37話 天才魔法医
瀕死となったライガを救うためにアルスたちはオズワルドの落ちこぼれ集落にいるという凄腕の魔法医に会うのを決意する
魔法医メイカは文句なく天才だ。オズワルドにおいて彼を超える回復魔法使いは存在しないほどだった。他人の腕が千切れても千切れた腕さえあれば繋げる事が出来た。自分自身なら千切れた腕がなくても生やす事が可能なレベルの回復が可能だ。おまけに病気までも治療可能だ。そんなメイカは女王であるアリア・フルールから王宮へとスカウトされたのだが、
「いやだ。オズワルドには落ちこぼれと見下されている連中が多くそいつらは死にかけている者ばかり。最近ではオズワルドの外に集落を作っているそうじゃないか。医者としてはそういった連中を助けるものだ。当然金は貰うがな」
「そんな連中からは大した金を貰えないでしょう。私は王族に匹敵する財産を貴方に与える事が出来ますよ」
「それは喜ばしい事だがあくまでもボランティア活動じゃないから金を要求するだけで金額の問題じゃない。それに貴女ほどの実力者なら私のような回復魔法使いは必要ないでしょ」
「そんな事はありません。どんな強者であっても怪我をする恐れはあるのですからね」
「そういうもんですかね。とにかく私は王宮で働く気はないですよ」
「そうですか。それは残念」
なんて会話があったのが数年前だ。そして現在メイカは、
「儲けた儲けた」
オズワルドにて襲撃を生き残った者たちを治療してそいつらから治療費を巻き上げてるんるんでオズワルドの外にある落ちこぼれ集落へと帰るのであった。そうして帰ったメイカに集落の住人が駆け寄る。
「先生、集落にオズワルドの奴が来ました」
「生き残りが集落に来るのか。意外だなてっきり中立国に避難しているもんだと思ったんだがな」
メイカの言う通りオズワルドの生き残りは動けない者を除けば中立国へと避難していた。
「それが女王候補の3人なんだよ! 何でも怪我人を治してほしいんだと」
「へぇ。案内しろよ」
「えっ? 治すんですか? 王族ですよ。俺たちを落ちこぼれと呼んでいる」
「王族だから治すんだよ。金をたんまり持っているだろうからな」
そう言って案内に従い王族に会いに行くメイカ。案内されたのは集落の入り口近くそこに、
「怪我人ってのはそいつか?」
アルス、アルフリート、ステンノそして重傷のライガがいた。
「久しぶりね。メイカ」
「久しぶりだな。ステンノ様。ちんちくりんだったのに良い女になったな。そっちはアルス様で。それから〜、あ〜、アルフリート様か? 死にかけのそいつは知らないな」
「私の専属魔法騎士のライガです。治してくれますか?」
「いくら出せる?」
「金はありません」
「はぁ? 王族だろ? それも現女王の娘の」
「女王は死んだ。何よりあれだけの襲撃を受けて王族にお金があるとでも?」
アルスというかフルール家はもはや財産と呼べるものはオズワルド襲撃の際になくなっている。ルーン家も同様だ。唯一ステンノだけはソーン家が自分以外魔人というバケモノだと知ってからこっそり財産の一部を隠し持っているので金はあるが他2人に共有はしていない。
「金に興味がないのでは? だから昔王宮から出たのでは? 金が最優先じゃないだけだ。生活に必要だから欲する。当然の事だろ」
「そうですね、、、、だったら提案です。今回の襲撃を起こした私の姉、アリス・フルールを打ち倒してオズワルドを復興した暁には貴方を宮廷魔法医にします。そして落ちこぼれ集落の全員をオズワルドの国民として受け入れます」
「はぁ! 何を勝手に言ってるのよ!」
「そうですよ! 第一女王には私がなります!」
アルスの提案に口を挟むステンノとアルフリート。
「一緒に行動するなら意見は一致しておけよ。まぁ、俺としては女王が誰でも良いがはっきり言ってオズワルドの復興は無理だと思うぞ」
「何故そんな事を言えるんですか?」
「アリアはバケモノだったからな。そんなバケモノを殺せる奴をお前らが殺せると思ってんのか?」
「! 知ってたの。お母様が魔人だと」
「まぁな。回復魔法を使用するにあたり人の生態を知るのが得意だからな。スカウトされた時に見ただけで理解した。人間じゃないとな」
「だから王宮に仕えるのを断ったの」
「シンプルに落ちこぼれをどんどん出す王族が嫌いだから」
なんて事を話ていたら、
「治す必要はねぇ。殺しに行くぞ。あいつらを」
ライガが起き上がる。
「ちょっと! 無理しないでよ! 本当に死ぬわよ!」
「凄いな。雷魔法を使用して電気信号を流して動いてるのか。こんな面白い奴を殺す訳にはいかんな」
そう言ってクウガによって斬られた箇所を手刀でメイカは貫く。これによりライガは倒れる。
「何してんのよ!」
「こうでもしないと治療を受けないだろ。とりあえず治してやる。報酬に関しては何もかもが解決したらだな。何せ襲撃犯の目的が分からないんだからな」
(お姉様の狙いは一体何?)
アルスは姉であるアリスを思うのであった。
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