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球拾い
大分県立伊予ヶ丘高校野球部1年でピッチャー・明野雄大は、
甲子園に向けて頑張っている先輩のために、球拾いしていた。
「…」
雄大は、口をポカンと開けて憧れの3年ピッチャー・小野寺大河と
3年キャッチャー・葉山宏一のピッチングを見ていた。
「カッコええなぁ…」
カッコいい容姿からは想像もできないほどマヌけに口をあけているから、
すぐに2年に見つかってしまう。
「こら!そこの1年ボーっとしてねえで、球拾え!」
「ウス!」
はっとして雄大は我に戻り、球拾いを続けた。
球を拾っている途中でも、雄大はあのバッテリーが
どうしてもかっこよくて、思わずまた見てしまう。
少し…、少しだけ…と思っていると、
どんどん口が開いてきて、またさっきのようになってしまう。
今度は、目の前に2年がやってきて、頭を小突かれる。
「あいたっ」
「おーまーえー!球拾えって言ってんだろー!」
「すいませんっ」
2年も、忙しいのにわざわざ小突きに来てくれて
ご苦労なこったい、と内心思いながらも、
もう雄大は球拾いに集中していた。