小鳥魔女の昔話
私、コッカー・コニーは現在若干18だが、隠居生活を初めて3年経つ。と言うのも私はこの姿を人に見られたくないからだ。
少し昔のちょっと前ほど。まあ10年以上も前の話なのだけれども。貧しいながらも両親共々に愛され、なかなか恵まれた環境にいた私にとある転機が訪れる。とある貴族が私を養子にしたいと申し出たのだ。その理由はいたって単純で、私が魔女だから。
この世界では魔女は特別な存在。人々の守護者となり異種族を繋ぐ架け橋となり、そして畏怖の存在。もちろん、そんな存在なのだから世の中に溢れかえってるはずはなく、神の御加護と呼ばれるこの魔力を持って生まれる子は少ない。
せっかく生まれ持ったこの性質をもっと勉強したい、それに世界を見てみたい、そんな理由から私は貴族の養子になることを承諾する。最初は私と離れたくない、なんて両親に加え近所のおばさんだったりおじさん、果ては友達の家族までもが家に押し寄せたこともあったけど、私の決意は最初から固まっていて。パン屋のおじさんは私の魔法で生まれる火でパンを焼かなきゃ美味しくならない、なんて泣いてたっけなあ。
たくさん勉強して、私を愛してくれた人たちに恩返しをする。この機会に乗らなきゃそれは叶わない願いになるかもしれない。どうにか納得してもらって、こうしてコッカー・コニーという名前に貴族の名称、"ハニー"という名前が加わった。ハニー家のコッカー・コニー...甘ったるそうな名前ではあるよね。あまり名乗る機会はないけれど。
まあ、養子になったもののやっぱり親は恋しいものだよね。それに近所の人たちにもお世話になったし実家は恋しくなるもの。母親父親達のためにもしっかり勉強する、なんて幼子のような(まあ当時は幼子だったのだけれど)約束をして、時間の関係もあって時々ではあるものの、少なくとも月に一度は地元に出向くことを快く許してもらえたりもした。
親に愛されて、近所の人たちにも、魔力を持っていたのが幸いして貴族に貰われ、その後義父母にも愛されて貴族に仲間入りした後も友達に恵まれ。ここまで見ると、私の人生はあまりにも恵まれすぎていたんだろうね。だけどツキ保存の法則なんてものがあるようで、私にも一つ不幸が、それも特大の不幸が訪れる。
「コニー、その腕...!」
その不幸にはハニー家の主人、お義父さんのその一言で気づく。
私の白っぽい、麗しいとまで言わなくてもそれなりの右腕には日照りにひび割れた大地のような亀裂が小さく入っていた。それから痛み、痒み、不快感にも気づいて、当時14の私は残り少ない命の期間を知った。
フレア。
医師にそう宣告された。フレアなんてかっこいい名前のした病気、だけど症状がなかなかひどい病気。
何が理由で発症するか分からない、正体不明のこの奇病、なんと致死率100%のどう足掻いても絶望しかない病気であった。
そのとんでもない難病にそんなかっこい病名がつくのは、肌がひび割れた最後には、全身から血を吹き出してさながら"フレア"したような姿になるからだそうだ。
「私、死ぬのね。」
なんては言わない。言いたくないし当時はそんなこと微塵にも思ってなかった。むしろ、私の意地っ張りでかつ負けず嫌いな性格が、この致死率100%のとんでもない奇病"フレア"を打ち負かそうと、割れかけの体を武者震いさせて闘志を燃やさせた。
幸い日の下にでなければ病気の進行は遅れさせられることができる。その話を聞いた私は部屋にこもり、余命1年半の中でどうにか打開策を練ることにした。
...っとまあ、私の昔話を長々と語るのもだいぶ退屈よね、あとは簡単に話すわ。ちょうどおやつの時間だし。
その後打開策を練り始めた私は、地上の生き物じゃ解決できないと察してと魔法陣を作って魔獣を呼んだの。その魔獣が今契約して召使いにでもなってる八二乗十六夜で、だけど彼女もフレアについては治し方なんてわからないそうで。
こんな死に方はしたくない。
もうすがる思いで方法がないか頼み込んだら、代償は大きいけどもしかしたら治るかもしれない方法がある、なんて言われて、藁を掴む勢いで私はその賭けに乗ったわ。その結果が今なのだけどね。
八二乗の力を借りて、人間の体を捨てて私は鳥のような姿に。おかげでフレアは治ったのだけど、私はインコの鳥人種になっちゃったってわけ。
それにしても今日のおやつは美味しいわ。




