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20)朝は来る1

 結局、ルートヴィッヒは、ほとんど眠れなかった。


 会いたかった。空が白み始めたころ、思いついて竜舎にいった。トールは、面倒くさそうにしたが、ルートヴィッヒが中に入っても、追い出したりはしなかった。アリエルに会いたかった。アリエルは、早朝、竜舎を一通り掃除する。


 うつらうつらしていると、聞きたかった声が聞こえてきた。竜に一頭ずつ挨拶しながら、何やら楽しそうにしゃべっている。転がるように笑う声が聞こえる。


「ヴィント、おはよう。昨日のハインリッヒ様、面白かったわよ。国王陛下がいらっしゃったの。国王陛下がね、団長様相手に構ってほしい子供のようでいらしたわ。ハインリッヒ様は、見てはいけないものを見た。なんておっしゃってたの。貴族のハインリッヒ様からしたら、威厳をお部屋に忘れてきた陛下のご様子は衝撃だったみたいよ。私は面白かったけど。からかわれている団長様がかわいそうだったわ。兄弟って不思議ね」


 アリエルは、竜達が尻尾で集めておいた寝藁を、ピッチフォークで集め、外に積んでいく。その後でまとめて運び出す。ルートヴィッヒは、新月の前後はどうしても部屋で眠れない。刺客におびえていた子供のころと同じように、トールと一緒に眠る。その翌朝は手伝ってやっているから、アリエルの朝の予定は知っている。


「トール、おはよう、あら、団長様、お休みかしら」

アリエルの声が小さくなった。

「昨日、陛下をお送りしたあと、遅かったのかしら。昨日、新月じゃなかったわよね。ハインリッヒ様が、お兄様と大喧嘩していた時のようだっておっしゃったから。喧嘩になってやしないかって心配だったけど、大丈夫よね」

アリエルの気配が近くなり、そっと顔を覗き込んできた。アリエルの息がかかる。顔を寄せてきている。ルートヴィッヒは必死で目を閉じ、穏やかな呼吸を続けた。

「殴り合いとか、もう、子供じゃないから、なさらないわよね」

ルートヴィッヒはベルンハルトを殴っておけばよかったと思った。


「また来るっておっしゃっていたわ。別に構わないけど、いいのかしら。陛下が、団長様をからかって遊ぶのはやめていただきたいわ。団長様、可哀そうだもの」

ふっと気配が離れた。

「後で来るわ。トール、団長様きっとお疲れだから、寝かせといてあげてね」


 軽い足音が遠ざかっていく。

「フレアもおはよう。昨日ね、リヒャルト様、エドワルド殿下をお部屋までお送りになったの。普段と違って、ちゃんと竜騎士様って顔しておられたから、ちょっと凛々しかったわよ」

そのあとも色々、竜達に話しかけながら掃除をしていく。そのアリエルの声が遠ざかっていく。自分を気遣ってくれたのがうれしかった。


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