龍眼薬
「ただいま戻りました」
宿に戻った頃にはもう日は暮れていた。
「おかえり〜〜!お姉ちゃん!」
「ただいまベルちゃん、お土産どうぞ」
ベルちゃんにドーナツのようなお菓子をお土産に渡す。
今日の夕食はフトマルウシの炒め物と野菜とテールのスープをいただいた。
なんだかだいぶ薄味にも慣れてきている。
部屋へと戻る。
「さてと始めますか」
部屋を懐中魔光灯で照らす。
老紳士から受け取った革袋をアイテムボックスから出し、素材を取り出していく。
「魔石[大]デカいな」
大きさと形はラグビーボールのような感じだ。
「龍眼…意外にもヌルッとはしてないな」
ボーリングの玉サイズで質感はエナメル。黒目の部分が虹色に見える。
「コレが夜の雫」
青い山百合のような花だ、ほのかに発光している。
「よしっ薬術[浮遊]発動」
素材を浮かばせる。
「目的の薬に必要な成分だけを薬術[抽出]で抜き取る」
素材から発光した必要成分が出てくる。
「次は最高の比率で混ぜ合わせる薬術[合成]」
抽出した成分同士が回転しだし最高の比率で混ぜ合わさっていく。
アイテムボックスからガラス瓶を取り出す。
合成が終わり、ガラス瓶にいれる。
「ふぅ…できた。コレが目を治す薬[龍眼薬]か」
目を治す薬[龍眼薬]は黄金色の液体だった。
「あと1つやる事があるんだよな。これは点眼薬だから…」
ガラス瓶をスキル[薬瓶作成]で目薬の形に変形させる。
「完成[龍眼薬]!」
コレが効いてくれればいいけど…
×
翌朝。
ベルちゃんに起こされる前に起床し、早めに中央広場に行くことにする。
「……もういるし」
遠くからでもわかる。
老紳士が俺のいつもの露店場所に立っていた。
ダグさんはまだ来ていないようだな。
「おはようございます、お待たせしてしまいましたか?」
「いや、気にしないでくれ…これは私の逸る気持ちを抑えきれなくて早く来てしまっただけだよ」
「そ、そうですか…」
手に持っていた[龍眼薬]を差し出す。
「こちらが目を治す薬[龍眼薬]です」
「[龍眼薬]これが……目を治す…なんと美しい輝きだ」
老紳士は感動した感じで[龍眼薬]を手に取り見惚れている。
「そちらは飲み薬ではなく点眼薬です。その容器は尖端を下に向けると一滴づつ出る仕組みになっておりますので、寝る前に両目に一滴づつ垂らしてください」
「なんと…目に垂らすとはそんな薬は初めてだな」
スキル[薬学[極]のレシピにはあるのに初めてとは…もしかして、もう忘れられた薬とかなのかもな。
「感謝する。そうだ料金はいくらかな?」
あ、そのこと忘れていたな。
「目が治りましたら頂戴できたらと思います」
値段決めてないからとりあえずはこれでいいか、老紳士なら払わないとかはないだろう。
「わかった。治ったら存分に払おう。では今日は失礼するお嬢さん」
去る姿も紳士だな。
誰を治すのかわからないけれど治ってくれたらいいな。