御聖断
中間テストが忙しくて、全然更新できませんでした。すいません!
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1941年11月5日 皇居 御前会議
この日は、日米戦に関する大事な御前会議が皇居で行われる。なので、天皇陛下・侍従長をはじめ、首相・陸相・海相・外相などの国務大臣と参謀総長・軍令部総長が出席している。
当然その中には、鈴木貫太郎と山本五十六、東条英機も含まれる。
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出席者が集まり、最後に鈴木侍従長を従えた御上が席に着いた。
その間出席者は立って頭を垂れていた。それから、全員が着席して会議が始まった。
そして、東条はこの会議で開戦が決定するはずだと思い込んでいた。
しかし、開戦の火ぶたを切るのは、陸軍部隊ではなく海軍の艦艇と航空機である。だから、海軍大臣と軍令部総長を説き伏せなければならない。だが、軍令部総長のポストに山本五十六がいる限り、それはほとんど無理だということを東条は見逃していた。
そして、東条は、第一の議題から説明を始めた。もっとも、今回の御前会議の案件はすでに閣議で了承済みのものばかりで、それを御上が『聞く』だけというものであった。
ただ、『対米開戦』の案件だけが御上の裁可を必要とした。むろん、この案件の詳細もすでに宮内省に提出してあるので、これもすぐに裁可されるはずであった。
しかし、土壇場で状況が変わった。
山本
「首相はことを急ぎすぎている。海軍としてはまだ交渉の余地があるとみている」
山本軍令部総長が唐突に疑問を投げかけた。一瞬にして会場の空気が凍りついた。東条だけではなく東郷外相の表情まで強張っている。これに対して東条よりもさきに東郷が口を開いた。
東郷
「米国が提示してきた提案、いわゆるハル・ノートは、我が国にとって受け入れがたい内容でありす。
これ一つとっても、もはや交渉の余地はないものと思はれます。」
山本も負けじと、すぐ切り返した。
山本
「受け入れがたい内容と申されるが、別にすべて受け入れる必要はありますまい。
逆に米国側に問題条件の取り下げを求めるとこから、再度交渉を始めるべきです」
しかし、東条は、議論はすでに尽くしたとして
東條
「後は裁可をいただくだけです」
と、天皇に迫った。多少の食い違いがあっても予定どうり会議を進めるつもりであった。
だが、東条の努力は水の泡となった。なぜなら、久々に、御上が長年の疑問を示したからだ。
御上
「今までも、事変や事件が起こるたびに、その方らは朕に向かって『今度の攻撃で甚大な損害を被った敵は、間もなく講和を申し出てきます』と、毎回のように言ってきた。
だが、相変わらず中国での戦争は続き、しかも、講和の気配すらない。その方らの話は矛盾しているのではないか」
これには、東条をはじめ、誰も弁明の言葉を持たなかった。
そして、最後に御上はこう宣言した。
御上
「中国での戦争に終止符を打たない限り、新たな戦争を裁可するわけにはいかぬ」
そう言い残すと、御上は席を立ち、そのまま奥に退室してしまった。御上のこの行動は明らかに『裁可を認めない』という態度だった。その直後だった。鈴木侍従長が奥から出てきて、呆然としている東条にこう告げた。
鈴木
「御上は貴様に『辞任を許さず、首相の任を全うせよ』と申された」
それを聞くと、東条はがっくり肩を落として、無言でうなずいた。その時歴史が動いたといっても過言ではない。
しかし、今まで開戦を前提に政策を進めてきた本人が、鶴の一声で判断を覆され、開戦回避を命じられたというのは、運命の皮肉としか言いようがない。
もっとも、これは米内、鈴木らの言う『回天の荒業』のうちのひとつであった。
ついに歴史が動いた!
とりあえず、対米戦回避に路線変更が完了した。
まだ明かされぬ、『回天の荒業』の全貌
次話で明らかになります。
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