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文字化けとバグ

ゲームデータをロードしている間、俺は無心に画面を見つめていた。

オープニングムービーを全て見ようと思ってコントローラーを握る手も緩めた。

しかしあっさりとその期待を裏切るようにタイトル画面に辿り着いてしまった。


このゲームにはどうやらオープニングムービーがないらしい。

タイトル画面も非常に簡素なもので選択肢の文字しか表示されない上にBGMのようなものもない。

これらは昨日の時点で気づくはずなのだが俺はどうして気づかなかったのだろうか。

オープニングムービーは飛ばすつもりでボタンを連打してはいたが、タイトル画面がこんなに簡素だったことに気づかずにゲームを始めていたとは自分としても驚きを隠せない。


タイトル画面ばかりに気を取られてても仕方がないのでコントローラーを握り直して「はじめから」を選択しようとしてみた。

カーソルは一向に動こうとしない。

これはコントローラーの接続不良だと思い接続し直してみた。

しかしカーソルが動くことはなかった。


だがこれまた冷静になって画面を見てみれば新たな発見。

そう。現時点でカーソルが「つづきから」を指しているのだ。

このことから、セーブされているデータが存在しているということはわかる。


それにしても「はじめから」を選べないってどういうこっちゃ。


話は戻るが、昨日の確認したときには前の所有者のデータと思われるデータはなかった。

中学生のときに一時期中古ゲームにハマって以来、ゲームをやる前に前所有者のデータを確認するという行為は必ず行うようにしていたし実際何度もやってきたので忘れるワケがない。

第一、昨日確認した覚えがちゃんとある。



一体どういうことですか?

いや、もう正直ワケがわからないんですが。


足りない頭で少々考えてみた。

仮説は2つ生まれた。2つの仮説は限り無く単純で容易なものである。

このゲームは昨日プレイした…いや、見た会話シーンまではオートセーブが行われているのではないか、というものだ。

いや、生まれてこのかたオートセーブのRPGなんて見たことないけど。

オートセーブのRPGとか逆に困る要素いっぱいありそう。

というか、今までのゲーム経験から言わせて貰いますと手動セーブにしてもオートセーブにしても主人公が名前を設定するまで普通セーブしないはずなんだけど。

俺明らかに名前設定する前に電源落としたし。


まぁ反論はいくらでも思いついてしまうのでこの際こっちの仮説は置いておくとして。

正直考えるのは嫌だが、次の仮説とは…オカルト説のことである。

自分でも頭おかしいこと考えてるというのはわかっている。というか何より恥ずかしい。

自分の目の前にあるゲームの様子を見るとそれもありえそうな気がしないでもない。

オープニングムービーとBGMとタイトル画面の背景やデザインがないゲームなんて普通あるか?


答えは、NOだ。

とはいえ幽霊・オカルト信じない派の俺をここまで思わせるとは中々やるゲームである。


もしかしたらこのバグなどはゲーム作者の意図なのではないだろうか。

元からこういうモノを仕込んでおいて、都市伝説作っちゃおう的な。

意外と有り得そうな気がしてなんだか自分がバカらしくなって来た。

そんなことを考えながら「つづきから」にカーソルを合わせたままでボタンを押してみた。


シャリーン。


ゲーム内から冷たい無機質な音が鳴った。

効果音はなるのか、と正直ちょっとびっくりして体を揺らした。

やっぱりコントローラーの接続不良でもなかったようだ。


すぐに真っ暗な画面からゲームのフィールドが出て来た。

貞子やホラー系のものが出てくるかもと思って少しでも身構えた自分がやっぱり阿呆に思えた。

俺は前の所有者のデータなんじゃないか確認する為にメニューを開いてみた。


「マップ」「アイテム」「呪文」「装備」「̛̛͍̱͖̼̱͖̼͔̣̲͙̃̾͋ͪͣ̾͋ͪͣͦ͑̍̃ͅ」「セーブ」



驚くことに、文字化けがある。

それとセーブという項目がある。

やっぱりこのゲームはオートセーブではなかったようだ。

とりあえずレベルを確認すれば俺のデータなのかどうかは確認できるはず。

ただ、レベルを確認する項目がない。


となるとこの文字化けの項目がスターテスだったのだろうか。

俺は迷わず文字化けの項目を選択してみた。



名前:̦̱͖r̾͋e̼͈ͪͣ

レベル:1

職種:勇者


読める範囲はこれぐらいであろうか。

他の所は全てワケのわからないアルファベットと数字の羅列と文字化けで埋め尽くされている。

このレベルを見る限り、前所有者のデータではないと思われる。


謎が謎を呼ぶと言うべきか、明らかにこのゲームは何かおかしい。

そもそも昨日の時点でタイトル画面があんなに静かなことに気づかないワケがない。

あまりのバグの多さに嫌気が差してゲームの名前を確認した。


そしてすぐさまケータイを取り出して電話を掛けた。

電話を掛けた先は、生粋のゲーマーである友人の小林武人(コバヤシタケヒト)

小林とは中学のときに仲が良くてゲームの情報をよく交換したりしてた。

中々に活発な性格だったのでちっとも根暗ではなかったし付き合い易かった。

だけれども、高校に入って以来、連絡は一切取っていなかった。


まぁ生存確認がてらに丁度良いし、あいつに電話してみればきっと何かわかるだろう。


「あ、もしもし。小林か?」

―――ん?誰?

「いや、俺だよ俺」

―――オレオレ詐欺は結構です。それでは。

「待て待て待て。修一だよ。忘れたのか?」

―――おー、久しぶり!早く言えよー。

「あぁ…悪い悪い。冗談だと思ってさ」

―――うん。冗談だよ。で、用ってなんだ?

「猛烈にお前を殴りたい。」

―――俺を殴って良いのは美少女だけだ。


中学のときと変わってないなこいつは。

良い意味でも悪い意味でも。


「…んでさ、アウターワールドってRPG知ってるか?」

―――なんだそりゃ。聞いたことないぞそんなゲーム。

「そうか。なら良いんだ。悪かったな、じゃあな」

―――いやちょっと待ってろ。パソコンあるから調べてみる。

「お、ありがとう。あのさ電話代掛かっちまうからまた調べ終わったら電話してくれよ。」

―――あいよ、じゃあな。たぶんそんなに時間掛からんと思うけどな。


1年とちょっとぶりの会話だってのなんなんだあの野郎。

相変わらずアホみてーなこと言いやがって。


電話を終えて思ったが小林はやっぱり良い奴だ。

持つべきモノは友であるのは間違いない。


さて電話も終えたことだしどうした物か。

ゲームを進めようにもプロローグを少ししか見てないのでここがどこだかわからない。

何をすれば良いのかもわからない。

することもないのでマップを確認してみればこれも文字化け。

道具と呪文はまだ何もないようだし、装備も何も付けてない。


大人しく小林の情報を待つしかないような気もするし、逆にその必要もない気がする。

情報なしに動くのもなんか面倒臭い気がしないでもない。

俺は小林の情報を待つことにした。


窓の外に目をやればもう真っ暗。

時計を見ればもう7時半である。

なんだかんだで暇は潰せたんだなと感心すると同時に高校生と言う大事な時期を暇を潰すだけに使用するなんて本当に愚行であるということを自分でも承知しております。


青春の一ページを毎日一枚ずつ破り裂いてる気分です。



そんな最中。

「ただいまー」

玄関から声が聞こえる。

母上殿の帰宅だ。


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