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42)アリエルの衣装

 ベルンハルトとエドワルドが帰る頃になり、アリエルの服が問題になった。

「そうなると、竜丁ちゃんの服を新調しないとね。さすがにルーイの古着では問題だ。貴族が連れてくる書記官は、なかなかに派手だよ」

「華美なものは困ります」

「王宮の書記官の衣装にしようか。竜丁のままでもいいけど」

「竜丁のままにしておいてください。いちいち着替えるのが面倒です」

「竜丁ちゃんらしいねぇ。マリアに後で布を届けさせよう」

「だったら、父上、ドレスの布も。ダンスの時に着る服も新調させましょう。竜丁が回ったときに、ふわっとなるのが良いです」

「エドワルド様、あのですね。練習用にそんなに凝ってどうするのですか」

「いいじゃないか。ふわっとなるドレスだ。ふわっと。竜騎士団の黒なら綺麗だ」

「エドワルド、黒のドレスは喪服だよ」

「じゃぁ、竜丁の黒髪に似合うドレスがいい。ふわっとするのがいい」

そういいながらエドワルドは、ダンスのステップを踏み、回転した。


「エドワルド様、ずいぶんとふわっとにこだわりますね」

アリエルが笑った。

「ルーイ、君はどんなのがいい」

「私に話を振らないでください。女性の服などわかりません」

「そうだね。そういえば、舞踏会では、君は香水が臭いとか、そういうことばっかり言っていたな」

「沢山の方がそれぞれの香水をつけては、もう何の香りかわからないことになりそうですね」

アリエルがまた笑った。


「仕立て屋を呼びたいです。父上、ふわっとがいい」

エドワルドは回転しながらご機嫌だ。

「エドワルド様はふわっとがお好きですね」


 ルートヴィッヒはアリエルの髪を梳いた。

「そろそろ戻られるお時間です」


 食堂には、アーデルハイドとライマーがいた。久しぶりの姉と弟の対面に、殺風景な部屋で申し訳ないが、兵舎には客間などない。

「急かすようで申し訳ないが、お話は終わられましたか」

ルートヴィッヒは声をかけた。

「そろそろお二人は戻られる。護衛騎士達と一緒のほうが安全なので、アーデルハイド殿は、御一緒に戻られるほうがよいと思われますが」

ルートヴィッヒの傍らにアリエルは立ち、アーデルハイドに微笑んだ。


「本当に何もお構いできませんが、それでよければぜひ、またいらしてくださいませ」

「夏は不在にすることも多い。あらかじめご連絡をください。警備上の対応も考える必要があります」

「アーデルハイド伯母上は、また、私と来たらいい。エーリヒ叔父上は息災か。またお会いしたい」

「まぁ、殿下ありがとうございます。エーリヒにもそのように伝えますわ」

「エドワルド、エーリヒも忙しいのだから、そう無理を言ってはいけないよ。さて、戻ろう」

並んで歩く親子と、付き添うように歩く伯母と、周囲を囲む護衛騎士達を二人とライマーは見送った。


 ルートヴィッヒはライマーを見た。

「話はできましたか」

「はい。兄へも手紙を書いてくれるそうです」

「エーリヒ殿か。竜が乗せてくれたらすぐでしょうが、あなたのヴィントはまだ怖がっていると報告を受けていますが」

「えぇ。僕も何と言っていいか、わからなくて」


「一度、一緒に説得に行ってみましょうか。団長様も一緒なら、ライマー様のヴィントもきっとわかってくれると思います」

「それにしても、ヴィントが二頭か。皆どうしている」


「それが、あの。ヨハン様が、勝手に呼び方を決めてしまわれて」

「なんだ」

アリエルとライマーは顔を見合わせた。竜達も面白がって受け入れてくれているから問題はないはずなのだが、人のような面白い名前になってしまっている。


「あの、笑わないでくださいね」

アリエルはルートヴィッヒを見た。

「二世です」

「二世?」

「一世は、ハインリッヒ様のヴィントです」

ルートヴィッヒは笑いを噛み殺した。

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