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41)王妃対策2

「私を囮にということですよね。それしか手がなさそうだとは、思っておりました」

「危険だ」

ルートヴィッヒの言葉にアリエルは微笑んだ。


「えぇ。でも、このまま相手の出方を待っていては、余計に追い詰められるだけかもしれません。事態を動かすために、打って出ませんか。マーガレット様のことは解決いただいておりますね。そうであれば、王妃様の手駒は減っています。弟君の身柄もこちらにあります。本当に王妃様が今までの件に関わっておられるならば、揺さぶりをかけるのも手です」

「お前の身を危険にさらすことになる」

「今のままでも危険です」

「もう、誰かが死ぬのは嫌だ」


「だから、そんなことにならないように、勝負に出ましょう。ルーイ。勝てばいいのです。罠を仕掛けてやるのです。こちらに仕掛けたつもりの方々を、嵌めてやりましょう」

「危険だ。今も思い通りに動けないというのに、何かあったときにお前を守り切れる保障はない」


「ならルーイ、君の怪我が治ってからでいい。何なら北の領地から帰ってきてからでもいい。その間にこちらも用意できる。マーガレットはなんとか、エドワルド付きにしたが、後宮の侍女達はみな同じ区画にいる。王宮に移動させたいが、まだだ。ルーイ、君が執務室にくるから人手がいるとして、王宮付きにしよう。そうしたら、完全に王妃には手が出せなくなる」


 ルートヴィッヒは隣の椅子に座るアリエルを抱き寄せた。

「ルーイ、王妃の件に決着をつけたい。あれに関わっている貴族も片付けられる」

ベルンハルトの言葉に、ルートヴィッヒは首を振った。


「ルーイ、今のままのほうが危険だ。手を打とう、ルーイ。ここに閉じこもっていても、安全ではない。君も知っているはずだ」


 畳みかけるように続くベルンハルトの言葉に、ルートヴィッヒは目を閉じた。王都竜騎士団は、大切な居場所だった。ルートヴィッヒの大切な小さな箱庭だった。王都竜騎士団団長という地位に閉じこもっていれば、貴族との接触は最低限にすることができた。


 この大切な居場所を守るには、この国を守らねばならない。ベルンハルトの治世の安定が必要だ。もう、閉じこもっていられないのだ。


「今年は、北へは最小限の人数で行き、最低限の仕事だけ片付けて戻ります。滞在を二週間、気候次第ですが、往復を一週間に収めれば、三週間で戻ってくることができる。ベルンハルト、一度あなたの執務室と、宰相の執務室を確認させてください。近道も確認する必要があります。マーガレットは何としても、王宮付きにしてください。副団長のハインリッヒを手駒にされるのは避けたい」


 アリエルは、そっとルートヴィッヒの頬に口づけた。

「頑張りましょう。ルーイ」

「エドワルド殿下にとっては母君に当たる方です。ベルンハルト、あなたにとっては妻だ。本当にいいのですか」

「王妃は、私に何もしてくれない。いつも誰かの文句を言うだけだ。私もきっと文句を言われている」

それまでずっと黙っていたエドワルドが口を開いた。

「竜丁がいてくれるほうがいい。ずっといい」


 アリエルはエドワルドを抱きしめた。

「ラインハルト候や、ライマー叔父上、竜丁、みんな私にとって大切な人なのに、王妃は殺してしまおうとする。何もかも壊してしまうシャルロッテ王妃は、母だが、母ではない」


「すまないね。エドワルド、お前にもつらい思いをさせてしまっている。王妃としてふさわしくないあれを、そのままにしたのは私でもある。何とかして王妃としての教育をと思ったが、全く学ぼうとしなかった。後宮での侍女たちへの態度も問題だ。そこへ今回、次々と事件を起こした。もう限界だ。国を支えた私の母である故テレジア王妃の過ちは、あれを私の妃にしたことだ」


 テレジアは、愚鈍な先王の時代に国を支えた賢妃として名高い。徐々に権力に取り憑かれ、父親の侯爵とともに、王家を内から操るようになったのではと言われている。聡明だったゾフィーの死後に、愚かなシャルロッテがベルンハルトの新たな婚約者に選ばれたが、テレジアが邪魔者を排除したのではと噂が立ったほどだ。


「先代国王と、先代王妃の父である侯爵の負の遺産を片付けなければいけない。これ以上、王家がこの国の貴族の内紛に巻き込まれるわけにはいかない。隣国の侵攻を許しかねない」

ベルンハルトの中では、すでに結論が出ていた。


「ルーイ、もう君一人が背負って耐えればいいという問題ではない。君一人に背負わせるつもりもない」

「ですが、エドワルド殿下や陛下、あなたに背負わせるのも、また違うのでは」

「ラインハルト侯、情に流されて必要な決断ができない者が、王になれるか。そもそも私への情のないシャルロッテ王妃に私が情を持つことがあるか」

エドワルドが、ルートヴィッヒを見て言った。


「殿下」

ルートヴィッヒは跪いた。

「このルートヴィッヒ・ラインハルト、殿下の御覚悟を確かに承りました」

ルートヴィッヒの後ろで、アリエルも深く一礼した。


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