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12)エドワルドの父2

 食堂にやってきた竜騎士達は、入り口で一度硬直し、普段、肖像画にしているようにその人物にお辞儀をした。団長の両隣、普段は副団長達が座っている席には、護衛騎士のふりをしているベルンハルトと、エドワルドが座っていた。座る椅子が無い護衛騎士達は、警護も兼ね、廊下や外に立っている。


「仔細は気にするな。常通りでよい。あくまで今は、エドワルド殿下が一緒にお食事をされたいとおっしゃったため、同席しておられるだけだ。護衛が一人、席に着いているが気にするな」


 その護衛の存在を、一番気にして苛立つルートヴィッヒが言っても説得力が全くない。アリエルはいつも通り各自に食事を配り、外や廊下で、物欲しそうに厨房を窺っていた護衛騎士達にも分けてやり、自分の席に着いた。

  

 食前の祈りを済ませ、皆が一斉に食べ始める。お代わりを期待する視線には、先に鍋をひっくり返して、何もないことを示しておいたから、全員が自分の分の一杯を味わいながら食べていた。


「殿下、お伺いしますが、本来殿下が召し上がるべきお食事は、今日はどうなっているのですか」

ふと思いついてアリエルは聞いてみた。

「あぁ、今日は、父上と私はお忍びで、城外へ出かけている。だから、ちゃんと断ってある。竜丁は、食事や、作った人の労力が無駄になると怒るからな。ちゃんとしてきたぞ」

エドワルドは胸を張った。


「それはちょっと安心しました。せっかく作ったものを食べてもらえないのは、悲しいですからね」

王宮には、専門の料理人がいるのだ。アリエルの腕前では及びもしない料理人が料理にかけた時間や手間、その食事が無駄になっては惜しい。


 会話はそこで終わった。食堂は静かだった。食事をしていたアリエルは厨房のほうに注意を向けた。そろそろいい頃合いだ。


 厨房で鉄板の上を確認すると、思った通り、余熱でうまく調理できていた。

「皆さん、お代わりはありませんが、別のお楽しみがあります。食べ終わった人から、食器持ってきてくださいね。一人一個ですよ」

アリエルの声に、食堂が騒がしくなった。


 外で食べていた護衛騎士と目が合った。

「ありますよ」

嬉しそうに笑った彼の椀に、厚めに切ってゆっくり火を通した玉ねぎを入れ、トマトと香草で作ったソースをかけてやる。

「熱いですから、気を付けて下さい」

「ありがとう」

小さく言って受け取ると、彼は美味しそうに食べ始めた。


 護衛騎士も竜騎士も、それぞれやってきて、受け取って席に帰っていった。エドワルドに連れられ、ベルンハルトが自分で椀を持って来たのには、アリエルも驚いた。最後に、ルートヴィッヒが来た。

「お前の分はあるのか」

「味見しましたし、私は小さいですから、皆さんほどは食べられません」

「そうか」

「突然、すまなかった」

「いいえ。団長様のせいではありません。それに少しは考える時間もありました。ここは食材も豊富ですし。なんとかなったでしょうか」

「あぁ。よくやってくれた。ありがとう」

「お気遣いなく。そうおっしゃっていただけますと嬉しいです」


 ルートヴィッヒの椀にも、他と同じように入れてやった。

「少し、余りましたけど、念のため余分にと思ったにしては、多く余りましたね。どなたかいらっしゃってないのでしょうか」

アリエルは首を傾げた。

「食堂は全部食べていたぞ」

ルートヴィッヒの言葉に外を覗いたが、外の護衛騎士達は皆食べたと合図してきた。余ったならお代わりが欲しいと、顔に書いてあったようだが、アリエルは無視した。


「廊下の方かしら」

廊下を覗いたアリエルは驚いた。


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