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15)兄と弟1

 王都竜騎士団団長ともなると、謁見用の衣装にも装飾が増える。有事に体の切れが悪くなる衣装に、ルートヴィッヒは不本意ながら身を包んでいた。

「ラインハルト侯から、謁見を申し込んでくるなど珍しいこともあるものだね」

「陛下」


 子供のころは、次期国王と、それを支える庶子の兄弟として、一緒に学んでいた。ルートヴィッヒが刺客に追われていたとき、ベルンハルトに匿ってもらったこともある。逆に、刺客に襲われて足がすくんだベルンハルトをルートヴィッヒが叱咤し、二人で逃げたこともある。


 ルートヴィッヒが王族から籍を抜き、竜騎士となると決めた時、ベルンハルトは反対した。ルートヴィッヒは、ベルンハルトが国王となることに自分が障害にならないようにしただけだった。ベルンハルトは竜騎士見習いの修行中にルートヴィッヒが事故にみせかけて殺されることを恐れた。お互いに、どうしてわかってくれないと、取っ組み合いの大喧嘩となった。その結果、表向きには、二人は喧嘩別れしたことになっている。


 お互いに距離を取っている風に見せかけたほうがいい。そういう結論に達した二人は、国の政治と兵力をそれぞれ手中に収めることにした。貴族達が派閥争いをしている間に、二人でこの国を治めようと、約束した。二人の計画は、今も道半ばだ。残念ながら、国王の母の実家である侯爵家が現王妃の実家である伯爵家の後ろ盾となり、強大な権力を未だに維持していた。


 若い王であるベルンハルトは、その権力を借りなければこの国を維持できない。大きすぎる侯爵家の権力を、この国の内政を乱さずに、削ぐ方法を見つけあぐねていた。


 王都竜騎士団団長であるルートヴィッヒは竜騎士すべてを束ねているが、兵力となると、その他の兵士のほうが多い。頂点に立ち、最強と讃えられるが、国王の数日違いの兄でありながら、母は道端の花でしかなく、行方すら知れない。大貴族の血縁である竜騎士もいて、貴族との柵も多く、軍事力を掌握出来てはいない。


 お互い、立場は手に入れたものの、伴わない内実に歯噛みしている状況だった。


 そんな中、次世代を担う第一王子であるエドワルドが、竜騎士を束ねるルートヴィッヒのもとに、正確にいえばルートヴィッヒの竜丁のもとに足しげく通っているのは、均衡を乱しかねないことだった。

「恐れながら、お心当たりがおありのはずですが」

言葉遣いは丁寧だが、お前のせいで来ただけだと、ルートヴィッヒは言った。


 第一王子であり甥であるエドワルドは可愛いと思う。だが、彼との距離が近くなることで、エドワルドを懐柔しようとしていると思われては厄介だ。

「なかなか構ってやれない可愛い息子のお願いだ。最近、跡継ぎとしての自覚も芽生えたのか、勉強熱心になった。そんな息子のお願いを叶えてやりたいと思うのが親心だろう」


 立場故に、妻を迎え子供を持つことを諦めざるをえないルートヴィッヒは内心歯噛みした。以前は子供を持てないことなど、どうでもよかった。今は、子供を持てる立場にあり、より多くの子を持つべき立場の、ベルンハルトがたった一人の息子しか持とうとしないことに苛立ちを感じていた。


「根拠のない疑いをもつ連中を刺激してどうされるおつもりか。そもそもなぜ、こちらが外出する日に、殿下をこちらへ寄越したのですか」

「君ならなんとかできるだろう」

「限界があります」

アルノルトと二人、アリエルを連れて町へ行く予定だった。突然、護衛を二人伴い現れたエドワルドを断り切れなかった。最高級の馬車に乗れたのはよかった。馬車酔いしにくい馬車で酔っていたアリエルが、他の馬車に乗っていたらどうなっていたかとも思う。だが、貴人の警護は、誰かを守り戦うというのは、高度な技術だ。


「ルーイ。何も、かつての君のように、市井に交じって雲隠れしろと言っているのではないよ。ちょっと城の外へ連れ出してくれただけで十分だ。今はね」

ベルンハルトの言葉に、ルートヴィッヒは唇を噛んだ。


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