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第二の人生への過渡期~初めて救急車を呼んだ出来事~  作者: 夏目 碧央


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「すみません」より「ありがとう」

 新大阪駅に着いた。地図によると、ホテルは北口付近にあるらしい。

 新幹線を降りてエスカレーターで改札階へ上がり、出口の方へ向かっていると、1人の男性が、カシャリと写真を撮っていた。何を撮ったのかなと思ってそちらを見ると、「551」だった。肉まんや焼売のお店。あ、豚まんか。いつも行列が出来ている551だが、流石に平日の朝には女性が2人買っていただけ。そうか、せっかく来たからこれを買って帰るのもありかも。

 改札機に切符を2枚とも入れて出た。南口だ、中央口だと書いてあるけれど、北口の表示はない。方面的にこっちだろうと、御堂筋線の方へ行ってみる。

 エスカレーターが出てきて、ふいに気づく。ここが異郷の地である事を。皆さんがぴっちり右側に寄って立っていたからだ。関東は左側に並ぶではないか。そして、東京から新大阪に着いたそのホームから上がるエスカレーターは、まだ皆さん、うっかり左側に立っているのだ。何しろ、さっきまでそうだったから。だが、御堂筋線だとか他の在来線やらデパートなどのエスカレーターでは、大阪の人は右に立つ。片側を空けるのは良くない事なのだが、それでも、こういう地域による違いは面白い。

 次男から「今どこ?」などと連絡が入る。ホテルに着いたらLINEしてと。幸い思った所に出られた。ホテルまではスマホの地図を見ながら行った。

 ホテルに着いてLINEをすると、3階に上がってこいと言う。エレベーターで上がっていくと、副校長先生と次男が座って待っていた。

「遠い所、本当に申し訳ありません。ありがとうございます。」

副校長先生は、深々と頭を下げた。女性の先生である。腸閉塞は手遅れになると大変な事になるから、早めに東京へ行ってかかりつけの病院に行った方がいいという事で、迎えに来ていただく方がよいと判断した、という話だった。色々話したが、先生は何度も深くお辞儀をした。

「こちらこそ、たくさんお世話になりまして、ありがとうございます。担任の先生にもよろしくお伝えください。」

と、私も言ってお辞儀をした。こういう時、つい「ご迷惑をおかけして、申し訳ありません」と言いがちなのだが、それは努めて言わないようにした。少なくとも次男の前では。最近こういう話をよく耳にする。すみません、と言いがちだが、ありがとうと言おうと。そうしないと、自己肯定感が低くなるらしい。自分は人に迷惑をかける人間だ、と卑屈になる。今の場合、次男が迷惑をかける悪い人間という事になってしまう。

 もし、悪い事をして補導されたなら、ご迷惑をおかけしてすみません、なのだ。だが、病気になったのは悪い事をしたのとは違う。確かに余計な手間を掛けさせたり、心配を掛けたりしただろう。けれども、それを全てありがとうの言葉でお返ししたい。部のマネージャーさんにはご迷惑を……と言ってしまったけれど。やっぱり先生とお友達とでは違うという事かな。

 副校長先生は、次男と色々な話をしていたらしく、ご家族に愛されてますねと言っていたが、そこで、

「社会人になったらそうはいかないよ。」

と言っていたのがちょっと引っ掛かった。そんな不安をあおるような事を言うべきなのかどうか。親が助けてあげられない時に、何とか頑張ればいいのであって、助けてあげられるのに助けないで自力で何とかさせるのがいいのかどうか。もちろん過保護はダメだが、病気の時はどうなのか。

 私は1人で何とか出来る人間になって欲しいというよりも、困っている人を助けられる人になって欲しい。困っている事に気づいてあげられる人になって欲しい。今のところなっていない。次男は私が寝込んでいても、自分の事をやっていればいいとばかりに何も気を遣ってくれないから。まだ子供だとも言えるが、もっと成長してもらわないと困る。だが、突き放すのではなく、気づかせたい。


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