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幻波界  作者: 石野颯希
3/6

第三話:真波界

結界を抜けた先──

そこには、昼と夜、光と闇が共に息づくような幻想的な空と、

どこまでも広がる、深く静かな空間が広がっていた。


見渡す限り、人の気配はどこにもなく、静寂と、ほんのり漂う寂しさだけが、

ただただこの世界を満たしている。

気が遠くなるほど広大無辺な草原がどこまでも続き、

ひと筋の獣道が、その草原を切り裂くように真っ直ぐに伸びていた。


その先に──ポツンと、孤独にそびえる塔。

時の流れすら拒むかのように、ただそこに存在し、

その孤高の姿は、この広大な空間の中で異様なまでに目立っている。


──緑の光は、その塔から放たれていた。


光は塔の頂から真上へとまっすぐ柱のように伸び、

やがて空中で拡散し、空気そのものを震わせるように広がり、

まるで、周囲の空間そのものに命を与えているようだった。



挿絵(By みてみん)



こんな光景は、初めて見る……気がする。



カコ──…ン


──また、あの音だ。

さっきよりも、ずっと大きく響いている。


音の出どころは──あの塔の中のようだ。


結界に触れたときにも聴こえた、あの音。

きっと何か意味があるはずだ。



……よし。


まずは、あの塔を目指そう。

他に行けそうな場所も…見当たらないし。



ときおり吹く風が、どこからともなく金木犀の香りを運んでくる。

そのやさしい匂いに包まれながら、ゆっくりと塔へと歩みを進めた。


心の奥が、また──ザザーッと揺らぐ。


 


塔は、大きな岩を無造作に積み上げた土台の上に建っていた。


階段を、30段ほど登り、やがて塔の入口にたどり着く。


ウォー……ン  ウォー……ン


扉はない。

中からは、強い緑の光とともに、人の呻き声とも動物の鳴き声ともとれるような

不気味な機械音が漏れ出ている。



……なんか怖いな…


一瞬躊躇するが、意を決して

恐る恐る──その足を、塔の中へと踏み入れる。


 


──これは……なんだ……?

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