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希望

 

 

「そのことですが、何も心配することはありません。すでにグラディス姫とご相談済みです」 

 

 

 セダムはにっこり笑って言った。

 

 

「は? 」

 

 

「ドレスについては、こちらからご招待させていただくので、グラディス姫からプレゼントさせていただきます。

 

 マナーや礼儀については、ルミア殿のご都合よい時に、私がお迎えに参りますので、お城にて数日かけて、侍女がご指導させていただきます。

 

 

 それから、実はグラディス姫は幼い頃に、平民に混じって暮らしていたことがあります。

 

 その時の大切なご友人方を招いての、本当に破格のくだけたお茶会ですので、身分をお気になさることはありません。

 

 

 そしてもうひとつつけ加えると、私自身、今は爵位をいただいておりますが、もとは平民でございます」

  

 

 

「えっっ!! 」

 

 

 こんな素敵な方が、もとは平民だったの!?

 

 

 

「ルミア殿」

 

 

 セダムはルミアの前に片膝をついて跪いて、ルミアの手を取った。

 

 

 

(わわっ…! な、なに…?! )

 

 

 ルミアはセダムの手の中から、自分の手を引っ込めようとしたが離れなかった。

 

 

 

「お茶会までのあいだ、すべて私がサポートいたしますので、何も心配することはありま  せん。不安なことがおありでしたら、何でも仰ってください。

 

 あなたがいらしてくれたら、きっとグラディス姫はお喜びになります」

 

 

 そうしてセダムは、ルミアの手の甲に、そっとキスをした。


 

 

 

**********

 

 

 

 

 その日の夜、ルミアは自分の手を何度も見つめた。

 

 

(あの方が、私のこの手にキスしてくれたなんて…! )

 

 

 

 思い出すたびドキドキして、胸が幸福感でいっぱいになる。

 

 あれほど、荒れていてみっともないと思っていた自分の手を、愛おしく思える気がした。

 

 


 

 あのあとセダムは、花屋の女将さんやレナたちに、事情を説明してくれた。

 

 そしてグラディス姫のお茶会のために、ルミアがお城へ通うことも、正式に決まった。

 

 

 

 セダムは帰り際、もうひとつグラディス姫から預かったという小さな包みをくれた。

 

 

 開けてみると、小さな容器に入ったクリームだった。

 

 とても滑らかで、爽やかな香りがした。

 

 

 手につけるとすーっと肌になじんで、つるつるになる。

 

 

 

 ルミアは、セダムがキスしてくれた手を愛おしむように、そのクリームをつけた。

  

 またあの人が、ルミアを迎えに来てくれる時を待ちながら。

 

 

 

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