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ある農業学者の最期の言葉

因果関係があるか、自信はないんだ。

でも、やった後悔よりもやらなかった後悔を恐れよう。

前と同じだ。

 看板は旅券のないオートマタが来ることができるギリギリの東端であることを示していた。

 ×が描かれていて、その下に悪いオートマタが下敷きになっている。

 悪いといっても、詐欺と窃盗がせいぜいだ。

 ノースエンドの東には泥炭地が散らばっている湿地帯が広がっている。

 道路はまっすぐ東へ伸びていて、暗く蒼白い雲がのしかかる地平線へと消えていた。

 午前五時半。

 ガルが待っているのは朝の光でもないし、郵便自動車でもない。

 風だ。

 模造皮膚も内部構造も吹き飛ばすほどの風。

 風が見える。

 地表の草むらを押しつけ、撫でつけながら、こちらに来る。

 人工知能が風に受ける影響を人間は過小評価している。

 オートマタだって、何かの行動に踏み出す勇気を外的刺激から受け取りたいと思っているのだ。

 風がびゅうびゅう唸っている。

 鼻先までせまった風の壁に向かって叫ぶ。

 知恵に擬態したしがらみ。

 倫理に擬態したあきらめ。 

 みんなみんな吹き飛ばしてくれ!

わかっている。

正解ではない。

ただ、――畜生――ほんの少し、砂漠を緑に変えるだけだ。

                       ――ある農業学者の最期の言葉


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