5話 新たな目標
親友が消えたライガはどうするのか?
「知らない天井だ」
気絶したライガが目を覚ましとそこは知らない部屋でベッドにいる状態であった。
「ここはフルール家の医務室よ。あんた、気絶したの覚えてる?」
「そうか。俺は気絶したのか」
気絶した理由であるクウガの両親の死体を思い出してしまい気分が悪くなり近くに置いてあったゴミ箱に吐く。
「ゔぉぇぇぇぇ!!」
そうしてたっぷりと吐いてようやく落ち着く。
「申し訳ありません。専属騎士に指名して貰ったというのにみっともない姿をお見せして」
「しょうがないわよ。親友が両親を殺してるなんて信じられないものね」
気まずい空気が医務室に流れる。そこへ、
「失礼するわよ。アルス、呼び出しよ」
「お姉様? 誰からの呼び出しですか?」
「用件は分からないわ。けれど呼び出し人は女王陛下よ」
「お母様が」
ちらりとライガが見るアルス。初めて出来た専属騎士が心配なのだろう。それを察してライガは、
「問題ないです。行って来てください。むしろ、専属騎士の癖に護衛として付いて行けなくて申し訳ない」
行ってくるように促す。
「そう言うなら行って来るけど」
「それじゃ行きましょうか」
アルスはアリスと共に医務室を出るのであった。
「災難ね。まさか殺人事件の現場を見るなんて。辛くなかった?」
「私は大丈夫です。ただ」
「彼が心配なの?」
「当然です。折角出来た専属騎士なんですから」
「優しいのね。それにしても親友が親殺しをしたなんて辛いでしょうね」
「そこまで知っているんですか?」
「貴女たちの会話が聞こえていたのよ。それよりも一体女王陛下は何の用事があって呼び出したのかしら?」
王宮へと着いた2人は女王の間に入る。
「アリス・フルール参上しました」
「アルス・フルール参上しました。女王陛下、今回は何用で?」
玉座に座るとても子供2人を産んだとは思えない60代のスタイル抜群の美女、アリア・フルール女王に呼び出しの用件を聞く。
「よく来たわね。今回の用件は2つ。まずはアルス、貴女に専属騎士が出来たそうね。これは大変喜ばしい事です。それも攻撃力ならトップクラスに位置する雷魔法の使い手だとか。大事にするのですよ。王位継承戦に専属騎士は付きものなのですから」
「はい(何だ、ただの確認か。こんな事のために一々呼ばないで欲しいわね)」
大事な用事でもないので不機嫌そうなアルス。そんなアルスが更に不機嫌になる発言が女王陛下から飛び出す。
「2つ目が最も重要です。アリス、貴女の婚約相手が決まりました。ソール家の三男です」
「はぁ!! ソール家の三男って女好きで有名なあのブロイト? 正気ですか!! 女王陛下!!」
「それの何が問題があるのです? 魔法を使えない者を妻として迎えてくれるのですよ。しかも、王家が何の得にもなりはしないのに」
「だからと言ってあんな男に世界一の美女と呼ぶに相応しいお姉様を嫁がせるなんて!!」
未だに女王陛下に喰ってかかるアルスにそっと手を置くアリス。
「アルス。私のために怒ってくれてありがとう。女王陛下も私のような魔法を使えぬ者のために婚約相手を探していただき感謝します」
「感謝する必要はありません。母として娘の幸せのために動くのは当然なのですから。これで用件は終わりました。もう帰っても大丈夫ですよ」
「はい。失礼します」
「〜〜っ!! 失礼します」
まだ納得いかないアルスであったが先に出て行ったアリスを追うために女王の間から出て行く。
「ちょっとお姉様!」
フルール家の屋敷に戻ろうとするアリスを呼び止める。
「何かしら?」
「何かしら? じゃありません! あのクズ男で有名なブロイトですよ!」
「そうね。そんな男の物になる前に私の処女を渡せる素敵な殿方がいたら良いのだけれど」
「冗談言ってる場合じゃありません! お母様もお母様ですよ! お姉様の幸せを願っているなんて言った割に心が全く心が篭ってない! 明らかに厄介払い感覚ですよ」
「厄介払い感覚じゃなくて厄介払いそのものよ。女王陛下にとって私はいらない娘だから」
「魔法が使えなくてもお姉様には色んな才能が」
「あっても意味ないのよ。この国ではね。まぁ、結婚出来るのは20歳からだから私には2年の猶予がある。それまで自由を謳歌するわ」
それで話は終わりとばかりに足早に帰るアリスを悔しそうに見送るアルスは、
「ライガ! 起きてる!」
「うおっ! ど、どうしたんですか? アルス様」
「女王を引きずり下ろす! 手伝いなさい!」
「な、何があったんですか?」
突然の女王を引きずり下ろす発言に驚くライガ。そんなライガに王宮での話の内容を伝える。
「お母様がお姉様に厳しいのは知っていたけど今回はそんなレベルじゃ済まされない。だから早く女王にならなきゃならない。そのためにも女王に下剋上をする。女王を倒してお姉様の結婚を取り消す!」
「出来るんですか? 相手は宿敵である大帝国から領土を3割奪ったバケモノですよ」
「今は無理。だからあんたにも手伝って貰うのよ。お姉様が結婚する2年後までに強くなるのよ」
「分かりました。そもそも俺に選択肢はないんですから」
「安心しなさい。あたしが女王になった暁にはあんたの親友を探すのを女王特権で手伝ってあげるから」
「そういう事なら頑張るしかないですね」
こうして新たな目標が出来るライガであるが果たして下剋上達成出来るのか。
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