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15)兄と弟1

 ベルンハルトの襟首は早々に解放された。ルートヴィッヒに追い立てられるようにして、ベルンハルトは自室に着いた。


「陛下。兵舎は貴人の警備に適さない場所だと以前より申し上げているはずです。(まと)になりたいのですか」

ルートヴィッヒは作法通り跪いている。自室のソファに座っているベルンハルトのほうが、視点は上にある。ベルンハルトは、ルートヴィッヒが放つ威圧に蹴倒されないよう、気を引き締めていた。


「御身のご安全をまず、第一に考えていただきたい」

「その目の下の傷がなければ、君の言葉に説得力はあるのだろうけどね。ルーイ」

ルートヴィッヒの左目の下の傷は、ベルンハルトを庇ってできたものだ。


「あの辺りは、竜騎士が飛び立ちやすいようにできています。貴人の警護には適していません」

ベルンハルトの言葉を無視して、ルートヴィッヒは続けた。

「酷いなぁ。ルーイ。僕の言葉は無視するの」

「陛下、お戯れはおやめください。どうか、御身を大切になさってください。国王陛下はあなた一人であり、あなたのお世継ぎは、エドワルド殿下ただ一人なのです」

ルートヴィッヒの声には、真剣な響きがあった。


「君がいるところが、一番安全だと私は思うけどね」

ベルンハルトの言葉に、ルートヴィッヒはゆっくりと首を振った。

「私の周囲で、当時、何人もの護衛騎士が死んだことを、陛下もご存じのはずです。彼ら刺客相手では、私一人ですら、生き延びられるかどうか。確かに当時、陛下のご尽力もあり、辛くも逃れ、今があります。次はわかりません。どうか、御身をお大事になさってください。もし、万が一のことがあれば、まだ幼いエドワルド殿下に重責を担っていただくことになります。御身御一人の問題ではないのです」


 聞き分けのない子供に語るように、ゆっくりと語るルートヴィッヒの声は二人きりの部屋に響いた。

「その場合、君はエドワルドを支えてくれるだろう」

「無論、力の及ぶかぎりは。ですが、そのような事態にならないように、陛下はどうか御身を大切になさっていただきたい」

わずか数日先に生まれただけの異母兄であるルートヴィッヒの真剣な視線を、異母弟のベルンハルトは受け止めた。


「気をつけているつもりだったけれど。君からしたら危なかったのだろうね。すまない」

「お分かりいただけたのであれば、結構です。今後もどうか、軽率な行動はお控えください」

ルートヴィッヒが放っていた威圧感が消えた。慣れているベルンハルトも、あまりさらされたいものではない。

「本来ならば、エドワルド殿下もお断りすべきなのですが」

ルートヴィッヒは溜息を吐いた。


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