帝国の内情
皇居 執務室
鈴木侍従長「この平和は長くはもたないと聞いたのだが…」
米内首相「総力戦研究所からの報告だと、せいぜい8年、短くて5年以内だそうです」
鈴木侍従長「できれば、10年ほど平和が続けばいいと思っていたのだが…」
米内首相「無理でしょうな、それは」
鈴木侍従長「では、その短い間に戦力を整えねばいけないな」
米内首相「幸い、日中講和で余計な戦費がかからなくなった分を、
国内の経済振興政策に予算が回せますし、今後は連合国向けの輸出も、
幾分かは盛んになるでしょうから不況は脱せますでしょう」
鈴木侍従長「ほう、それは初耳だな。輸出するとすれば英国だろうが、
英国はインドなどの自治区とアメリカから物資を調達していたはず。
何を輸出するのだ?」
米内首相「英国は最近、イランに近東軍を派遣して新鋭政権を樹立させました。
しかし、新政権の軍隊に配布する武器弾薬が不足しているらしいのです」
鈴木侍従長「従来のドイツ製の兵器をそのまま使用すれば、
また親独政権が発足したときに何かと面倒だが、
英国は欧州で戦争中で武器弾薬に余裕がない」
米内首相「その通りです。そのため英国政府は自国に代わって
イランに武器弾薬の売却を打診してきたのです」
鈴木侍従長「それで、売却するのかね?」
米内首相「イラン政府は代金の一部は石油で払うと言ってきていますので、
新型配備で余剰となった小銃・野砲・航空機などとそれらの弾薬などを
売却する予定です」
イラン製の石油は高品位の軽油が中心で品質も蘭印製の石油に勝るとも、劣らない
米内「それに、武器の売却先はほかにもあるのです」
鈴木侍従長「満州じゃないのか」
米内首相「満州もありますが、中華民国から要請が来ているのです」
鈴木侍従長「アメリカから援助を受けているのにか」
米内首相「はい、主に97式中戦車の売却の話が来ています」
鈴木侍従長「なに、しかしなぜあんなものを…」
米内首相「中国北部の山岳地域では長口径アメリカ製戦車より
短砲身の97式中戦車の方が使いやすいようです」
鈴木侍従長「なるほどな、しかしそれだけ売却すれば新兵器の開発予算が組めるな」
米内首相「すでに、軍では新型戦車・航空機などの開発を進めています。
また、陸軍は部隊の機械化を、海軍は艦艇の建造を急いでいます」
日本の戦争準備はまだ始まったばかりだ
二人の会話はまだまだ続く…
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