ。いくら大魔王様でも、一朝には倒せねぇっぺ」


「な、なるほど。中ボス……って感じかな?」


「き、来たずらぁーーーーッ!!」

突然、一匹のオークが叫んだ。

見るとドラゴンは大きな羽をばたつかせ、地面擦れ擦れを滑空するように、この林目掛けて突っ込んで来たのだ。


「ひぇッ!?ど、どうするだぁ、大魔王様」


「うむ。逃げるなりッ!!」

――洸一遁走!!

尻捲くって走り出す。

もちろん他の面々も蜘蛛の子を散らすように逃げ出すが、ドラゴンはそんな雑魚には目もくれず、何故か俺の後ろを追い駆けて来る。

「どひぃぃぃぃーーーーッ!!ね、粘着気質だッ!?」


「舌噛むだよ、大魔王様」









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