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9)執務室つき侍女マーガレット3

「今日、ルーイと竜丁ちゃんは来ないよ。マーガレット、夕方に少し出かける。ついて来ると良い」

ベルンハルトは久しぶりに、ルートヴィッヒもアリエルもいない執務室で、鼻歌を歌いそうなくらいの上機嫌で、仕事を手際よく片付けて行った。


 夕方、出かけると言っていたベルンハルトがエドワルドの手を引き、マーガレットも連れて向かったのは、王都竜騎士団の兵舎だった。

「ハインツ兄様」

「マーガレット。どうしてここに」


「あら、今日のお客様はマーガレット様だったのですね」

厨房から出てきたアリエルは、にこやかに出迎えてくれた。三々五々集まってきた竜騎士達も、マーガレットに挨拶をしてくれた。ルートヴィッヒとベルンハルトに挟まれるようにエドワルドが座り、その隣にリヒャルトとハインリッヒが腰かけた。ハインリッヒの隣の席をアリエルが勧めてくれた。


 そのうちに、竜騎士たちと護衛騎士達が、何やら大騒ぎをしてから一部が廊下に出て行った。

「全員が食堂に入ると、身動きが取れなくなってしまいますから。毎回、くじ引きをして、廊下で食べる方を決めています」


 アリエルはそういうと、廊下に出た者達の分の食事を配りに出て行った。


 食堂は十分広かった。廊下にいる人数を収容したところで、身動きが取れなくなるほどでもない。少し考えたマーガレットの目に、庭でくつろぐ竜の影が見え、理解した。


 身動きが取れないのでなく、万が一の立ち回りに十分な広さを確保するための人数に制限しているのだ。廊下に人を出すのも警備のためだろう。

「今日は、どなたかが、ご希望されたよくわからないものを、食後に用意してあります。食後にゆっくり楽しみましょうね」

アリエルは、マーガレットにそう言って笑った。


「竜丁ちゃん、君はいい子だ。ありがとう」

ベルンハルトの言葉にアリエルは微笑んだ。

「お褒めに預かり光栄です」

「いや、本当、ルーイにはもったいなっ」

ベルンハルトの言葉は、鋭い靴音で止まった。ルートヴィッヒが軍靴でベルンハルトの足を踏んだのだ。


「ルーイが怖い」

ベルンハルトの抗議を無視し、ルートヴィッヒは平然と食事をしていた。

マーガレットは唖然としたが、次兄のハインリッヒは落ち着いていた。

「単なる兄弟喧嘩だ。気にしなくていい」


 周りの竜騎士達も、護衛騎士達も落ち着いていた。

「喧嘩するほど仲が良いと言いますしね」

アリエルも動じた様子もなかった。


 食後、アリエルが持ってきたよくわからないもの、しいて言えば焼き菓子めいた何かは、見た目はいびつだったが美味しかった。エドワルドがちゃっかり一番大きいものに手を伸ばし、大人達はそんな少年を温かい目で見守っていた。


 執務室で用事があるから、しばらく兄と妹で過ごしたらいいと言い、ベルンハルトとルートヴィッヒはエドワルドとアリエルを連れ、二階へ行ってしまった。護衛騎士達も階上にいる主を警護するため、食堂から出て行った。マーガレットは、次兄ハインリッヒと二人きりで食堂に残された。


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