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死にかけたら闇属性魔法で命をつながれて割と困ってしまう話(仮)  作者: タイトルや名前を付けるのにとても迷う人
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序章

「sacrifice」


目の前に魔物の鋭い爪が迫ってきたとき、恐怖よりも安堵感が勝った。




戦闘も長引き、部隊の先陣で攻撃魔法を使いつつ、かつ補助魔法を多くの他の団員へと惜しげもなく使っていれば、さすがに魔力量に長けた魔法騎士団の副団長と言えど、シールド魔法を張る余力はもう残ってはいなかった。

他の団員が叫ぶ声を聞きながら、自らの胸元の肉へと食い込んでゆく異物の存在を感じる。死ぬ瞬間は不思議と痛みはないものなんだな、と冷静な頭で考える。否、冷静というよりも状況が飲み込めていないだけかもしれない。

ぽきり、と軽い音を立てて自らのあばらの折れる音を聞いたとき、魔物の横っ面をぶん殴るかのように爆発が襲うのを見た。あれはおそらく団長の炎魔法だろう。まだこれほどの威力を放つことができるとはさすが魔法騎士団団長リオン・スカーレッドだ。自分がいなくてもあの人がいる限り、魔法騎士団は安泰だろう。爆発の勢いで緩んだ手から身体を放り投げられるが、受け身を取る余力はもう残ってはいなかった。


「エストラル!!!!!」


直前に彼にかけた防御魔法はまだ機能しているだろうか?リオンの怒号を聞きながら叩きつけられる衝撃に備えたが、どうやらうまい具合に低木の茂みに投げ出されたらしい。ばきばきっと枝の折れる音はするが、もはや体の感覚はなかった。低木はどうやらピエリスの木であるらしかった。ちょうど花の時期らしく、鈴なりの小さな白い花たちが目に入る。

まるで星みたいだ。戦場には似つかわしくない、ひそかに咲いていた花たちの安息を邪魔したことを申し訳なく思いつつ、遠のいてゆく意識を抗うことなく手放そうとする。

胸元からは魔物によってあけられた大きな穴から絶えず真っ赤な血液が吹き出している。

そこにぽとり、ぽとりとランプ型の白い花が落ちては赤く染まっていった。



これで私の物語は終わり。

ちっぽけな星屑のような終わり方でした。













「……死なせません。」

締めくくりの言葉を浮かべていたにもかかわらず、闇の中ではっきりとそういわれたような気がした。

その言葉を理解する前に、ひどく凶暴な眠気がエストラルを襲った。

もういいよ、眠らせてよ。

その言葉を最後に、エストラル・ホワイトはその人生に幕を閉じた。

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