43)西方竜騎士団1
やってきた西方竜騎士団を王都竜騎士団は出迎えた。到着するなり西方竜騎士団一行は一斉に跪いた。
「ラインハルト侯。先日は本当に、貴殿に我々の一員が救われた。あらためてお礼を申し上げる」
「お気遣いくださいませんように。確かに助けることができたとはいえ、ほぼ偶然によるものです。どうぞお立ち下さい」
ルートヴィッヒの言葉に西方竜騎士団一行は立ち上がった。アリエルは、若い竜騎士達が落ち着きなく顔色も悪いことに気づいた。
「ラインハルト侯、あの件に関して内密にお話をしたいことがあるのだが」
「西方竜騎士団ヴァルター副団長殿。御前試合の事故に関しては、王都竜騎士団ではすべての情報を共有している。内密ということはない。お話を伺うならば、全員揃ってだ。ご了承をいただきたい」
ルートヴィッヒの声が低く響いた。
全員で食堂に集まった。アリエルは全員に茶を用意した。西方竜騎士団副団長に促され一人が立ち上がった。
「本当に、申し訳ありませんでした」
そういうと、頭を下げた。
「怖くて、断れなかったんです。ライマーを危険な目に遭わせるのはわかっていました。でも、脅されて。私がライマーの手綱に切れ目を入れました。申し訳ありませんでした」
そのまま跪いた。
「あなたを脅したのは誰ですか」
「言えません」
ルートヴィッヒは、西方竜騎士団にいる貴族の子弟と貴族に関して調べて得た知識を思い返していた。
「西方竜騎士団には、貴族の子弟が多い」
「言えません」
「なぜ。あなたが思うより、我々は情報を得ています。見当はついています。あなた自身にきちんと正直にいっていただいたほうが、あなたのために、いえ、あなた方のためになるでしょう」
ルートヴィッヒは微笑んだ。
「一日待ちましょう」
西方竜騎士団は、騎士団の宿舎に案内されていった。竜達は、王都竜騎士団の竜舎に案内された。竜騎士は竜と離れることを嫌う。だが、彼らの竜は機嫌よく、アリエルの後についていった。
「えぇ、そうなの。あなた達のお仲間のヴィントは、ここでは私たちに二世と呼ばれているわ。ここにはもともとハインリッヒ様の乗るヴィントがいるから。人間の親子みたいでしょう」
アリエルが明るい声で、竜にあれこれ話しているのが聞こえた。
「竜は、あの竜丁に任せておけば問題ない」
ヨハンの言葉にも、彼らは不安気に顔を見合わせるだけだった。
「団長には、正直に話した方がいい。あの人は公正な人だ。嘘と不正を嫌う。私が言えるのはそれだけだ」
ハインリッヒの言葉にも、西方竜騎士団の竜騎士達の表情は暗いままだった。




