19話 潜入
フルール家とルーン家の協力が決まりライガは3度目の大帝国行きとなる。今回は潜入調査だ。
「まさかここ数日で3回も大帝国に来る事になるとはな」
ライガの3度目となる大帝国の目的は潜入調査だ。これはフルール家とルーン家の共同作戦であり潜入調査員はアズサの専属騎士であるライガとアルフリートの専属騎士であるエイタの2人だ。
「私の魔法は事前に伝えた通り影魔法です。影を作り出したり、影に潜ったりも出来ます。今回の潜入調査は基本的には影に潜みっぱなしですので精神力が求められますよ」
「了解」
2人は大帝国の外にある監視塔の影に隠れる。そこから監視塔から大帝国内に戻る人間の影に隠れる事で無事大帝国内に潜入する。
「流石に前よりも監視の目が厳しいな」
「それはそうでしょう。五点星は筆頭を残して全滅して大帝も死んでしまうほどの戦いをしたばかり。そこをオズワルドもしくは他国に攻められる可能性があるのだから監視を強化しますよ」
影の中から大帝国を見るとどこもかしこも武器を持った国民ばかりでもし影から出たら問答無用で襲われるだろう。
「まさかとは思うが国民全員が武器を持ってるのか。子供からジジババまで」
「そのまさかだろ。見てみろよ。幼女まで小銃持ってるぞ」
「うわ、マジだ」
人形遊びが好きそうな幼女が小銃を持っていた。
「幼女を戦わせようとは許せんな」
怒りの表情を見せるエイタに、
(この人ロリコンか?)
なんて思うライガ。話題を変えようと思い、
「エイタは何で魔法騎士に? 魔法の特性的に諜報部隊の方が向いているんじゃないのか?」
「うん? あぁ、そうか知らないのか。俺は元は重宝部隊だ」
「そうなのか。だったら尚更魔法騎士、それも女王候補のアルフリート様の専属騎士に?」
「ふふっ、それは簡単だ。アルフリート様が可愛いからだ!!」
「ん?(流れ変わったぞ)」
「幼女、ゲフンゲフン! 幼い頃に見た事があるのだがそれはもうこの世のものとは思えぬ可憐さだったのだ。そこから俺はこの幼女、、ゲフン! この方の専属騎士になろうと思ったのだ!」
アルフリートの専属騎士になった経緯を語ったエイタに、
(ロリコンだーー!!)
年上で専属騎士として先輩なので流石に声に出しはしなかったが心の中で叫ぶライガ。
(行動力のあるロリコンを専属騎士にして大丈夫なのかよ。つーかこんなロリコンとの潜入任務とか最悪過ぎる! 何か大帝国にとって致命的な弱点を入手して帰りてぇ!)
早く帰りたいと思うライガであったが潜入任務というものがそんな簡単に終わる訳ではない。
「下っ端じゃ碌な情報が手に入らないですね」
「徐々に階級の高い奴の影に乗り換えるべきなんだが中々都合のいい奴がいないな」
全く情報が入らない訳ではないが大帝国にとって致命的な弱点となるような情報は全く入らないで3日が経過していた。
「だが、前大帝が生きているという噂は中々面白い。本当なら大帝国がパニックになる」
「本当ならですよね。でも葬式が執り行われたようじゃないですか」
「まぁな。それでも噂になるって事は何か不思議な事が起きてるって事だ。この情報も念の為に持って帰るぞ」
そうした噂話も収集していき、
「良い服着てるぞ。こいつの影に移動するぞ」
身なりの良い男の影に潜り込む。その男はセントラルセンターに入って行く。
「いいぞいいぞ。流石に大帝の間には行かないだろうがここなら色んな情報が手に入るぞ」
「そうですね。ただ油断は禁物ですよ。大帝、クルーズが同じ建物にいるんですから」
「何だ? 怖いのか? 2回負けたのが相当答えたか」
煽られてギリギリと歯軋りしして悔しさを全快で表すライガに、
「な〜に3度目の正直って言葉があるんだ。3度目に勝てば良いんだよ」
そう言ってバンバン背中を叩くエイタ。
「うす」
「さ〜てここではどんな情報が得られるかな〜」
セントラルセンターは大帝国の中核を担う施設だ。それだけに様々な情報を得る事が出来た。
「量は多いが質がまだまだだな」
「けどこれ以上の情報を得るなら大帝直下の部下、新生した五天星でもないと質の向上は期待出来そうにないですよ」
「分かってる。だが新しい五天星の3/5は落ちこぼれ集落出身で大帝国に在住していない。残りの2人も中央エリア以外のエリアをグルグルしてるらしいからな。定期的に集まるらしいがそれを知っているのは本人たちと大帝のみ」
「どうします?」
「我慢の時間だな。五天星が集まるまでセントラルセンター勤務の連中の影に潜むぞ」
なんて決めた瞬間に、
「な、何であいつが」
「どうした?、、、、!! おいおい大物が来たな」
大帝、クルーズが現れたのだ。職員たちも驚く。
「た、大帝! どうしてここに!」
「最近は書類仕事ばかりでな。久しぶりに体を動かそうと思ってな」
大帝となリアクション書類仕事が増えたがやはり元五天星の筆頭だけあって体を動かしたいようだ。
「チャンスだ! あいつの影に潜むぞ!」
「正気か! バレたら死ぬぞ!」
「絶対にバレない! 行くぞ」
そう言ってライガの声を無視してクルーズの影に潜む。
「ん? 何かいたか?」
「へっ? 我々は何も見ませんでしたが」
影にライガたちが潜んだ瞬間に何かいたように感じるクルーズ。
「マジかよ。流石は大帝ってか?」
「これ本当に大丈夫なんだよな?」
不安になるライガであるが違和感を感じたクルーズはそれ以上は気にする事なく訓練場にて汗を流してから大帝の間に戻る。
「おいおいこれは暗殺チャンスか」
「訓練場での動き見てなかったのかよ。あれを暗殺出来る訳ないだろ」
「あいつが寝たらお前が影から出て雷魔法で殺せるだろ」
「無理だな。いや、影魔法の中で雷化を使用してからなら可能性はある」
「あっ! それは無理。影の中じゃ他人は魔法が使えないんだよ」
「じゃあ暗殺は諦めろ」
「しゃあないか」
そうして暗殺を諦め情報収集に徹するのを決定したのだがそれどころではない事態となる。大帝の間に入るとそこには、
「お待たせしました。ギールス様」
死んだはずの前大帝ギールスが磔にされていた。
「なっ! マジか!」
「噂はマジだったのかよ!」
影の中で騒ぐ2人。そんな2人がいるクルーズの影にギールスが目を向ける。
「ふん。大帝になって調子に乗ったな。影にネズミが入っているぞ」
「っ!!」
指摘されて瞬時に腰の剣を引き抜くと自分の影に突き刺す。普通の剣なら何の問題ないがクルーズの持つ剣は魔力を無効化する剣だ。つまり、
「イッテー!!」
エイタとライガが影から飛び出る。エイタは剣が刺さった右腕を負傷。ライガは無傷だが、
(エイタは負傷。クルーズという格上に何故が磔の死んだはずの前大帝。カオスにもほどがある。ここから生きて帰れるのか)
苦しい状況だ。そんな状況でライガvsクルーズが始まる、、、、のか?
ブックマークと下記の評価して貰えると嬉しいです。




