強気な赤ずきんと弱気なオオカミ
※このお話は連載版「強気な赤ずきんと弱気なオオカミ」を短編として書き直したものです。
太陽がまぶしい緑の森に、それはそれは元気いっぱいの女の子がいました。名前はメアリー。赤いずきんがお気に入りで、いつも大きな声で歌いながら、森の中を駆け回っていました。怖いものなんて、メアリーにはありません！
さて、そんなメアリーが住む森の奥深くには、たくさんのオオカミが群れになって住んでいましたが、少し離れたところに一匹のオオカミがひっそりと暮らしていました。名前はウルフ。
立派な牙と鋭い爪を持っているのに、ウルフは人間が大の苦手！ 大きな足音を聞いただけで、ブルブル震えて物陰に隠れてしまうほどでした。
もちろん、人間を食べるなんて考えたこともありません。ウルフにとって、人間は一番怖い生き物だったのです。
ある日、メアリーはおばあさんのお見舞いに行くことになりました。お母さんから「このパイとハチミツを、おばあちゃんに届けてあげてね。でも、森の中にはオオカミがいるから、気を付けるんだよ」と言われました。
「オオカミなんてへっちゃらよ！ 鼻を蹴飛ばしてやるわ！」
メアリーは、元気よくお母さんに手を振って、森の中へと飛び出していきました。歌を歌いながら、どんどん進んでいきます。「ルルルン、おばあちゃんの好きなパイ！」
一方、森の中でガサガサと音を立てながら歩いていたウルフは、聞き慣れない歌声にドキッとしました。「ひっ、人間の声だ！」
ウルフは慌てて大きな木の陰に隠れ、体を小さく丸めました。歌声はどんどん近づいてきます。「お願いだから、こっちに来ないで……」ウルフは心の中でそう叫びました。
すると、目の前に赤いずきんをかぶった女の子が現れました。それがメアリーです。メアリーは、ウルフが隠れている木のすぐそばで立ち止まり、きれいな花を見つけました。「わあ、きれい！」
ウルフは息を潜めて、メアリーの様子をそっとうかがいました。メアリーは、少しも怖がっている様子はなく、楽しそうに花を摘んでいます。
「ほんとうにきれいなお花！ ……ところで、そこの大きな木のかげにいるあなたはだあれ？」
突然、メアリーが大きな声で話しかけました。ウルフはびっくりして、思わず「ひゃっ！」と小さな声を出してしまいました。
「やっぱりいる！」メアリーはにっこりと笑って、木陰に近づいてきました。ウルフは、もう逃げられないと覚悟して、目をギュッと閉じました。
「あなた、オオカミさんでしょ？ 私はメアリー。あなたは？」
メアリーの声は、少しも震えていません。ウルフは、ドキドキしながらゆっくりと目を開けました。目の前には、両手を腰にあてて、にこにこ笑っているメアリーがいました。
「ぼ、ぼくは……ウルフ……」ウルフは、震える声で答えました。
「ふーん、ウルフっていうんだ。ねえ、あなた、なんだか怖そうな顔をしているけど、本当は優しいんでしょう？」
メアリーは、ウルフの大きな鼻を指さしながら言いました。ウルフは、ますますドキドキして、何も言えません。
「だって、あなたの目、全然こわくないもの。それに、なんだか悲しそう」
メアリーの言葉に、ウルフはハッとしました。そう、ウルフはいつも、人間を怖がっている自分が情けなくて、とても悲しかったのです。
「実は、ぼ、ぼく……人間が怖いんだ……」ウルフは、やっとの思いで言葉を絞り出しました。
メアリーは、目を丸くしてウルフを見つめました。「ええ？ オオカミなのに、人間が怖いの？」
ウルフは、コクンと頷きました。
メアリーは、しばらく考え込むと、パチンと手を叩きました。「そうだ！ じゃあ、私があなたを強くしてあげる！」
「えっ？」ウルフは、きょとんとしてメアリーを見返しました。
それからというもの、メアリーは毎日ウルフのところにやってきて、色々なことを教えてあげました。大きな声で歌う練習、森の中を堂々と歩く練習、そして、困っている動物を助けることのうれしさ。
最初は戸惑っていたウルフも、メアリーの明るさと優しさに触れるうちに、だんだん自信を持てるようになっていきました。メアリーと一緒に森を駆け回るうちに、ウルフは自分がオオカミであることを、少しずつ誇りに思えるようになったのです。
もちろん、まだ人間を目の前にするとドキドキしてしまうこともありましたが、以前のようにガタガタ震えることはなくなりました。そして、何よりも、優しいメアリーという友達ができたことが、ウルフにとって一番の宝物でした。
今日もメアリーは、赤いずきんを風になびかせながら、ウルフと一緒に森の中を冒険しています。ふたりはときどき、おばあちゃんの家に行って、三人で遊ぶこともありました。明るく元気な笑い声が、森の木々にこだまして、まるで森じゅうが喜んでいるかのようでした。
しかし、その幸せはとつぜん壊されてしまいました。
メアリーとウルフが、いつものように森の中で遊んでいると、突然、低いうなり声が森の奥からひびいてきました。それは、一匹や二匹ではありません。たくさんのオオカミたちが、怒りをあらわにするようなうなり声をあげながら、二人のもとへ近づいてくるのです。
「ウルフ！」メアリーは、ただ事ではない雰囲気に、ウルフの名前を呼びました。
ウルフのしっぽは、みるみるうちに後ろ脚の間に下がってがっていきました。
「ま、まずい……親分たちだ……」
現れたのは、屈強な体をしたオオカミたちでした。鋭い牙をむき出し、地面を這いずるようなうなり声をあげながら、メアリーとウルフを囲みます。その中心には、ひときわ大きく、鋭い眼光を放つオオカミがいました。それが、オオカミたちの親分です。
「ウルフ！」親分オオカミは、低いけれど威圧感のある声で言いました。「きさまはなにをしている！ お前は、オオカミの掟を破った！ 人間と馴れ合うなど、許されることではない！」
他のオオカミたちも、牙をむき出し、二人を威嚇します。メアリーは、たくさんのオオカミに囲まれても、少しも怯むことなく、まっすぐに親分オオカミを見つめました。
「それがどうしたっていうの！」メアリーは、両手を腰にあてて、いつものように強気な声で言いました。「ウルフは、とっても優しくて、私の大切な友達よ！ 友達と仲良くすることが許されないなんて、ふざけたこと言わないで！」
親分オオカミは、メアリーの言葉に、さらに怒りをあらわにしました。「友達だと！？ 人間は、我々オオカミの敵だ！ ウルフは、敵と手を結んだのだ！ 掟に従い、われわれは今すぐウルフを森から追放しなければなら」
親分オオカミが言い終わる前に、メアリーは力強い声で叫びました。「違うわ！」
メアリーの言葉に、オオカミたちは一瞬動きを止めました。
「私とウルフは、こうして仲良くなれた！ 言葉も気持ちも通じ合える、大切な友達になれたのよ！ あなたたちだって、きっと同じことができるはずだわ！ ただ、少しだけ勇気を出して、心を開いてみればいいのよ！」
メアリーは、まっすぐな瞳で、オオカミたち一匹一匹を順番に見つめました。その瞳には、強い信念と、優しい光が宿っていました。
オオカミたちは、メアリーの力強い言葉と、まっすぐな眼差しに、戸惑いを隠せません。敵であるはずの人間が、怖がらずに自分たちに語りかけてくる。そして、その言葉には、不思議な説得力がありました。
ウルフは、メアリーの言葉を、不安と希望が入り混じった表情で見つめていました。「メアリー……」
「違う！」親分オオカミが鋭い牙をむき出しにして、他のオオカミたちといっしょにメアリーとウルフに襲いかかってきました。「人間は、ずっと我々を苦しめてきた！ 罠にかけ、狩り立て、住処を奪ってきたのだ！ お前たちのような人間と馴れ合うなど、断じてできない！」
怒りに燃えるオオカミたちの勢いに、人間であるメアリーは抵抗することもできず、地面に強く叩きつけられてしまいました。「きゃあっ！」ものすごい勢いで突き飛ばされ、動くことすらできません。体中に痛みが走り、息をするのも苦しいほどでした。さらに親分オオカミはその大きな前足で、メアリーの頭を踏みつけました。
ウルフは、メアリーを助けようと立ち上がりましたが、すぐに数匹のオオカミに取り押さえられてしまいました。「メアリー！ メアリー！」ウルフは、必死に叫びましたが、身動きが取れません。
親分オオカミは、踏みつけられたまま動けないメアリーを冷酷に見下ろし、「人間よ、お前の甘い言葉で、我々の怒りが消えると思うか！ 長年の恨みは、そんなものでは消せないのだ！」と叫びました。鋭い牙をむき出しにして、まさにメアリーにとどめを刺そうとしたその瞬間でした。
「コラァッ！ 一体何をしているんだ、お前たちは！」
森の奥から、鋭く、そして聞き慣れた声が響き渡りました。それは、メアリーのおばあちゃんの声でした。そして、おばあちゃんは、手に大きな薪割りの斧をしっかりと握りしめ、険しい表情でオオカミたちの前に立ちはだかったのです。
オオカミたちは、突然現れたおばあちゃんと、その手に握られた大きくて分厚い斧に、一瞬動きを止めました。親分オオカミでさえも、その迫力に息を呑んだようです。
「お前たち、一体何があったか知らないが、小さな女の子に集団で襲いかかるなんて、恥を知りなさい！」
おばあちゃんの声は、森中に響き渡るほど大きく、顔が真っ赤になるほど怒っていました。
「メアリーは、誰もいじめたりしない、優しい子だ！ それに、ウルフもそうだよ！ あたしは知っているんだ、お前たちオオカミが本当は優しい心の持ち主だってことを！ それなのに、こんなことをするなんて、恥ずかしいと思いなさい！」
おばあちゃんの言葉は、オオカミたちの胸に、重く響きました。特に、親分オオカミは、おばあちゃんの強い眼差しに、言葉を失っていました。
なぜなら、親分オオカミは、おばあちゃんが過去に何度か森で困っているオオカミたちを助けたことを知っていたからです。
そして親分オオカミはその時のことを覚えていました。感謝の気持ちは、親分オオカミの心の奥底に、まだ残っていたのです。
メアリーは、おばあちゃんの力強い姿に、痛みを忘れて目を見開きました。「おばあちゃん……！」
ウルフも、取り押さえられていたオオカミたちが、おばあちゃんの迫力に少しずつ後ずさりしているのを見て、希望の光を感じ始めていました。
おばあちゃんの叱責に、オオカミたちが押し黙っていると、森の奥からさらにゆっくりとした足音が近づいてきました。現れたのは、ひときわ毛並みが白く、あご下の毛がひげのように長い、いかにも年老いたオオカミでした。けれど、その穏やかな眼差しには、深い知恵と優しさが宿っているようにみえました。
親分オオカミが、おどろきをあらわにして言いました。
「長老……！」
長老と呼ばれたオオカミは、ゆっくりと歩み寄り、おばあちゃんとメアリーの前で静かに頭を下げました。
「申し訳なかった、おばあさん、そして、お嬢さん。わたしの群れのものどもが、このような無礼な振る舞いをしてしまい、深くお詫び申し上げます」
それからウルフに対しても「そこの小僧。手荒い真似をしてすまなかったな」と声をかけました。
親分オオカミをはじめ、他のオオカミたちは、長老オオカミの突然の謝罪に驚き、ざわつき始めました。「長老……！ 人間に謝る必要なんかありません！」
「だまっておれ」長老オオカミは、静かに彼らを制し、再びおばあちゃんに向き直りました。
「たしかにわたしたちは、長年、人間たちに苦しめられてきました。森を恵みを好き放題に持っていかれ、群れの赤子がさらわれたこともあったのです。その恨みが、このような行動に繋がってしまったのです。正直、わたしもまったく人間を恨んでいないわけではありません。しかし、だからといって、それを理由にあなたたちを襲うことは、決して許されることではありません」
おばあちゃんは、長老オオカミの誠実な言葉に、少しだけ表情を和らげました。
「長老さんよ、あたしたちもたくさんオオカミや森のみんなを苦しめてきたことを謝りたい。だが、恨みはまた新たな恨みを生むだけじゃ。メアリーやウルフのように、心を通わせることができる者たちもいる。あたしたち年寄りは、あの子たちに未来を任せてみてはどうじゃろうか？」
長老オオカミは、悲しそうな目をおばあちゃんに向けました。
「それは……わたしもそうしたいと思っております。老いぼれの身で、若者を縛りたくはないし、縛ってはならないことも重々承知しております。しかし……わたしたちオオカミには、古くから伝わる掟があるのです。人間と関わることは、一族の破滅を招くと。その掟を、そう簡単に捨てることはできないのです。どうすれば良いのか、わたしたちも分からずに苦しんでいるのです」
オオカミたちの困惑した様子を見て、メアリーはゆっくりと立ち上がりました。まだ体はすごく痛みますが、その瞳には、いつもの強い光が戻っています。
「ねえ、長老オオカミさん」
長老オオカミは、メアリーに向き直りました。
「掟って、みんなが苦しくなるためにあるものなの？ だったら、そんなのにこだわってるのはばかばかしいわ。私とウルフは、そんな堅苦しいものなくても、こうして仲良くできる。だったら、もっと気楽な『決まり』をみんなで作ってみたらどうかしら？ たとえば、『お互いを傷つけない』とか、『困っている仲間を助ける』とか、そういう、もっとあったかい決まりよ！」
メアリーの提案に、オオカミたちは顔を見合わせました。掟という絶対的な存在に縛られてきた彼らにとって、メアリーの言葉は、まるで新しい世界の扉を開く鍵のようでした。
ウルフは、希望に満ちた目でメアリーを見つめました。「メアリー……！」
親分オオカミも、長老オオカミの顔を見ながら、何かを考えている様子です。長老オオカミは、少し目を閉じた後、遠い目をして言いました。
「厳しい掟ではなく、優しい『決まり』か……。それは、私たちオオカミにとって、初めての試みかもしれんな……」
長老オオカミは、メアリーの提案に耳を傾け、やがて静かにうなずきました。「確かに、今のままでは、私たちもずっと苦しみ続けることになるだろう」
長老オオカミはゆっくりと周りのオオカミたちを見渡しました。「皆、どう思う？ この人間の女の子の言うように、古い掟を見直し、新たな決まりを作ってみるのは……？」
親分オオカミは、少し迷った表情をしましたが、長老オオカミの言葉に、重々しく頷きました。「長老がおっしゃるなら……。それに、この娘の言うことも、一理あるかもしれません」
こうして、メアリーの提案をきっかけに、オオカミたちは集まって、人間と共存するための新しい「決まり」について話し合うことになりました。最初は戸惑うオオカミたちもいましたが、メアリーが優しく、そして熱心に説明するうちに、次第にその考えに耳を傾けるようになりました。
長い話し合いの末、いくつかの大切な「決まり」が作られました。
一つ、「お互いを決して食べてはいけない」。人間はオオカミを殺さない、オオカミも人間を襲わない。
二つ、「お互いのすみかを荒らさない」。人間はオオカミたちの家である森、オオカミは人間の住む村や家を大切にする。
三つ、「意見が合わない時は、力で解決するのではなく、落ち着いて話し合いをする」。話せるもの同士で理解し合うことを学ぶ。
四つ、「困っている仲間がいれば、種族に関わらず助け合う」。優しい心を持つことを大切にする。
ほかにも、小さな決まりがいくつもつくられましたが、それらはみんな「お互いを幸せにする」ためのものでした。
これらの新しい「決まり」は、最初はぎこちないものでしたが、メアリーとウルフが中心となり、少しずつ森の仲間たちと人間たちに広められていきました。
メアリーは、森の動物たちに、人間の優しさや文化を教えました。ウルフは、オオカミたちの言葉や森の知恵を、人々に伝えました。二人は、まさに森と人間を結ぶ、かけがえのない橋渡し役となったのです。
時には、誤解や衝突も起こりました。しかし、そのたびにメアリーとウルフは、新しい「決まり」に従い、辛抱強く話し合いを続けました。お互いの立場を理解しようと努めるうちに、人間とオオカミの間には、少しずつ信頼と友情が芽生え始めました。
森には、以前のような張り詰めた空気はなくなり、代わりに、穏やかな共存の息吹が満ちていきました。森と人間は長年の憎しみを乗り越えたのです。
それから何年もの月日が流れました。
メアリーは、村の優しい若者と結婚し、かわいらしい子どもをもうけました。お母さんになったメアリーは、相変わらず元気いっぱいで、子どもにも森の動物たちとの「決まり」や、ウルフとの友情について話して聞かせました。
一方、ウルフも森の中で、たくさんの元気な子オオカミたちに恵まれました。ウルフは、親オオカミとして、子どもたちに森の知恵や狩りの仕方を教えるだけでなく、人間との新しい「決まり」がいかに大切かを、繰り返し伝えました。「人間は怖いだけじゃない。心を通わせれば、友達になれるんだ」と。
ある晴れた日の午後、メアリーは我が子を連れて、久しぶりに森へと足を運びました。懐かしい木々の匂い、小鳥たちのさえずり。そして、木の陰から、あの頃と同じようにひょっこり顔を出したのは、すっかり立派な親オオカミとなったウルフでした。
「ウルフ！ 久しぶりね！」
「メアリー！ 元気だったか！」
二人は、再会を喜び、互いの成長を確かめるように見つめ合いました。メアリーの腕の中には幼い子どもが、ウルフの後ろには、好奇心いっぱいの小さな子オオカミたちが、ちょこんと顔をのぞかせていました。
メアリーは、子どもを子オオカミたちの前に、そっと下ろしました。最初は、少し戸惑っていた子オオカミたちでしたが、メアリーが優しく「ほら、ごあいさつしてごらん」と促すと、メアリーの子どもは、小さな手を広げて子オオカミに近づいていきました。
子オオカミも、おっかなびっくりしながらも、クンクンと匂いを嗅ぎ、メアリーの子どもの手をペロリと舐めました。すると、メアリーの子どもは、ケラケラと笑い声をあげ、子オオカミも嬉しそうに尻尾を振りました。
やがて、子どもたちはすぐに仲良くなり、森の小道を一緒に走り回って遊び始めました。追いかけっこをしたり、かくれんぼをしたり、まるで昔のメアリーとウルフを見ているようでした。
それを見て、メアリーとウルフは、互いに顔を見合わせ、優しい笑顔を交わしました。心地よい風が吹いてきたので、二人はそっと立ち上がり、深い森を感慨深げに見つめました。
「私たちの決まりやねがいごとは、ちゃんと伝わったみたいね」メアリーが嬉しそうに言いました。その言葉遣いはとても穏やかで優しく、昔の強気な赤ずきんの面影を残しつつも、より深い優しさに満ちていました。
「ああ、そうだね。この森で、人間とオオカミが本当に仲良く暮らせる時代が来たんだね」ウルフは、感慨深げに目を細めました。その姿は大きく雄々しく、弱気なオオカミの姿はどこにもありませんでした。
昔、オオカミが人間を襲い、人間がオオカミを恐れていた時代は、もう遠い昔のこととなりました。メアリーとウルフが築いた友情と、「お互いを尊重し、助け合う」という新しい決まりは、次の世代へと確かに受け継がれていました。
楽しそうな子どもと子オオカミの笑い声がずっとずっと聞こえます。メアリーとウルフが導いた友情は、これからもずっと、変わることなく輝き続けることでしょう。
（強気な赤ずきんと弱気なオオカミ おしまい）
メアリーとウルフの物語はお楽しみいただけましたでしょうか。
この物語を読んだあなたの時間が、幸せなものになったことを祈っています。
愛をこめて 翠野ライム
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