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22)伯爵家の若当主エーリヒ

 エーリヒは床から立ち上がることができなかった。

「全部、知られているなんて、そんな、伯爵家はもう終わりだ」

エーリヒには、破滅しか見えなかった。


「そもそも、シャルロッテが王家に嫁ぐなんて、ありえなかったんだ。終わりだ」

呆然と床に座り込む兄に、ライマーは声をかけることしかできなかった。


「兄上、何があったか、お話しいただけませんか」

「今更、お前たちに言って、何になる」

「エーリヒ、黙っていたところで、何にもなりません。陛下と宰相代行様に、あなたはお話ししなければならないのです」

「今更、ご存じのことをか。二人とも、もはやご存じだと」

「エーリヒ、あなたが自ら告白されたら、温情をかけてくださると、あの竜騎士様はおっしゃっておられました。まずは、私達に話してください。あなたが、伯爵家のためにというならば、それは私達にも関わることです」

エーリヒは溜息を重ね、床に座り込んだまま話を始めた。


「伯爵家からシャルロッテの警護のため遣わせた騎士は三人だ。そのうちの一人がある日、領地にやってきた。何も言わずに金貨二千枚を工面しろと。侯爵家からもらった金があるはずだと。そんなもの、借金の返済に使ってあるわけがない。追い返そうとしたが、王妃に逆らうのかと言われたよ。たかが騎士の分際でとは思ったが、王妃と言われたら仕方がない。何とか金貨千枚工面した。それ以上は無理だと言って、帰らせた。そのあとに、ライマー、お前の事故の噂があった。そうしたらまた、奴が来て、金貨千枚工面しろ、だ。ラインハルト候への弁済に必要だと言われた。そのころには、お前からの手紙が来ていた。おかしい。そんなはずはない。ラインハルト候に弁済をというならば、あの方のお命をつけ狙った、侯爵家が払えば良いと突っぱねた。そうしたらまた、王妃に逆らうのかと。理由などどうでもいい、つべこべ言わずに金貨千枚よこせと」

エーリヒは、淡々と言葉を紡いだ。


「アーデルハイド姉上が来られた時には、すでに奴は金貨を持ち去った後。シャルロッテが、金貨二千枚を何に使ったかわからない。本来、シャルロッテには、王妃としての金があるはずだ。よからぬことに使ったとしか思えない。騎士は侯爵家の馬車に乗ってきていた。侯爵家がシャルロッテを使って何かしようとしていることくらいしかわからない。私に何を話せというんだ」


 エーリヒ自身、自分が何に巻き込まれているか、わかっていないのだろう。

「先日、三回目が来た。もう限界だ。悪事に使われると分かっている金をなぜ渡す必要がある。アーデルハイド姉上は子爵家に嫁がれた。ライマーは竜騎士になった。私は、何もかも陛下に打ち明けて楽になりたいと思って書状を送ったら、ここに連れてこられた。もう、訳がわからない」


 堅苦しい執務室よりも、気楽に過ごせる場所で、姉と弟達を会わせてやろうというベルンハルトの気遣いが裏目に出たらしい。


「兄上、落ち着いて、整理して、陛下とラインハルト候にお話ししましょう」

 ライマーは廊下に静かに控える護衛騎士に、取次ぎを頼んだ。

 


 


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