41)エドワルドの決意
エドワルドは、ベルンハルトに手を引かれ、また真っ暗な中を歩き、ベルンハルトの執務室に戻った。会わせてもらえなかったけれど、エドワルドに不満はなかった。ルートヴィッヒはエドワルドを大切に思ってくれている。アリエルが大変な今、エドワルドに出来ることは、ルートヴィッヒに心配をかけないようにすることだ。
「エドワルドのせいではないよ。大切なのは、実行した犯人、命令した黒幕を捕まえることだ。悪いのはその連中だ。それは私とルートヴィッヒの仕事だ。エドワルド、お前は自分の身を守りなさい」
「はい」
ベルンハルトの言葉に、エドワルドは頷いた。エドワルドは護衛騎士を連れ部屋に戻った。その時、気づいた。
あの日、エドワルドの部屋に、報告を受けたベルンハルトが血相を変えてとんできた。本当に無事かと何度も聞かれ、体のあちこちを触られ、抱きしめられた。そのあと、ベルンハルトは竜丁のために必要な薬草を回せと命じていた。
だが、同じ報告を受けたはずの母シャルロッテは来ていない。確かに、母とは王家が関わる行事でしか顔を合わせないに近い。エドワルドはシャルロッテの権力の源である王子だ。気遣いがあってしかるべきだ。王妃である母シャルロッテは、側室もいないのに、王の寵愛を失っている。王子の母という以外、後宮に存在意義がない。
王子を襲うにしては手緩いと、父達は言っていた。では、王子ではない人を襲うならば、どうなのだろうか。
もし計画が最初から王子でなく竜丁を狙っていたら、命じた人物は、王子の身の心配をするだろうか。国を守るのに必要な竜を怒らせるに決まっている竜丁殺しを計画するなど非常識の極みだが、可能性はある。
翌日、エドワルドはもう一度、ベルンハルトへの面会を申し込んだ。
ベルンハルトに人払いを願い出た上で、エドワルドは、昨日、胸に浮かんだ懸念を口にした。
「エドワルド。賢くなったね。お前が自分で気づくとは。だが、これは、今のところ、私達、二人だけの胸の内に秘めておくべきことだ」
ベルンハルトはエドワルドの頭を優しく撫で、抱きしめてくれた。




