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34)変化2

「団長と陛下がご兄弟なのは知っていました。エドワルド殿下も自由においでです。だから、団長と陛下が、どっちが王様になるかで、貴族がもめていたなんて言われても実感がないです」

平民出身の彼らにすれば、当然だろう。


「彼らは、自分たちに都合が悪い方の王子を、刺客を使って殺そうとしただけだ」

「貴族が、王族殺すんですか」

「私は庶子だ。彼らは私を王族とは認めていなかった。平民が王位継承権を持つなど分不相応というのが彼らの考えだ。今は、王族から籍を抜き、王位継承権も放棄した。正真正銘王族ではなく、王位継承権もない。王都竜騎士団団長として、団長に与えられる北の領地を持ち、爵位を与えられている。慣例では伯爵だ。だが、国王陛下の兄弟が伯爵では、問題だということで、例外的に侯爵だ。これには反対はなかったらしい」

「つまり、王様になるなら殺すけど、伯爵はふさわしくないから侯爵にするということですか」

「そうだ」

「貴族って何考えてるかわからない」

「俺、あとで護衛騎士の誰かに、説明してもらいたい」

護衛騎士の大半が、跡を継げない貴族の子弟だ。平民の多い竜騎士と違い、貴族社会について護衛騎士達はよく知っている。


「当時、私についた護衛騎士はすべて死んでいる。今の護衛騎士はほとんどが、騒動が終わった後に護衛騎士になった者だ。どこまで知っているかはわからない」

ルートヴィッヒの言葉に、沈黙が落ちた。


 護衛騎士達との手合わせの機会もあり、彼らの腕も知っている。貴人に仕える苦労も聞いている。それが全滅するような状況で、彼らの敬愛する団長が育ち、生き延びたことを実感した。


 地方とはいえ貴族のヨハンは、驚いた風もなく、他の竜騎士たちにわかるように質問した。

「団長、つまり、ハインリッヒ副団長を置くのは、やましいことがないから、団長の行動が、団長を快く思わない貴族に筒抜けで構わないからということですか」

「そうだ」

「副団長である理由は何ですか」

「別に、お前たちの誰かがハインリッヒを上回るのならば、副団長は入れ替わる。王都竜騎士団は国王陛下の剣と盾。団長の私に何かあった場合、副団長が代わって指揮する。副団長に必要な基準を満たしているハインリッヒの実力を、私は評価しているだけだ」

貴族として教育を受けてきたハインリッヒと、商家で教育を受けてきたリヒャルトはどちらも優秀だった。


「それより、ヨハン、地方貴族である君の実家は中立だったはずだ。前も聞いたが、本当にここにいてよいのか。ご両親が心配されるなら、他への異動もできる。西に貴族の子弟が多いのはそのためだ」

「私は勘当された身ですので」

「ここに所属を変わる時に、勘当されたのではなかったか」

「はい。転属希望を父に告げたら、即座に勘当されました」

「君のご両親は、家を守りつつ、君の自由にさせるために勘当したのだろうが。今のままで良いとは、私には思えない」

「家は兄が継ぎますから問題ありません。それに、あの、ここにいたいです」

突然頬を染めたヨハンに、ルートヴィッヒは首を傾げた。


「ヨハンは、王宮の侍女と良い仲ですよ」

ハインリッヒが理由を言った。

「おまえ、なんでそんなこと」

「貴族であれば、それくらい知っていて当然だ。団長がそういったことに関心がなさすぎるだけだ。彼女は、他の侍女の評判も悪くないそうだ。婿入りしてくれる貴族を探している。子爵家の長女だからいいだろう」

「お前、どこからそんなこと」

「それくらい知っておくのが貴族の嗜みだ」

「残念ながら、ハインツの言う通りだな。ハインツ、その女の家の派閥は」

「侯爵派です」

「え、それでは」

「別に私は構わない。言ったはずだ。やましいことなどない。貴族の目が一人から二人になっても私としては変わらない。だが、お父上にそれとなく一度聞いておけ。あの時代、中立派であり続けるのも、それなりに苦労したはずだ」

「いえ、それは大丈夫です。父は、持病があって、王都に参上することもできない、病弱な地方貴族でしたから」


 快活に笑う体格の良いヨハンの父が病弱だという話に、周囲が首を傾げた。

「父は、狩りの時だけ元気になるので、よく、子供のころから狩りには連れて行ってもらいました」

仮病と、皆が察した。

「貴族って大変だな」

平民出身の竜騎士達は顔を見合わせた。



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