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18)ライマーと兄エーリヒと姉アーデルハイド

 秋が深まった頃、王都竜騎士団にライマーは呼び出された。王都竜騎士団の竜騎士達は、ライマーを親し気に出迎えてくれた。

「少しは体格がましになったな」

「これからも、より一層努力します」

ハインリッヒの情け容赦ない一言に、ライマーは答えた。ハインリッヒとの体格差は、相変わらずのままだ。


 食堂に集まり始めた竜騎士達は、順に奥にいる人物に丁寧に一礼をしていた。

「ライマー、久しぶりだね。騎士団の訓練も実りあるもののようで何よりだ」

「はい」

ベルンハルトは、とらえどころのない笑顔を浮かべていた。

「今日は、客人がいるんだよ。気の置けない場所で、君に会わせかったから、ルーイと竜丁ちゃんに無理を頼んだ」


 ベルンハルトは、ライマーの兄エーリヒと、姉アーデルハイドを伴っていた。

「兄上、姉上」

「ライマー」

「まぁ、立派になって」

姉が見てわかるほど、前は鍛錬が足りていなかったのだと思うと、ライマーは恥ずかしくなった。


「ラインハルト侯、先日は、弟ライマーの命をお救い頂いたこと、感謝申し上げます。お礼が遅くなり申し訳ありません」

「しばらく見ない間に、弟が本当にお世話になったようでありがとうございます」

二人はルートヴィッヒに礼をした


「お二方ともお気遣いなく。竜騎士として当然のことをしたまでです。ライマーの変化は彼自身の鍛錬の賜物です。今後も続けてくれるものと期待しています」

ルートヴィッヒは穏やかに言葉を紡いだ。

「本当に、そんな、本当に、ありがとうございます」

アーデルハイドが泣き出してしまった。兄のエーリヒが慰める。


 竜騎士達は、兄弟三人が近くに座れるようにしてくれた。食堂に入りきらない護衛騎士や竜騎士が廊下に椅子や机を並べて、座っていた。


 食前の祈りのあと、各自、皿の上の料理を見た。


「卵のふわふわのスープだ。竜丁、私はこれが好きだ、また作ってくれ」

「では、また機会がありましたら。秋のいろいろなお野菜を入れてみたのですけど、お口に合ったようでうれしいですわ」

「ルーイのスープに豆が入ってるよ。君は豆が嫌いだろうに」

「少々であれば気になりません」

「カボチャと、ニンジンの色に、豆の緑があったほうが、彩が良いですもの。ニンジンはないはずですけど。ハインリッヒ様」

「あぁ」

「あの薄い野菜の揚げ物は、もう作らないの」

「あれは、東の副団長のカール様が戻ってこられたら、お願いして切っていただく予定です」


 騒がしかった食堂が少し静かになった。東方竜騎士団の変り者、蝙蝠と周囲に呼ばせる男、カールが行方をくらまして、すでに半年近く経っていた。カールのトルナードは、時々アリエルが乗り、飛ばしてやっていた。トルナードにも何も知らせはない。ただ、トルナードは、蝙蝠は元気だと言い、竜達はトルナードがそう言うならば、蝙蝠は無事だと言った。


「私の方には何も連絡はないし、何か見つけたという報告もないよ」

ベルンハルトの影と、カールは元同業だが、カールは彼らにも何も知らせていないらしい。

「彼のことですから、万が一ということはないでしょうが、ここまで音沙汰がないと、身が案じられます。何かあっても、こちらが知るすべもない」

「ルーイ、君自身が確認に行くのは無しだよ」

「さすがに、今は避けるべきと心得ております」


 国王と宰相代行の会話を耳にした、兄のエーリヒが落ち着きがないことに、ライマーは気づいた。ハインリッヒが訝しげに見ていた。貴族の間では、不仲が噂される国王と庶子の兄だ。不仲なはずの二人の、兄弟ならではの気の置けない会話に、兄エーリヒが落ち着かないのだろうと思った。


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