魔導具店と作成
「ここが魔導具店か」
杖とハンマーが彫られた木の看板にすこし古びたレンガと木造の建物。
魔導具店の前まで来ていた。
「どんな魔導具があるのか、安い材料がないか見てみよう」
どうにか金貨3枚くらいで収まればいいけど。
そう思いつつ魔導具店内に入る。
ランタンのような魔導具が沢山ぶら下がっている。
棚には小物系魔導具、床には大きめな魔導具が置かれており
奥のカウンターには年季の入ったおじさんが座っている。
「魔石が売ってる…極小で銀貨5枚か」
棚に魔石が置かれていた。
極小で銀貨5枚、小で金貨1枚、中で金貨5枚、それ以上の大きさは置かれていない。
「極小しか買えないな」
魔石の前に何を作ろうかという問題である。
「数からしてランタンが基本なのかな?」
店内で一番多いのはランタン系の魔導具のようだ。
方位磁石の魔導具も結構ある。
あと革袋、あれは魔石の魔力があるかぎり水が出るという仕組みの魔導具。
「ようは冒険者の為になる魔導具が売れ筋のようだ」
棚を見て歩いていく
「コレがライラ石、ランタンの魔導具の光源になってる石か」
手のひらに収まるほどの大きさの緑色の石を手に取り眺める。
この石に魔力を流すと緑色に光だし当たりを淡く照らすらしい。
お値段1個銀貨5枚なり。
「ただランタン作るだけってのもつまらないよな…何か工夫したいな」
スキル[魔導学[極]と[工作[極]あとはアイデアがあれば工夫はできるはず。
「なんだアレ、鉱石が積んである」
カウンターの近くに樽に入れられた鉱石の破片が山のように積んである。
「あの、これ何ですか?」
「ああ〜…それかいソレは魔導具制作で出た余り物さ、もう使い道がなくてね。だけど捨てるのももったいなくてね、ザル一杯で銀貨1枚だ。どうだい?」
適当に掴み見てみると…
「これは…銀…ヒース石…ロロ鉱石…小さい破片だけど全部魔導具の材料だな」
いけるかも。
そう感じる。この店主の力量ではこの小さい破片はもう使い道がないのだろう。
でも俺のスキルがあれば…
「ザル2杯分もらうよ」
「ははっ!もの好きだね兄ちゃん」
ザル2杯分の鉱石の破片を買う事にした。
なるべくレアな鉱石を見極めて入れていくようにする。
そんな時だった。
一つの黄色い鉱石に目が止まる。
「プラスル鉱石…魔力増幅効果ありか」
この増幅効果を上手く使えばランタンじゃない物を作れそうだ。
プラスル鉱石を集中的に集める。
「兄ちゃんはプラスル鉱石が好きかい?」
「はい、黄色くて綺麗なのでアクセサリーに加工したらいいかなと」
適当に誤魔化しておく。
「こんなものかな…あと魔石[極小]も2つとライラ鉱石を買ってから、その他の必要な物もと」
こうして店主に少しまけてもらい総額金貨3枚ぴったりの買い物をした。
×
「おかえり〜!お姉ちゃん!」
女性カエデに変わり宿に戻る。
ベルちゃんに甘さ控え目のお菓子をプレゼントして、部屋に戻る。
「さて初魔導具作成してみるか」
魔導具の中身は電子回路に似ている。
まずは基板に似た魔導板作りからだ、ザル買いした鉱石の破片を魔工陣の中に置く。
魔工術[浮遊]で硬さと柔軟性があるロロ鉱石だけを浮かばせる。
「結構な数あるな」
魔工術[融合]を発動し破片のロロ鉱石を一つにする。
たぶんこの[融合]は普通の魔導具師には使えないのだろう。
「混ぜ合わせるの難しいな…頭の中がチリチリする」
なんとか融合成功。こぶし大のロロ鉱石ができた。
ロロ鉱石を魔工術[錬成]でロロインゴットにすると不純物は下に落ちていく。
魔工術[成形]を発動してロロインゴットを長い板状に成形した。
ライラ鉱石も球体に成形。
成形したライラ鉱石を板の先端に[融合]でつける。
次は魔力伝導性の高いヒース石を[錬成]でヒースインゴットにし[成形]で糸状にする。
板に魔石を設置する場所とライラ鉱石を付けた箇所を結ぶように線を融合する。
「電子基板にある電気を通す線の模様みたいだな」
プリント基板に似ている。
銀を[成形]して小さい円柱にして魔工術[指示]を刻む。
「えっと、最初に1秒間触った時に魔石の魔力をライラ鉱石に流すON、次に3秒間触ったら魔石の魔力を流すのを止めるOFF…これでいいのかな?」
上手く[指示]が刻めたようだ。
銀を魔石とライラ鉱石を結ぶ融合したヒース鉱の線の真中に設置する。
魔石を取り外しできるように設置する場所を爪金具のように加工し魔石をはめた。
プラスル鉱石をこれも[融合]で集め、[錬成]でプラスル結晶にし[成形]で小さい長方形にしたあとにライラ鉱石の少し下に設置。
またロロインゴットを[成形]して真ん中に穴の空いたお椀型の反射板にする。
真ん中の穴にライラ鉱石をはめる。お椀が上を向く形だ。
最後に魔工術[安定]をかける。
「ふぅ…これで中身の魔導回路は完成だ」
外側は破片の山からヒルト鉱石を選ぶ。
[錬成]したヒルトインゴットは鈍い黒鉄色で頑丈な金属となる。
魔工術[成形]で魔導回路を包み込み成形していく、形のイメージは懐中電灯である。
魔石がある部分は魔石が交換できるようリモコンの電池の蓋のように加工。
ライラ鉱石も定期的に交換する必要があるので蓋を作る。
ガラス部分は光水晶の破片を[融合][成形]で作り
蓋はスクリュー式にした。
「これをはめれば……できた魔導具第一号[懐中魔力灯]だ!」
さっそく試してみよう、銀で作ったスイッチにふれると
「おお!明るい!光は緑だけど懐中電灯だ!」
部屋の中が緑の光に染まる。
LEDライトに近い光の強さ、これならかなり先を照らせそうだ。
壁に向けて使えばランタンのようにも使用できるだろう。
「つかれた…魔導具を作るのは神経を消耗するな」
スイッチを何度かONとOFFを繰り返し動作確認。
問題なし。
「あとはどれくらい保つかだな」
とりあえず一晩つけっぱなしにしてみる事にした。
隅の方に立てかけておく。
「寝るか….」
緑の光に満たされた部屋の中で眠りについた。