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2)煙
竜に乗り、風を切りながら王都へ向かって飛んでいた。部下達が、早く王都に帰りたいことはわかっている。だが、王都竜騎士団団長であるルートヴィッヒは竜の速度を変えずにいた。王都に行きたいのか、北の領地に戻りたいのか、自分でも、時にわからなくなる。
無心に飛んでいるだけだった。
前方に煙が立ち上っているのが見えた。何かが起こっているらしい。騎竜のトールに速度を上げるように指示し、進行方向に目を凝らした
「収穫期のはずだが、何の煙だ」
収穫した小麦を狙って、犯罪が起きる時期でもある。風が特有のにおいを運んできた。
「人が燃えているな」
部下に緊張が走る。
「竜騎士の仕事のようだ」
部下に合図し、ルートヴィッヒはトールを急降下させた。