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18)来訪者

 変わりない日々が過ぎていたある日、先ぶれの使者が訪れた。アリエルは、客人が帰るまで、見つからないように竜舎にいろと言われた。小さな客人は、嬉しそうに父親、ベルンハルト国王からの親書をルートヴィッヒに手渡した。


 その親書には、王太子が、王都竜騎士団の兵舎で聞いた空耳により、勉強熱心となったことへの感謝があった。週一回程度は、王太子に空耳を経験させてやってほしい。幻覚が見えても構わない。という趣旨のことが、流麗な筆跡でしたためられていた。


「国王陛下も、何を考えておられるのだか」

ルートヴィッヒは親書を敵のように睨みつけていた。

「あまり悩まれる必要はないと思いますよ。警護という意味では、ここは他より安全ですよね。あと、少なくとも、国王陛下は、団長様を信頼しておられるようだから、そこは良しとしましょう」


 アリエルにとって、国王陛下は一度も会ったこともない人だ。兵舎に入ってすぐのところに、国王陛下の肖像画が、掲げてある。竜騎士たちは、肖像画の前を通る時、必ず一礼する。よく見ると確かに、ルートヴィッヒによく似た顔の人が、豪華な服をまとい、こちらを見下ろしていた。


「ここは貴人の警護に向いていない。竜騎士が自分で身を護るという前提だ。殿下と私が近づくことを、良しとしない貴族も多いだろうに」

「陛下が良しとしておられるようですが」

「陛下の後ろ盾となっている、侯爵家は、今でも反対だろう。国王の剣と盾とされる王都竜騎士団団長の私の殺害は、国王陛下の反逆とみなされる。団長になってから刺客はこなくなった。だが、彼らの無用な懸念をあおったら、刺客は、どこからでもくる。暗殺専門のものたちは妙な武器を使うぞ。通常の訓練では対応は難しい」

実際に襲われたことがあるルートヴィッヒならではの見解だろう。


「竜舎から竜を出してはいかがでしょうか。竜が闊歩しているような場所には、暗殺者が入り込みにくいと思います」

「竜の放し飼いは、法律で禁止されている。鍵もつけるのが決まりだ」


 確かに、竜舎には、竜一頭あたりの区画があり、鉄格子で区切られ、施錠されている。だが、アリエルは、竜達から、今使っている鍵くらいは、その気になったら簡単に壊せると教えられていた。


「団長様、なにも放し飼いにしなければいいのです。日中は庭で自由に運動をさせているのです。檻にも鍵はついていますから、必要時には竜を閉じ込めることは可能です」

法律は守ればよいのだ。破らなければよいと、アリエルはルートヴィッヒに提案した。


「なるほどな」

生真面目なルートヴィッヒは、アリエルの自由な解釈に微笑んだ。


「あと、殿下を竜騎士だけでなく、竜達にも紹介しておきましょう。何かあったときのためです。村娘の幻覚が見えても構わないようですから、まぁ、難しく考えるのはやめましょう」

事態を気軽に解釈しようというアリエルの提案を、ルートヴィッヒは受け入れてくれた。


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